都市伝説「タイムリープ現象」の謎/MUTube&特集紹介  2026年1月号

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    タイムリープ=時間跳躍現象は、明日のあなたにも起こるかもしれない。日常に潜むタイムリープの謎を追う! この記事を三上編集長がMUTubeで解説。

    リリカ氏の世にも奇妙な体験

     ここにひとりの不思議な体験をもつ女性がいる。
     都内に住む鐘崎リリカ氏(以下リリカ氏)は、大手都市銀行の行員として勤務した後、現在は生配信アプリでのライバーとして活動している。
     残暑が厳しい9月初旬、インタビュー場所である東京・新宿にあるホテルの喫茶室に現れたリリカ氏は、とても快活な印象の女性であった。
     じつは彼女こそ、最近、都市伝説界隈で話題になっている特異な体験の持ち主なのだ。
     2025年6月、リリカ氏は人気配信動画番組に出演し、東京・下北沢で自身が遭遇した不可思議な体験を披露した。
     その番組の視聴回数はわずか3か月間で100万回にのぼり、大きな注目を集めているという。
     そんな2025年後半の都市伝説界を席巻した事件の一部始終を、あらためてご本人に語っていただいた──。
       *
    「あれはコロナ禍がはじまる前の、2018年5月ごろのことです。
     当時、世田谷区の東北沢という街に住んでいた私は、夜中にお腹が空くと、下北沢駅近くにある朝まで営業している焼肉店へ、歩いて食事に行っていたんです。
     その日も部屋を出たのは、午前1時ごろでした。普段仕事でパソコンや複数のスマホを使っていたので、今日はデジタルデトックスをやろうと、スマホを部屋に置いたままクレジットカードだけを持って出かけました。
     部屋を出ると、外は白い霧に包まれていて、今にも雨が降ってきそうな、すごい湿気を感じたのをよく覚えています……」
     リリカ氏は、あまりの湿度の高さに、コンビニに寄って傘を買ったほうがいいかな、と思ったほどだったという。
     だがそれ以上に異様だったのは、深い霧とともに静まりかえった街の光景だった。
    「下北沢って、深夜でも人はそれなりに歩いているんですが、不思議なことにその夜はだれも歩いていなかったんです。
     茶沢通りという幹線道路から脇に入った坂道の先に、目当ての焼き肉店があるんですが、数メートル先が真っ白で、焼き肉店の看板も見えないほどの深い霧でした……」

    見慣れた店内で感じた違和感

     見慣れた店の引き戸を開けて店内に入ると、様子がすっかり変わっていることにリリカ氏は驚いた。
     壁には見たこともない昔のビールのポスターが貼られていて、まるで昭和レトロな雰囲気に改装したかのようだ。
    「…… 唖然としていた私に見知らぬ店員さんが近づいてきて、入り口近くのカウンター席を案内されました。
     いつもは2階の席に通されるので、変だなと思いましたが、毎回頼む飲み物と食事を注文すると、店員さんは黙ってメモを取っていきました。
     なんか無愛想な人だなって思いながら、ふと後ろのテーブル席で騒いでいるお客さんたちに目がいったんです……」
     リリカさんの背後には、6人のサラリーマンらしきグループがいた。
     店は喫煙可能であるものの、彼らがいるテーブル席には、凄すさまじい量のタバコの煙が充満していた。
    「……思わず見つめてしまったんですが、その人たちが着ているスーツは肩幅が異様に広くて、顔にかけてるメガネのフレームも大きいんですよ。
     その姿には見覚えがあって、私の父親が新入社員のころに撮った写真の格好にそっくりだったんです……」
     ちなみにリリカ氏の父親は、彼女と同じ大手都市銀行の行員であった。父親が新入社員のころといえば昭和50年代、日本はバブル経済真っ只中である。
     すると、サラリーマングループのひとりがリリカさんと目が合い、声をかけてきた。
    「おねえちゃん、こっちへきて一緒に飲まない? 肉もぜんぶおごってあげるからさ」
    「下北沢ではよくあることなんです。知らないお客さん同士で盛りあがっちゃうなんてことが(笑)」
     グループのリーダーらしきその男性は、リリカ氏を自分の隣に座らせると陽気に会話をはじめた。
    「私の髪型や服装を見ながら『おねえちゃんは浅草のホステスさんなの?』と聞くんです。
     いやいや、ホステスじゃないですし、浅草のホステスっていつの時代の話なんだよって思いました。
     クラブといえば銀座か六本木じゃないですか。そういうとその男性は、『六本木に最近(K)っていう大きな店ができたんだよね』というんです。
     偶然にも私が以前勤務していたのが六本木支店でして、(K)というその店の通帳名義を毎日のように見ていたんです。
     おかしいなと思ったのは、そのお店は男性がいうように最近できたんじゃなくて、私が生まれる前から六本木にある老舗の有名クラブなんですよね」

    昭和ひと桁世代のサラリーマン?

     会話の随所に違和感を感じつつも、酒席は楽しく盛りあがっていった。
     やがてリリカ氏は隣の建物にある、朝まで営業している行きつけのマッサージ店にも寄ろうと思っていたことを思いだし、サラリーマングループにご馳走になったお礼を告げて退席しようとした。
    「リーダーの男性が『来月、この店で俺の誕生日会をやるからおいでよ』といって、手帳に【6月25(水)】と書き、ちぎって手渡そうとしたんです。
     その日付は私の親友の誕生日と同じだったのでよく覚えているんです。
     何歳になるんですかと聞くと、『昭和ひと桁生まれの俺も、来月で47歳だよ』というんです。
     そんなわけないじゃないですか。
     昭和ひと桁生まれって、私の祖父の世代ですから。酔って冗談をいってるんだと思いました……」
     メモをもらってもなくしてしまうかもしれないので、リリカ氏は彼の手帳に自分の名前と連絡先を書いた。
    「これが私のLINE IDですから、連絡くださいねっていったら、その場の皆が口をポカンと開けてるんです。意味がまったくわからないという感じで……」
     店を出たリリカ氏は、隣の建物にあるマッサージ店に向かおうとした。ところが建物の前にあるはずの看板はなく、建物の明かりも消えて真っ暗な状態だった。
    「……あれ? お店、潰れちゃったのかなと思い、とりあえず帰ることにしたんです。部屋に戻るとすぐにスマホを見たんですが、先ほどご馳走になった方からのLINEは届いていませんでした。それより、いつも通っていたマッサージ屋さんが本当に潰れてしまったのかが気になって、お店に電話してみたんです。すると電話が通じて、お店はまだやっていますよと……。
     なんだかキツネにつままれたような気持ちでしたけど、この話はここで終わらなかったんです……」

    (文・イラストレーション・図版制作=サカノヤスタカ)

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    月刊ムーの特集記事を三上編集長が解説!

    webムー編集部