「サスペリア」を予見していた? 恐怖漫画『13月の悲劇』のシンクロニシティ/昭和こどもオカルト回顧録
「私が見た未来」(たつき諒)よりも前に、予言のような漫画が描かれていた……? 映画『サスペリア』『フェノミナ』に先行した『13月の悲劇』は予知漫画だったのか?
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ポール・ハルパーン 著
シンクロニシティという現象を縦軸に因果関係に関する直観的認識を根底から覆す
シンクロニシティ(共時性)。
分析心理学の泰斗である、スイスの心理学者C・G・ユングが提唱した概念であり、「意味のある偶然の一致」「非因果的連関の原理」などと称される(後にご紹介する、秋山眞人氏の『強運が来る兆しの法則』と併せてお読みになれば、シンクロニシティの観念をつかみやすくなるだろう)。
本書は、このシンクロニシティという現象を縦軸に、広くは科学と哲学全般、そして特に量子力学という学問の歴史が、万華鏡のように展開される絢爛たる歴史書であり、因果関係に関する読者の直観的認識を根底から覆す、知的冒険の書である。 本書で取り上げられる代表的なシンクロニシティの事例が、「量子もつれ」と呼ばれる現象である。
何と量子の世界では、「ふたつの粒子が量子状態を共有するならば、双方が離れても物理量は相関」し、「瞬時に、まったくのタイムラグなく、相手の状態が認識できている」。しかもその状態は「観測するまでは、どちらでもありえるような状態が重なり合っている」というのだ。
相対性理論で知られるアインシュタインはこの観念を嫌い、これを「幽霊のような遠隔作用」と断じて、最後まで認めることはなかった。何しろこれを認めてしまうと、相対性理論の根幹である「光速度不変の法則」が崩れ、宇宙の果てまで一瞬にして情報が届くということになってしまうのである。
だが現在では、「量子もつれ」の実在性は、実証実験によって確認されている。つまり、少なくとも量子レベルにおいては、通常の因果律のほかに「非因果的連関の原理」のようなものが存在しているのだ。
そんな不思議なシンクロニシティであるが、本書の白眉ともいえる第7章では、この用語の生みの親であるユングと、量子物理学者ヴォルフガング・パウリの交流が語られる。「ふたりは、量子論的な重なり合いと、人間の精神活動に見られるある種のシンクロニシティについて、同じ構造を見て取っていたというのだ」。
何しろ、広く科学史を概観する膨大な著作であるから、本書を読み通すのは容易ではないし、かなりの基礎教養も要求される。だが、極上の読書体験を約束する名著であることは間違いない。
また、生物学者・福岡伸一氏による書き下ろしも収録されているので、こちらも必読である。
エスパー・小林 著
知っておくべき未来の情報が満載の、警世の書
本書の著者であるエスパー・小林氏は、本誌にもたびたびご登場いただいている霊能力者であり、「眉間に第3の眼を持つ男」の異名を取る人物である。
2022年1月8日に発売された本誌2月号の特集記事「大予言2022」では、「紛争についてはウクライナあたりが危ない」「長期的に揉める」と、同年2月24日に開始された、ロシアによるウクライナ侵攻を、正確に予言。さらに7月8日の安倍元首相銃撃事件についても「政治家や元政治家」が「狙撃される」と、極めて具体的に予言して、世間を慄然とさせた。
本書は、そんな著者が「すでに見た」近未来の光景を詳細に記した警世の書。
たとえば、ウクライナ侵攻の結末や核使用の可能性、北朝鮮の体制転換はあるのかなど、だれもが気になる近未来をズバリ予言していく。
また、近年にわかに、そのヴォルテージが高まりつつある米中対立であるが、著者はここ10年ほどの間に「米中戦争は、起こる」と断言する。そしてこの戦争は後に、「第3次世界大戦」と呼ばれるようになるという。はたしてこの戦争はどのように始まり、どのような経緯を辿って、どのように決着するのか、その結果、世界がどうなるのかについては、ぜひ本書でご確認いただきたい。
その他、南海トラフ地震からGAFAMの動静、さらには今後注目の業界まで、現代人なら知っておくべき未来の情報が満載された、必読書だ。
森 浩一 著
勝者こそが正義であるという常識に叛旗を翻す
「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉がある。ことほどさように、戦争において、正義などはどこにも存在せず、ただ勝者が正義とされ、敗者は周縁化され悪魔化される。その積み重ねこそが歴史である。
だがここに、そうした常識に叛旗を翻した好漢がいた。本書の著者であり、本邦における考古学研究の第一人者であった、森浩一氏である。生涯に著書264冊、論文292編、新聞寄稿118編を世に問うたというから、まさに超人というしかない。
本書は、そんな反骨精神あふれる熱血漢たる著者が、「敗者の立場で歴史を読み直」そうとする試み。
たとえば、昨今話題の「両面宿儺」。この人物は身体はひとつだが顔はふたつ、手足に至っては4本ずつあり、「人民から略奪して楽しみとする」と、すっかり悪魔化されている。だが実際は、都の横暴から領民を守ろうとして討たれた地元の豪族であったことが、豊富な資料から示される。
本書は、このような敗者たちの物語を、19編も収録した読み応えのある書物。「歴史読本」(新人物往来社)2011年11月号から2013年5月号に掲載された記事が元になっている。最終号の発行から5か月後に、著者は逝去されているので、文字通りの絶筆。執筆中の2012年には右脚の膝から下を切断されたが、それでも病床に半身を起して執筆を続けられたというから、まさに鬼気迫る執念の玉稿である。謹んで拝読したい。
秋山眞人・布施泰和[協力] 著
易に秘められた強大なパワーで、強運を引き寄せる
強運になりたい、というのは、現代を生きる老若男女に、ほぼ共通する願いであろう。しかし一般人にとっては、そのためにいったい何をどうすればいいのか、雲をつかむような話でもある。だが本書の著者・秋山眞人氏は「強運」とは「能力」であり、「あなたの中にも確実に存在」すると断言する。秋山氏といえば、本誌読者ならつとにお馴染み、日本を代表する超能力者として、八面六臂の活躍を続ける人物である。
幸運を引き寄せるといえば、よくいわれるのは「ポジティブシンキング」だが、著者によれば「ポジティブシンキングだけでは絵に描いた餅」にすぎず、それだけで強運を引き寄せることなどおぼつかない。
これに対して、著者が提唱するのが「シンクロニシティ」の活用である。シンクロニシティを用いれば「未来の出来事の兆しを、その場に引き寄せ、あるいは共鳴させて出現させる」ことができるというのだ。そしてそのための具体的なツールとして、著者は『易経』を推奨する。
易経といえば、一般には周代に成立したと考えられているが、著者によれば、その本当のルーツはシュメールにあり、さらに突きつめれば「宇宙の高度知性体」からもたらされたものであるというのだ。「宇宙意識の言語を分析する語学、あるいはツール」こそが易であるとすれば、易に秘められた、異次元的なまでの強大なパワーも納得がいく。万人におすすめできる開運指南書である。
田中英道 著
蘇我馬子は聖徳太子をキリストに仕立てようとした!
まず著者の基本的な立場として、縄文、弥生、そして古墳時代まで、西方から日本に渡来して帰化した人々が多数存在していた、という前提がある。その中でも、特に有力であったのが、ディアスポラのユダヤ人であり、秦始皇帝の末裔である「秦氏」や、本書のテーマである「蘇我氏」など、多くの「同化ユダヤ人」が、日本とその文化の発展に寄与してきたという。
この両者のうち、秦氏は神道を受容し、多くの神社を創建したのに対して、蘇我氏のほうは密かに日本のキリスト教化を目論んでいた。その手段として用いられたのが、キリスト教と多くの共通点を持つ仏教である。
そして蘇我馬子は、あの聖徳太子をキリストに仕立て上げることで、その計画を推し進めようとした。太子とキリストのエピソードの多くが類似していることは、すでに明治時代から指摘されていた事実である。 だが、太子は自らの思想的立場と良心ゆえに、馬子の傀儡たることを潔しとせず、馬子を拒んだ。そのために、馬子は邪魔になった太子の暗殺に至ったというのだ。
著者の田中英道氏は「知の巨人」と称せられる碩学で、東北大学名誉教授。つい先般も、本欄で『日本にやって来たユダヤ人の古代史』をご紹介したばかりである。そんな著者が、一般読者を対象に豊富な資料を惜しげもなく注ぎ込み、丁寧に描きだした古代史の真相。下手な歴史番組なんぞより、断然面白い。
ミュリエル・ジョリヴェ 著
シャーマニズムの真髄に迫るルポルタージュ
日本に、シャーマンは、いる。
たとえば、青森県八戸市の広子さん。イタコである。19歳からこの道に入ったが、現在ではこのような職業は「絶滅危惧種」。「神さまや仏さまをこの世に降ろすために、何十種類にも及ぶ経文や祭文をすべて」記憶しなければならない苛酷な仕事は、深刻な後継者不足に陥っているのだ 奄美大島のサダエさん。ノロであり、ユタであり、「生き神」でもある「可愛いおばあちゃん」。
そして東京都目黒区の明世さん。タロット占いを専門とするが、自分ではむしろ「シャーマニズムの分野に属する」と考えている。
本書は、日本に実在する多くのシャーマンたちとの出逢いの旅を通じて、シャーマニズムとは何かの真髄に迫る、良質のルポルタージュ。
著者のミュリエル・ジョリヴェ氏は、「ベルギー生まれの日本学者」で、「1973年から日本在住」というから、多くの本誌読者よりも日本滞在歴は長かろう。早稲田大学と東京大学に学んだ後、34年にわたって上智大学外国語学部フランス語学科教授を務め、現在は名誉教授。
そんな彼女は、「なによりシャーマンがいなくなると、日本人の魂の一部も消えることになる」と、警鐘を鳴らす。
シャーマンは、奄美大島や沖縄では今後しばらくは生きのびるにしても、東北でも北海道でも消滅の危機に瀕しているのだ。日本人として、重く受け止めるべき問題提起である。
大田俊寛 著
多角的にグノーシス主義を捉え直す学術書
「グノーシス主義」。本誌の読者の方々ならよくご存知であろうが、1~2世紀ごろに、地中海沿岸諸地域で広まった宗教思想で、後の正統派キリスト教からは異端視された。
本書は、グノーシス出現前夜の思想状況に始まり、グノーシスの主要資料である『ポイマンドレース』と『ヨハネのアポクリュフォン』の分析、
グノーシス神話における精神発達論、そしてグノーシスとキリスト教の相互関係など、あらゆる方面から多角的に、グノーシス主義を捉え直そうとする試みである。
著者の大田俊寛氏は、宗教学・思想史を専攻する文学博士で、現在は埼玉大学非常勤講師。そして本書は、著者が東京大学に提出した博士号学位取得論文を元に執筆された、正真正銘の学術書である。
生半可な覚悟では刃が立たないかもしれない。
何しろ本書の学問水準の高さたるや、あのユング御大のグノーシス論を「『でたらめ』の一語に尽きる」と斬って捨て、本邦における斯界の大御所・荒井献氏や大貫隆氏の見解ですら「空疎なイメージの拡散」に手を貸している、と批判するほどであり、もはや素直に平伏すしかない。これまで、このおふた方の著作を適当にナナメ読みして、偉そうにグノーシスについて講釈を垂れてきた身である評者としては、真に慚愧に堪えぬといわざるを得ない。
なお本書は、2009年に発刊された、同じ標題の書物の新装版である。
(2023年5月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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