GAMOZI studioのムー・スケボーにミステリー・アーティスト集合! 13のデザインがデッキを彩る
ムーをイメージしたアートがスケートボードに出現する。
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文=大槻ケンヂ イラスト=チビル松村
webムーの連載コラムが本誌に登場! 医者から「オカルトという病」を宣告され、無事に社会復帰した男・大槻ケンヂの奇妙な日常を語ります。
「俺ジナルオカルト」これはオカルトファンにとっての究極の夢ではないかと思う。「俺ジナルオカルト」略して「俺オカ」とはなにか? それは自分の発見した、あるいは考案した、ときには創作した超常現象、超常現象の正体、新たなる都市伝説などのことだ。
「俺が見つけた」「俺が考えた」「俺が創った」俺様のオリジナルなオカルト事象、俺オカが世に広がり、人々に語られ、ついには「ムー」に取り上げられることがあったとしたらどうだろう? オカルトファンとしてこんなに鼻高々なことはないと思うのだ。UFO、UMA、心霊、ジャンルはなんでもいい。むしろかつてなかったオカルトの新ジャンルの提唱者となるなら、もう俺様はオカルトパイオニアなのである。略してオカパイ。なんだかわからないが、僕もときどきオカルトの新ジャンル発見を夢想してうっとりすることがある。
子供のころからだ。たとえば、昭和の昔、まだ都市伝説という言葉があまり一般的でなかったころ、自分なりの〝怪しい町のウワサ〞を空想しては「これ口裂け女みたいに世間に広まらないかな」と思い、実際に情報を発信してみたことがある。僕が思いついたのは「福耳の子供」という俺ジナルオカルトキャラクターであった。福耳をした怪しい子供が町に現れ、年ごろの娘を見つけるとつきまとい「お姉さん遊ぼう」と声をかけてくるのだ。ただの痴漢じゃないのかって話だが、そこに「僕を置いていくと、お姉さん不幸になるよ」と呪詛のような言葉をいうとの奇妙さを付け加えた。不幸とはなにを指すのか? 遊ぶとはなにを意味するのか? わからないままに福耳の子供のウワサが全国に広まっていく……。
という俺ジナル都市伝説の拡散を夢見て、僕はまず歌を作った。謎の児童につきまとわれるお姉さんの視点から福耳の子供を歌った歌詞でタイトルはそのまま「福耳の子供」。この曲を空手バカボンという僕のやっていたバンドで録音してインディーズで発売した。その後には筋肉少女帯でも録音、発売している。そうしたら筋少版発売の約1か月後に『福耳のこども』という少女漫画のコミックスが出版されたのだ。たじま倫子さんという方が描いた作品だ。読むと、おそらくこれは僕の作った俺ジナル都市伝説に影響を受けて描いてくれたのだろうなぁと個人的には感想を得た。うれしかった。俺ジナル都市伝説、俺オカが音楽から漫画の世界へ広がったということかもしれない。
ならばこのいきおいで福耳の子供のウワサが全国に急速に拡散し、世の子供たちが恐れおののき、謎のフレーズを唱えて危険を回避したり、テレビで特集されたり、そしてついに「ムー」の表紙に「全国を恐怖に陥れた『福耳の子供』の正体は異星人グレイだった!!」とか「ヒバゴンだった!!」とか載ったなら最高じゃないかっ……と思ったんだが、その後「福耳のこども」以上に広まることはなかった。無念である。
しかしまだあきらめたわけではないのだ。いつの日か俺ジナルオカルトで「ムー」の表紙を飾ることを、なんだったら総力特集に取り上げてもらうことを夢見てやまない。俺ジナルオカルトのネタはいくつか思いついてはいるのだ。
ひとつは異星人のアブタクション=地球人霊体強奪説、だ。なぜ異星人は地球人の霊体を必要としているのか? おそらく異星人にとって地球人の霊体には、地球人にははかりしれない無限のパワーがあるのだろう。それがほしくて異星人は地球人を、ときにさらうのである。
この説の根拠は? ハッキリいって特にない。でも、だってなんかいいでしょ? 異星人が地球人の霊体を狙ってUFOに乗ってやってくるって話、面白いじゃない。心霊ホラーとUFOサスペンスの合体で映画とかにもしやすいしさぁ。ダメかなぁ?
いやでもかつて「ムー」に、UFOが有明の海苔を求めてやってきている、有明の海苔のエキスがUFOを動かすエネルギーに使えるからだという記事が載っていた。とてもいい! と思ったので、異星人がUFOを動かすエネルギーに人間の霊体を使おうとしているっていうのもありだと思うんだけどどうでしょう。海苔よりはよくない?
アブダクションといえばよく牛もUFOにさらわれると聞くので、きっと牛の霊体もUFO可動のエナジーなのだ。
もうひとつは、こちらも霊体がらみで、今、世界権力者の闇の勢力がこぞって心霊スポットを調査している、という俺ジナル陰謀論。これは霊体を軍事利用しようという動きがあって、それはどうも、霊体を構成する未知の素粒子が状態によれば超反応を起こしてすさまじい爆発を起こしうる可能性があるからだ。
この仮に〝霊体子爆弾〞と呼ぶべき超兵器を作るべく、ならば霊体の多くいる場所はどこか? それもなるだけ濃い霊体の集いし場所はどこか? そいつはいわずもがな心霊スポットと呼ばれている場所でしょ、ということで、世界中の表・裏の軍隊、屈強な面々がもっか元病院、元学校そのほかの廃墟を巡っていてその途中で生配信中の心霊系YouTubeℛとバッタリ「え!? 銃?? やべ配信途中ですが僕殺されるかもしれませーん」「あ、や、怪談師の〇〇さんスよね? ファンです。新宿LOFTプラスワンの『俺ジナルオカルトを作ろう!』の会よく行ってます!」「マジ!? どこの兵隊さん?」「あ、自分はイルミナティっス」みたいなオカルトほんわかエピソードも生まれるかもわからない。
どうだろう? どうだろうといわれても困るだろうが「アブダクション霊体強奪説」と「霊体子爆弾ただ今制作中」。このオーケンの俺ジナルオカルトふたつ、広まらないだろうか。いつの日か「ムー」に「異星人のアブダクションは人間の霊体を狙っていた! 緊急対談元NASA職員VS現役恐山イタコ!!」「激白! 心霊系YouTuberが『私は廃墟で霊体を捕獲する闇部隊と遭遇した!! チャンネル登録してくれた!!』といった記事が載ることがあったならうれしいのであるが……。
ちなみに最近読んだ朝里樹監修『大迫力! 異常存在SCP大百科』という、わりとキッズ向けの本には、今までに聞いたことのないUMA、都市伝説的なものが山盛り載っていた。これらはいったいなんだ? そもそもSCPってなに? と思っていたら、「SCP財団」という海外の投稿サイトに、閲覧者が自分なりに創作した「異常存在の記事(作品)」を投稿、それらを集めた一冊であるらしい。まったく知りませんでした。そういうものが今あるんだ。勉強になった。
ん、え? それはつまり、広義の意味でいえば俺ジナルオカルトということになるのかもしれないね。違うのかな。どうであれ、今日も僕は俺オカを夢想している。
(月刊ムー2024年11月号より)
大槻ケンヂ
1966年生まれ。ロックミュージシャン、筋肉少女帯、特撮、オケミスなどで活動。超常現象ビリーバーの沼からエンタメ派に這い上がり、UFOを愛した過去を抱く。
筋肉少女帯最新アルバム『君だけが憶えている映画』特撮ライブBlu-ray「TOKUSATSUリベンジャーズ」発売中。
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