渡来系豪族はアウトサイダーとなった?「謎の集団・秦氏 復讐の日本史」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    謎の集団・秦氏 復讐の日本史

    関裕二 著

    秦氏の興亡を軸に、日本の歴史の闇に光を当てる

     標題にある「秦氏」とは、5世紀ころに大陸から日本列島に渡来した氏族であり、土木建築や治水、養蚕、醸造など、多岐に亘る高度な技能によって繁栄した「古代を代表する渡来系豪族」。自ら秦始皇帝の末裔と称したが、実際には朝鮮半島(新羅系)の出自とする説が有力。聖徳太子に仕えて広隆寺を建立した秦河勝が有名で、八幡信仰や稲荷信仰など、日本最大級の信仰形態に深く関わっていたとされている。

     そんな秦氏であるが、本書によれば彼らは、ある時点でとある勢力との政争に敗れ去る。藤原氏である。そして「藤原氏の陰謀にはまり、奈落の底に突き落とされ」た彼らは、「藤原の世を恨み、社会の底辺に沈ん」だ。だが一方で、彼らは強かにも、「アウトサイダーとなり、最下層の人びとのネットワークを構築し、生き残った」。そして「日本社会に、多大な影響を及ぼしたのだ」。

     本書は、この秦氏の興亡を軸に、日本の歴史の闇に光を当てんとする試み。なるほど、このような視点から見れば、これまでの日本史が何倍にも面白くなる。
     著者の関裕二氏は歴史作家で、著書にはかつて本欄でもご紹介した『豊璋 藤原鎌足の正体』(河出書房新社)の他、多数。ちなみに、「秦氏」といえばオカルト界隈でよく取沙汰されるのが、「秦氏=景教徒のユダヤ人説」であるが、著者はこの立場は取らない。これだけでも、本書の説得力は数段増している。

    ビジネス社/1980円(税込)

    (月刊ムー 2026年04月号掲載)

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