マンデラ効果か勘違いか?「ファンタゴールデンアップル」の謎/初見健一・昭和こどもオカルト回顧録
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書評家・ゲームコラムニストの卯月鮎が話題のゲームから連想されるオカルト、超常現象、不思議をピックアップ。これらを知っておけばゲームがもっと楽しくなるかも!?
ニンテンドーDSで発売された『アナザーコード 2つの記憶』と、その続編でWii向けの『アナザーコード: R 記憶の扉』。少女アシュレイの記憶にまつわる奇妙な出来事を描く2本がひとつのソフトにまとまって、1月19日にNintendo Switchに登場しました。
1作目の『2つの記憶』では、幼い頃に両親を亡くしたアシュレイのもとに、死んだはずの父から手紙が届きます。真相を確かめるため、13歳最後の日に無人島に降り立ったアシュレイは、そこで記憶喪失の幽霊少年ディーと出会うことに……。
2作目の『記憶の扉』では、アシュレイがキャンプに誘われて着いた湖で、亡き母との記憶を思い出しながら、美しい湖に隠された秘密を探っていきます。
グラフィックや演出が一新され、イベント、BGMも追加されるなど、根強いファンが多い名作が装いも新たに蘇りました。今回はナビゲーション機能とヒント機能がついて、初心者でも遊びやすいのがポイントです。
では、『アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉』から連想されるムー的キーワード3つを挙げていきましょう。
『アナザーコード 2つの記憶』で、幽霊少年ディーと探索するのはかつて大金持ちの一族が住んでいたという古びた館。
こうした富豪が残した幽霊屋敷として真っ先に連想されるのは、アメリカのウィンチェスター・ミステリー・ハウス(カリフォルニア州サンノゼ)。ウィンチェスター銃によって殺された人々の霊を鎮めるため、38年にわたって増築され続け、部屋数およそ160室という迷宮館です。ただ、観光地化されており、どちらかというと幽霊屋敷のアイコンといった感じでしょうか。
実際に幽霊の目撃談が絶えなかった例としては、イギリスのボーリー牧師館(サセックス州)が有名。1928年、この館に住み始めたガイ・スミス師は図書室で茶色い包装紙に入った頭蓋骨を発見しました。その後、女らしき人影が庭を歩き、幻の馬車が玄関に止まり、呼び鈴がひとりでに鳴り響く……。悩めるスミス師が新聞に投書したところ、ゴーストハンターのハリー・プライスがやってきて、調査の結果、1930~1935年の間におよそ2000回の心霊現象が報告されました。しかし、1939年には疑惑の火事で焼失しています。
こうしたいわくつきの館ばかりではなく、有名な館、たとえば米の大統領官邸・ホワイトハウスにも幽霊が出るというのはよく知られた話。オランダのウィルヘルミナ女王や英首相だったチャーチルも目撃談を語っています。特にリンカーンの執務室でのちにゲストルームに改装された「リンカーン・ベッドルーム」には彼の幽霊がしばしば出現したとか。
同じように、日本でも首相公邸(旧官邸)に「二・二六事件」などの幽霊が出るという噂は絶えることがありません。森元首相はドアノブががちゃがちゃする音で目が覚め、軍靴を履いた一団が遠ざかる足音を聞いたそうです。また、麻生元首相は毎晩、壁がゆらゆら揺れ、「ああこれがお化けだ」と思い、「この度、内閣総理大臣を拝命した麻生太郎です。これからお世話になりますけどよろしくお願いします」と壁に挨拶したと語っています。古い館はそれだけで霊が集まりやすいということでしょうか。
『アナザーコード』シリーズでは、アシュレイが持つ両親の記憶が焦点になります。自分の持つ記憶が本当に正しいかどうかは、なかなか断言できないもの。
記憶にまつわる不思議な現象としてよく挙げられる例に、アメリカの超常現象研究家フィオナ・ブルームが提唱した「マンデラ効果」があります。南アフリカのマンデラ元大統領は27年間を獄中で過ごしたあと、2013年まで存命でしたが、世界中の多くの人々は、彼が獄中で亡くなったと思い込んでいます。
マンデラ効果自体は学術用語ではありませんが、「過誤記憶」という現象に対する研究は進んでいます。それはあたかも本物のように感じられる記憶。米の研究者ジュリア・ショウの著書『脳はなぜ都合よく記憶するのか』によれば、偽の記憶を植え付ける面接を行うという実験の結果、70%以上の被験者が架空の犯罪やトラウマを自白したといいます。さらにひとりの人間の記憶が他人の記憶のエラーに影響を及ぼす「記憶の社会的伝染」が起こりうる可能性もあるとか……。ソーシャルメディアが一般的なものになっている時代、操作された数人の記憶が社会の“真実”となる危険性は高まっていそうです。
シリーズ2作目『アナザーコード:R 記憶の扉』の舞台となっている研究所「JCヴァレー」があるのは、雄大な自然に囲まれた湖畔。
ネス湖のネッシーや、十和田湖・田沢湖・八郎潟の三湖伝説のように、湖は神秘を湛える場所といえます。古代ローマの歴史家タキトゥスの『ゲルマーニア』によると、古代ゲルマン人は湖を神聖視していました。豊穣の女神ネルトゥスの祭りの際には、女神(おそらく女神像)とそれを乗せた牛車が帰ってくると、神秘の湖で奴隷たちによって洗われ、そのまま奴隷たちは犠牲として湖に沈められたそうです。
現実に観測されている奇妙な湖の現象としては、アメリカでもっとも深い湖であるオレゴン州クレーターレイク(水深597m)の通称「湖の老人」。これは湖面に100年以上垂直に浮かび続ける全長9mの切り株。いっこうに腐ることもなく青く透き通った湖面を移動し続けています。腐らないのは水温が低いためとされていますが、現地のネイティブアメリカンの伝承によると、この湖は地底の神ラオと天の神スケルの戦いの結果生まれたとされており、なんらかの霊的な加護が働いている可能性は否定できません。
【参考文献】
ロジャー・クラーク『幽霊とは何か 五百年の歴史から探るその正体』国書刊行会
ジュリア・ショウ『脳はなぜ都合よく記憶するのか 記憶科学が教える脳と人間の不思議』講談社
タキトゥス『ゲルマーニア』岩波文庫
©Nintendo
卯月鮎
ゲームコラムニスト・書評家。雑誌、Web等でゲームの紹介、書評を中心に活動する。著書に、ゲーム実況のはしりとも言われる『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)がある。
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