植物には“数える能力”があると判明! 脳に依存しない「非神経知能」研究の最前線に衝撃

文=仲田しんじ

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    脳を必要としない知能が存在するのか――。新たな研究によると、植物にも学習能力があることが示されている。植物は時間の経過をカウントできるというのだ。

    植物も意思決定をしている

     難しい意思決定を下す前には脳をフル回転させ、じっくり考える時間が必要だ。その一方、脳で考えているようには思えない意思決定もある。たとえば野球の内野手が内野ゴロをさばく際、塁上のランナーを殺すのか、一塁に投げるのかじっくり脳で考えている暇はないだろう。このような意思決定は、それほど脳を必要としていないのかもしれない。

     新たな研究は、学習には脳が必要だという長年の定説に異議を唱え、驚くべきことに植物が予想外の方法で情報を処理している可能性まで示唆している。学習、記憶、意思決定には脳が必要だと長らく考えられてきたが、最近の研究からは複雑な情報処理はニューロンに依存しない可能性が続々と報告されているのである。

    植物が日にちを数えていた

     米ウィリアム・アンド・メアリー大学の心理学教授、ピーター・ヴィシュトン氏と、彼の教え子であるペイジ・バートッシュ氏の研究チームが昨年12月に学術誌「Cognitive Science」で発表した研究は、植物が数を数えることができる可能性を示唆している。われわれの数の概念とは異なっていそうだが、たとえばオジギソウは「周囲の出来事を数えている」ことが判明したのだ。

     研究チームによると、これは植物が数を数えることができる、つまり個々の出来事を区別して追跡できることを示す初めての証拠だという。

     オジギソウ(学名:Mimosa pudica)は、しばしば「恥ずかしがり屋の植物」と呼ばれ、触れたり揺らしたりすると、葉が内側に折り畳まれる。また、オジギソウの葉は夜になると閉じ、日が昇ると再び開く。この動きは「就眠運動」として知られている。

     研究チームは今回、オジギソウを窓のない部屋の中に設置された湿度の高いテントの中に置き、光と暗闇に繰り返し晒すことでその反応を観察。1日目と2日目はオジギソウを12時間の暗闇と12時間の光に晒し、3日目は24時間暗闇の中に放置するサイクルを計5回繰り返した。

     その結果、オジギソウは1日目と2日目の“夜明け前”、つまり光が期待される直前の時間帯には動きが活発化していたのだが、一日中暗闇が続く3日目にはそのような動きは見られなかった。つまり、光が期待できない3日目を数えて把握していたのである。

    「これは植物が、より適切な言葉が見つからないのであえて言うなら、この3日間の周期を『学習』し、それに応じて活動を変えたことを示唆している」とヴィシュトン氏は科学メディア「SciTechDaily」に説明する。

     この変化をモデル化すると対数曲線が見られ、オジギソウの動きが最初は急速に変化し、その後は徐々に安定した一定のパターンに落ち着くことも判明した。

    「これは動物の学習において見られるパターンと同じです。たとえばネズミに一連の動作を特定の順序で行うように教える場合、ネズミがその順序を理解するのにかかる期間があり、その後は、パターンを予測する能力が徐々に向上していくことが予想されます」(ヴィシュトン氏)

    Krishnendu PramanickによるPixabayからの画像

    時間追跡とイベントカウントの仮説

     別の可能性を排除するため、研究チームはオジギソウが出来事を数えるのではなく、時間を計測しているかどうか検証した。

    「多くの植物が24時間周期の概日リズムに合わせて動き、太陽を待ち構えて葉を開くことはよく知られています。植物が72時間周期(今回の研究における3日間のパターンの期間)を追跡できるという証拠はありませんが、私たちはその可能性を検証したかったのです」(ヴィシュトン氏)

     研究チームが1日の周期を24時間から20時間に短縮したところ、植物はすぐに新しいパターンに合わせて動きを調整した。さらに仮説を検証するため、彼らは最終実験として、3日間の周期を10時間から32時間までランダムに変化させた。

     研究チームは周期が12時間未満または24時間を超えると、このパターンが崩れることを発見した。このことは植物が光と暗闇のパターンを把握するのに必要な最小時間と、その情報を保持できる期間の両方に限界があることを示唆している。

     しかし、12~24時間の範囲内ではオジギソウは暗闇から光を期待できるタイミングを把握して、より多くの活動を示したのである。

    「この結果に対する最も単純な説明は、これらの植物が単に時間に反応しているのではなく、発生したイベントの数を追跡しているということです」(ヴィシュトン氏)

    画像は「Wikimedia Commons」より

    非神経知能の可能性

     今後の研究でこれらの発見が確認されれば、ニューロンに依存しない情報処理の形態の存在が示唆されることになる。

    「私がこれまで読んだ記憶や意思決定に関する理論はどれも、必ずニューロンが関わっています。当たり前ですが、植物にはニューロンがありません。それにもかかわらず、植物は認知機能に似た働きをしているように見えます」(ヴィシュトン氏)

     今回の結果は、神経細胞以外の細胞にも学習能力があることを示唆している。つまり、非神経知能(Non-Neuronal Intelligence)が存在する可能性だ。

    「動物や人間には、ニューロンではない細胞がたくさんあります。私たちは、それらが学習に関与していないと単純に考えていますが、もしかしたら関与しているのかもしれないのです。学習はあらゆる細胞に具わっており、これまで本格的に研究されてこなかっただけなのです」(ヴィシュトン氏)

    Nika AkinによるPixabayからの画像

     この非神経知能が生物学的レベルでどのように機能するのかは依然として不明であり、さらなる研究が必要となる。

    「発達心理学者として、私は行動の特徴づけに興味があります。世界の化学者や生物学者が、この現象が実際にどのように起こっているのかを理解するため、よりメカニズム的な問いを投げかけてくれることを期待しています。研究が進むにつれて、この分野がどのような方向へ進んでいくのか、非常に楽しみです」(ヴィシュトン氏)

     今回の研究結果は、新たな種類の知能の存在を示唆することで、植物と動物の境界はかつて考えられていたほど明確ではないかもしれないという仮説に新たな知見を加えるものになる。

    「通常、私たちは植物を思考したり行動したりする生き物とは考えません。刺激に対して単純な反応を示す反射的な存在だと考えます。しかし、実は動物界と植物界の間に明確な境界は存在しない、あるいは私たちが考えているよりもずっと境界が曖昧なのかもしれません」(ヴィシュトン氏)

     はたして脳を必要としない知能が存在するのだろうか。進展が目覚ましいこの分野の研究に引き続き注目していこう。

    【参考】
    https://scitechdaily.com/scientists-discover-plants-can-count-and-may-be-smarter-than-we-thought/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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