漂着した藁が宇賀神の使いをもたらした!? 山形県三川町で出会った「蛇ニオ」の謎
山形県のある地域に伝わる、「蛇ニオ」という耳慣れない文化財。そこには古くから続く蛇信仰の痕跡がみてとれた。
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発光体目撃情報が絶えない四国の霊峰・石鎚山。古来修験の道場として栄えたその地は、人知を超えた何かが集う特異点だったのか?
(前編の記事はこちら https://web-mu.jp/paranormal/52737/)
石鎚山上空に出現した「謎の発光体」を撮影したのは、山口県下関市にある石鎚本教吉見教会の教会長、加藤法泰氏である。加藤氏は、石鎚山への「月参り」を欠かさぬこと40年、登拝300回以上にもおよぶ。石鎚山の麓、西条市在住の筆者はたった一度の登拝さえ尻込みしてしまうのに、加藤氏は季節を問わず下関から登拝しつづけている。まさに筋金入りの修験者である。
加藤氏の信仰のルーツは、曽祖母ノエ氏。信仰を通じた人助けを行った、いわゆる「能力者」であった。父古寿氏は、当初ノエ氏の跡は継がず、大戦を経験後、新聞社に勤務していたという。しかしある夜の枕元、頭の両脇を挟むように巨大な足がドーン!と立った。恐る恐る見上げると、顔が霞んで見えないほど巨体の怪物が。「海に行け!」と轟く声に導かれ、古寿氏は下関の海での難行の末に法力を摑んだ。そして「海の側の桜の咲く丘に祀れ」との御神託に基き「石鎚本教吉見教会」を開き、「人の育成」と「衆生救済」を行った人であった。
幼少期より、父が真冬の海に入る姿を何度も目にしたという加藤氏も、やがて下関の海に入るようになる。凍てつく真冬の海風にさらされ、指先にあかぎれが切れる「ピリピリピリっ」という音を聞いた日もあった。
石鎚山初登拝は、40年ほど前のこと。父や信徒たちと石鎚山における年間最大の行事、7月の「石鎚神社お山開き大祭」に挑んだ。石鎚神社・石鎚本教発行『石鎚山への渇仰』によると、いにしえの石鎚山では青年時代の弘法大師空海も修行するなど、古くから広く信仰を集めた。そして明治期の神仏分離後も「修験の山」として知られ、現在も登山者だけでなく、白装束に法螺貝を携えた修験者たちが各地から登拝する、神秘の山である。加藤氏にとっては初めての登拝。頂上に至ろうとするころには吐き気を覚えるほど壮絶な行程であったが、難関である一の鎖にかかったとき、思わぬ言葉が口をついた。
「ここから大変なところだからな! 気合い入れてやれよ!」
この先の行程がどれほどつらいものか未体験のはずであった。しかしその場に立った瞬間、そういわなければならない気がしたという。古来幾度となく鎖場を越えてきた修験者たちの御霊が憑依したのだろうか。
現在は石鎚本教吉見教会を拠点に、月4回の月例祭での護摩行や祈禱などを行う加藤氏。修験者として、下関の海での日々の修行や石鎚山への月参りだけでなく、各地での行にも身を投じてきた。
それは徳島県にある不動の滝(裏見の滝)にて、一週間かけて計49回滝に入る荒行に挑んだときのこと。ひたすら滝に打たれていると、その雫が脚に当たるごとに、ジグソーパズルのピースがバラバラと崩れるように身体が散り落ちていくのに気がついた。そしてついには身体が四散。「自分が何もなくなってしまった」と感じたが、意識は確かに滝の中にあったという。肉体の存在を超え、自然と一体化した瞬間だったのだろうか。修験者である加藤氏が荒行の果てに至った、無我の境地であった。
羽黒山(山形県:出羽三山)での「秋の峰入」にも何度も入った。山籠りの中で、六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天)+四聖(声聞・縁覚・菩薩・仏)からなる「十界」を体験する「十界行」を行う、山岳信仰の山である。加藤氏はそこでの体験を経て、石鎚山中腹にある、石鎚神社成就社の「神門」をくぐってから頂上社に至るまでの道のりはまさに「十界」だと悟り、石鎚山での十界行を行うようになった。
「まず神門をくぐって降りていくと、地獄の底まで堕ちてゆき『あの世』にいきます。それから一歩一歩『六道』を感じながら登り、夜明かし峠に至る。他の人と『登る速さを競う』となるとそれは『修羅』すなわち競争。夜明かし峠に至るまでの山道は、木が覆い茂っていて、日があまり差さない暗闇・迷いの世界。すると不意にパッと開けて、眼前には巨大な屏風のように石鎚山がそびえ立っています。今の時代は写真などで事前に見ていますが、昔の人は初めて目にして、腰を抜かすほどびっくりしたでしょうね」と加藤氏。
そこから「四聖」に入り、ものを聴く「声聞」、縁を結ぶ「縁覚」へと、頂上への道のりは続く。縁を結んだら次は「人のために何かできないか」と、明かりの中の世界で頂上に至り、「菩薩」になり「仏」に至る。そうして山を降り、この世で人々を救う「上求菩提・下化衆生」を実践しなければ「修験」ではないという。
修験道は、森羅万象のなかに霊性を見出すアニミズム的要素もあわせ持っている。石鎚山は近畿以西最高峰でもあり、麓から1982メートルの頂上にいたるまでに、暖温帯から亜寒帯に分布する多様な自然の息吹を肌で感じることができる。各地での修行を経てきた加藤氏は、厳しくも豊かな石鎚の自然の中に「十界行」を見出した。そして「ここ(石鎚)じゃないとダメなんだ」と強く感じるという。
こうした石鎚の神秘を伝えるべく、加藤氏は登拝しながら写真撮影も行ない、広く情報発信してきた。そうしたなかで撮影されたのが、今回の「謎の発光体」であった。ダイナミックな自然の有り様をまざまざと見せてくれる霊峰石鎚山。その上空を自由に飛び回る発光体たちの正体とは? 加藤氏の見解を訊いた。
「神だとは思っていないです。証拠はないけれど、どうにも説明がつかない。やはりUFOでは? と、感じてしまいます。私たち人類よりも高次元の、意思を持った生命体ではと感じました」
修験者からのまさかの言葉に、息を呑んだ。
実はこうした光の写真が撮影される以前も、不可解な光が飛ぶのを何度も目撃した経験があったという。ある日、石鎚山頂上で天の川を撮っていると、突如その裏側で白い光がパン!と光って消えたことがあった。羽黒山では、上空を流れるように光が走ったそうだ。
また、40年にわたり日々「行」に励む下関の海でも、遙か彼方、水平線のあたりに、「音もなく不思議な動きをする細くて速い光」を数えきれないほど目撃してきたという。特にこの下関での光は、石鎚山で撮影された光と、よく似た飛び方をしていたそうだ。
下関の海、そして石鎚山上空にも、「次元の亀裂」のようなものがあるのではと感じるという加藤氏。かつて父が聞いた「海へいけ!」が意味したものとは? 枕元に立ったという巨体の怪物は、下関の海で、そして石鎚山で、いったい何を見せたかったのだろうか。
「私(修験者)の立場でこういったことをいうと、ちょっとおかしな話になるけれど……」と前置きした上で、加藤氏はさらに続けた。
「役小角も異星人だったのかもしれません。『五色の雲に乗って飛んでいった』という伝説がありますが、現代的に表現すると、『五色の雲=宇宙船』であっても不思議ではないと思います」
685年に石鎚山を開山したと伝わる役小角は日本各地に数々の伝説を残し、国内のみならず、インドや中国へと自在に飛び回り民衆を救おうとしたという。日本の修験道研究を牽引してきた宮家準の著書『修験道と日本宗教』では、「毎夜五色の雲に乗って大空の外に飛び、化人と共に永遠の世界に遊んだ」という、日本最古の仏教説話集『日本霊異記』の記事に触れている。加藤氏が頂上社で撮影した「5つの発光体」は、時空を超えて「大空の外」から飛来した、役小角の乗り物だったのであろうか。
役小角の時代よりもさらに昔、石鎚山のなりたちにも謎を解く鍵がありそうだ。面河山岳博物館学芸員、矢野真志氏によると、石鎚山は約1500万年前の火山活動により噴出した火砕流堆積物でできており、当時は直径8キロに及ぶ巨大なカルデラが誕生するほど大規模な噴火が起こったと考えられている。カルデラ内部に溜まった火砕流堆積物は硬い安山岩となり、その後の風化・浸食、隆起を経て、残った最も高いところが天狗岳(1982メートル)であるという。
富士山のみならず世界に目を向けてみると、メキシコのポポカテペトル山やインドネシアのムラピ火山など、世界各地の火山上空では近年でもUFO目撃事例が相次いでいる。地質学的側面からみても、石鎚山がUFO多発地帯であることは偶然ではなさそうだ。筆者には、2019年に四国カルストで撮影されたUFO写真も想起させた。その上「意思を持った生命体ではと感じた」という加藤氏の見解は奇しくも、件の四国カルストUFOの記事での「成層圏にすむというプラズマ生命体クリッターでは?」という考察とも近似していたのだ。
星空をあそぶ「神秘の光」が撮影された石鎚神社中宮成就社を訪ね、神職さんに神秘体験の有無を尋ねてみると、意外な答えにハッとした。
「皆さんと同じですよ」
私たちもすでに「体験」しているのだ。
森羅万象は神秘に満ちている。山に登り、星空を見上げ、海を眺める時間の中で、もう一歩踏み込んだコンタクトを試みてみよう。きっと、静かに語りかけてくる「何か」の存在に気づくはずである。
●参考文献
『石鎚本教六十年史 石鎚山への渇仰』石鎚神社・石鎚本教 発行/『修験道と日本宗教』宮家準 著 春秋社/『役行者伝記集成』銭谷武平 著 東方出版
(月刊ムー 2025年1月号)
寺田真理子
ライター、デザイナー、動植物と自然を愛するオカルト・ミステリー研究家。日々キョロキョロと、主に四国の謎を追う。
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