動物との“異種間テレパシー”は可能なのか!? 米国で支持される「アニマルコミュニケーター」の真実

文=仲田しんじ

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    愛するペットと正確にコミュニケーションをとることは可能なのか――。行動経済学や心理学を学ぶ大学生が、テレパシーなどを使ってペットと交流する“アニマルコミュニケーション”を検証している。

    アニマルコミュニケーターとは

     アメリカには「アニマルコミュニケーター」を名乗る人々が数多く存在する。彼らはテレパシーやマインドリーディングなどの手法を使って動物の思考・感情・行動などを正確に読み取り、意思疎通を図ることができるという。そして、飼い主の求めに応じてストレス原因の特定はもちろん、行方不明のペットの捜索から亡くなった動物との対話まで、さまざまなサポートを行っているのだ。

     たとえば「Petwork」というプラットフォームには数多くのアニマルコミュニケーターが登録されているが、彼らのプロフィールには「認定犬マッサージセラピスト」や「認定動物コミュニケーター」など、動物ケア関連の資格が並ぶ。しかし、これらの資格はコミュニケーションの根拠とはいえず、中には正式な認定機関が存在しないものもあるという。

     また、多くのアニマルコミュニケーターたちのプロフィールには、肯定的な5つ星レビューや「健康上の問題を的確に指摘してくれた」「飼い主が考えもしなかった洞察を提供してくれた」などの絶賛コメントばかりが目立つ。はたしてアニマルコミュニケーターは、本当にテレパシーやマインドリーディングによって動物と対話できるのだろうか? 放置されてきたこの謎に切り込んだのが、カリフォルニア大学サンディエゴ校のシーシー・チェン氏だ。

    UnsplashのAlvan Neeが撮影した写真

    観察と推論に基づく“テクニック”

     先に述べたように、アニマルコミュニケーターによる動物との意思疎通は、「霊的つながり」を通して動物の内的な精神状態にアクセスすることを前提としている。

     しかしチェン氏によれば、生物学や神経科学における現在の知見では、このような超自然的メカニズムを説明することはできない。よって科学的には人間はテレパシーではなく、行動・声・癖といった目に見える信号を通して動物とコミュニケーションを取るしかないはずだという。

     そして多くの場合、アニマルコミュニケーターはセッションがうまくいかなかった時のために何らかの説明を用意しているという。たとえば、動物が「心を開かなかった」とか「それ以上のコミュニケーションを嫌がった」などの説明が準備されているのだ。

     チェン氏の調査によれば、「行方不明のペットを探して欲しい」という依頼があると、アニマルコミュニケーターは事前に「飼い主も積極的に調査、捜索する必要がある」と告げる。ペットが見つかればマインドリーディングは成功とみなされ、見つからなければ状況の複雑さが原因とされる。成功の条件は明確に定義されておらず、科学的に検証することもできない。これらを踏まえ、チェン氏はアニマルコミュニケーターたちが数々の“テクニック”を駆使している可能性があると指摘する。

     多くのアニマルコミュニケーターは、ペットの写真・名前・性別・種族・年齢・体調などの情報や、飼い主の口調や反応に至るまで、多種多様な手がかりを基に、依頼に対して最適な解釈(推測)を導き出す。そしてフィードバックに応じて調整・編集を絶えず繰り返すことで、真相に迫っている(ように見えている)可能性が高いようだ。

     つまり、アニマルコミュニケーターは(自覚的であるか否かに関わらず)超自然的な能力ではなく、観察と推論というテクニックを駆使する存在だというのだ。

    UnsplashのAndrew Sが撮影した写真

    サイキックでなくともサービス提供は可能

     チェン氏は追求の手を緩めない。アニマルコミュニケーターの説明に説得力を持たせるための心理学的手法もあるという。

     そのひとつである「バーナム効果」は、誰にでも当てはまるような曖昧で一般的な特徴を、自分や特定の相手だけにあてはまる特別な診断結果だと錯覚してしまう心理現象だ。たとえば「あなたのペットは繊細です」といった表現は、あらゆるペットに広く当てはまる可能性があるが、飼い主にとっては特別な意味を持つように感じられる。

    「確証バイアス」も影響を及ぼしている。飼い主は望ましい記述に注目し、否定的な記述を無視あるいは軽視してしまう可能性がある。さらに「プラセボ効果」に関する近年の研究では、高額な治療はより効果的であると認識されやすいことが示されている。セッションの高額な費用は、飼い主がその価値を納得するために、提示された考えを積極的に肯定する動機となっているのかもしれない。

     このように、たとえテレパシーやマインドリーディングなどの超能力がなかったとしても、受け答えの入念なシミュレーションと数々の“テクニック”を駆使することでサービスの提供が可能であるとチェン氏は結論づける。とはいえ、アニマルコミュニケーターがこれほど高度な技術を用いて飼い主と対峙しているならば別の意味で驚嘆に値する。

     また、チェン氏の考察は「テレパシーやマインドリーディングなどの超能力をもたなくてもアニマルコミュニケーターになれる」ことを示すもので、「アニマルコミュニケーター全員がテレパシーやマインドリーディングなどの超能力をもっていない」ことを示すものではない点に注意が必要だ。

     ペットをめぐる関連産業はいまや一大ビジネスとなっているだけに、その中には効果や意義が疑問視されてくるものもあるのだろう。最近では動物とのコミュニケーションにおいてAI(人工知能)を活用する取り組みも行われており、近々この分野にも大きな変革の波がやってくる可能性は高い。ただし、真実と未来がどうあろうとも、飼い主が地道にペットとの信頼関係を築いていくことが最も大切である点だけは変わらない。

    【参考】
    https://www.mcgill.ca/oss/article/critical-thinking-student-contributors-pseudoscience/talking-animals-telepathically-science-behind-pet-communication

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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