「障りのある怪談」で霊に追いかけられる!? 松嶋初音を取り巻く幽霊ストーカーと守護霊/辛酸なめ子
怪談クイーン、松嶋初音さんが実際に体験した心霊現象を語る。霊に追われる「障りがある怪談」は中身も恐いが、語った後がヤバい。
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月刊「ムー」でもおなじみの神仏探偵であり、神木探偵の本田不二雄氏が書く神木の世界。今回は、十二本ヤス(青森県五所川原市金木町)です。
最近は、地図アプリにその名称が載っていれば、わりあいどこでも行けてしまう。知る人ぞ知る「十二本ヤス」(市指定天然記念物)もそうだ。
しかし、気軽に出会うべき相手ではなかったのかもしれない
大した心の準備なしに津軽鉄道線「金かな木き 」駅前でタクシーに乗車。ドライバーは迷いもなくどんどん山道に入っていく。しかしもし独りだったら、途中で不安になり、引き返していたかもしれない。知らない土地の森は、本来恐ろしいものだ。そのことを不意に思い出す。
ようやく山道に案内板があらわれ、タクシーを降車。道のそばに崩れかけたような鳥居が立っており、その先を進むとほどなく“ それ” が姿をあらわした。
これはいったい何だ。
赤い鳥居が立てかけられているその巨木は、いったん鳥居上部の笠木のあたりですぼまり、人の背丈を超える高さになったところでぐっとエネルギーを溜め込み、一気に12 本の枝幹を天に向けて発射(分岐)させている。そのため目通りの幹周りは8 メートル足らずだが、もっとも太い分岐部分の周りは12 メートルにも及ぶ。ちなみに、「十二本ヤス」のヤスとは魚を突く漁具のことで、分岐した枝はまさにそれを思わせる様態だ。
裏側にまわってみると、異様な印象はさらに増す。ゴツゴツとした突起は地上から生えた魔物の手の関節のようでもあり、根元のウロは化け物が大口を開けているようでもある。そんな“ 怪物”の由緒を説明するこんな伝説がある。
「その昔、弥七郎という臆病者の若者がいた。山に入るたびに怖気(おじけ)づいていた弥七郎は、みんなの笑い者になり、山の魔物までもが彼の名前を覚えてしまった。腹を立てた弥七郎は、魔物にひと泡吹かせるべくマサカリを手に山に入り、夜を待った。
すると夜も更けた頃『弥七郎、弥七郎』と呼ぶ声がする。弥七郎は声のするほうへマサカリを一撃すると、『ギャーッ』という悲鳴が聞こえ、魔物が転げ落ちてきた。それは白い毛の大きな老猿だった。
村人らは大猿の祟りを恐れ、ヒバの若木を植えて供養した。その木は生長すると12本の枝を直立させる異様な姿となった。新しい枝が出ても代わりに古い枝が枯れて、12 本以上になることがないという……」
樹種はヒノキアスナロ。ヒノキ科アスナロ属の常緑針葉樹で、アスナロの変種という。一般には高級材として珍重されるヒバの名で通っている。金木のある津軽半島は、下北半島とともに青森ヒバの名産地で、ここもまたヒバの森だった。
山の民(杣人-そまびと-)にとってこの怪樹は、ヒバ林を統(す)べる山の神そのものだったのだろう。伝説にいう「老猿」は、オオカミなどと同じく山の神の使い、あるいは神の化身(魔物)と理解されるが、注目は「十二」という数字である。 12 という数字は、12カ月や十二支といった暦の一サイクルを想起させる。ちなみに『民俗学辞典』によれば、山の神は「十二様」とも呼ばれ、杣(木こり)や炭焼は12月12日を山の神の祭日とし、「この日は山の神が狩りをする日、木種を播まく日、木を数える日などと言われて山入りを忌む」という。
植物の生態からみれば、「12本」は何らかの理由で主幹を失った結果、たまたまその脇から伸ばした枝の数なのだろう。だが、山の恵みを生活の糧にする人々にとってそれは、山の神の証であり、神威のあらわれと映ったにちがいない。分岐する枝のあいだに置かれた小鳥居は、そこが神霊の座であることを標示するサインなのである。
DATA
市指定天然記念物、新日本名木百選、推定樹齢800 年(諸説あり)、幹周り約8m、樹高約34m
住 所:青森県五所川原市金木町喜良市
アクセス:津軽鉄道線「金木」駅より車で約20 分、津軽自動車道五所川原北IC より車で35 分。
近くの林道沿いに停車スペースあり。
メ モ:駅前からタクシーに乗る場合、往復5000 円で相談するとよい。
ただし冬季は積雪で林道閉鎖の可能性も。
立ち寄りスポット
太宰治記念館(斜陽館、金木駅近く)、芦野公園(津軽鉄道の駅あり、桜の名所)
地球の歩き方「W24 日本の凄い神木 – 全都道府県250柱のヌシとそれを守る人に会いに行く」本田不二雄(著)より抜粋。
https://hon.gakken.jp/book/2080183300
本田不二雄
ノンフィクションライター、神仏探偵あるいは神木探偵の異名でも知られる。神社や仏像など、日本の神仏世界の魅力を伝える書籍・雑誌の編集制作に携わる。
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