ネット上には本当にタイムトラベラーが潜んでいるのか? 科学者たちの本気の捜索活動
まるで“完全犯罪”を目論む知能犯のように、タイムトラベラーは訪れた痕跡を一切残さずに立ち去っているのだろうか。物理学者チームがネット上でタイムトラベラーの痕跡を徹底的に捜索したのだが――。
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物質に知能は宿るのか――。人工的なゲル状物質が、ビデオゲームをプレイしたという驚きの研究結果が届けられている。
「ドラゴンクエスト」に登場する最弱クラスのモンスターがスライムだが、このスライムのようなゲル状のロボットが誕生する日も近いのかもしれない!?
ソフトコンタクトレンズや紙おむつの吸収体などでも使用されているスライム状の物質であり、生物ではないはずのハイドロゲル(hydrogel)。しかしそんなハイドロゲルが、ボールを跳ね返すだけのレトロなビデオゲーム『PONG』のプレイを学習し、習熟したという驚くべき研究が発表された。
英レディング大学の研究チームが今年8月に「Cell Reports Physical Science」で発表した研究によると、ハイドロゲルが電気刺激によって“記憶”を形成し、簡単なビデオゲームをプレイできたというのだ。
実験の仕組みはこうだ。電気に反応するイオンをたっぷり含んだハイドロゲルに電気刺激を与えると、イオンが水分子と共に移動することでハイドロゲルの形状が変化する。研究チームはこのハイドロゲルの反応に目をつけ、人間の脳などの生物学的神経ネットワークが記憶を形成する方法を模倣できるのではないかと考えた。
そして、電極で覆ったハイドロゲルをトレイの中にセットし、一方の電極セットがハイドロゲルを刺激、もう一方の電極がゲルの動きを記録する設定で『PONG』のルールや仕組みを植え付けた。すると、『PONG』の情報をのせた電流に刺激されたハイドロゲルは、ラケットの動きをゲームを実行中のコンピューターに伝えることができるようになったというのだ。
ゲームコートのどこにボールがあるかが常にハイドロゲルに伝えられ、ハイドロゲルは側面に沿ってラケットを上下に動かすことができる。ハイドロゲルはプレイを続けるうちに少しずつボールを打ち返すことを学習していった。そして数回の試行の後には、ハイドロゲルが『PONG』をプレイする能力は初回より約10%向上した。いわば『PONG』をハイドロゲルがプレイし、学習したのである。
2022年には、人工培養した人間の脳細胞が『PONG』をプレイできたという研究が発表されており、今回の研究はそれに触発されたものだ。研究者たちの目的は、生物学的神経ネットワーク (BNN)がどのように機能するかさらに詳しく知り、それを(現在のほとんどのAIの根幹を成す人工知能モデルである)人工神経ネットワーク(ANN)の構築に活用することである。
論文では、「ANNはBNNの近似ではありますが、生物学的インスピレーションに見られるような学習を行うことはできません」と述べ、肉体を持たないANNは、生物が行う学習であるBNNとは異なることを指摘。そこで今回、研究チームはANNにハイドロゲルという肉体を持たせることにしたという。
もちろん、BNNの理解はまだまだ初期段階であり、人間の脳はハイドロゲルよりもはるかに複雑なものだ。それでも今回、生物とはみなされないハイドロゲルに『PONG』の遊び方を学ばせることに成功した事例は大きな一歩と言えるだろう。
なお、今回の実験ではハイドロゲルに対して報酬や罰則といったフィードバックを与えていないということだ。ゲルは単にゲームプレイを学習しただけである。したがって、今後は報酬・罰則系フィードバックシステムを追加することで、さらに優れたパフォーマンスを発揮できる可能性もあるという。
ハイドロゲルという肉体を持ったANNは、今後どこまで進歩していくのか。生物と非生物の定義や、意識の源泉など、未解決の深淵なるテーマにもつながる研究だけに、今後の展開から目が離せない。
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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