プレシオサウルスの生き残りか新種の哺乳類か? 謎の水棲UMAネッシー/世界ミステリー入門
ネス湖に棲むという巨大水棲獣ネッシー。世界で最も有名なUMA(未確認動物)といっても過言ではないだろう。古くから目撃報告が絶えず、写真や映像にもその姿を捉えられているが、今もなお多くの謎を秘めた存在だ
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未確認動物UMAの中でも、ダントツの知名度があるネッシー。日本でいえばツチノコも有名だが、世界的に見ればビッグフットやチュパカブラより「Cryptids」の代表として認識されている。
水中に潜む巨大な生き物としての怪獣的な魅力、そして太古から密かに生き延びてきたという歴史的なロマンがあいまって、UMAといえばネッシー、というイメージは確立されている。
ネッシーの名前の由来はもちろん、スコットランドのネス湖。スコットランド北部のハイランド地方にある巨大な湖の怪獣伝説について、振り返っていこう。
まずネス湖は、グレートブリテン島北部にある断層に水がたまったことでできた、細長い湖。長さ約35㎞、もっとも深いところで水深230メートルととても深い。グレートブリテン島では最大の貯水量がある大きな湖だ。スコットランドを分割するように、東西の両端は川や運河で海につながっている。
さて、ネス湖のネッシーといえば、この写真。通称、外科医の写真だ。1934年にロバート・ケネス・ウィルソンが撮影したもの。
この写真については決定的な証拠として扱われる一方で、当時から疑惑も多かった。
波の大きさからしてそんなに大きくない、何かのヒレだ、カワウソのしっぽだ、などの指摘が多数。とくに、1994年3月になって、ウィルソンの知人という人物が「あれは模型を使って撮影した」と告白し、むしろ「ネッシーっていなかったんでしょ?」という認識を広めるものとなっている。
ただ、この「模型を使った撮影」という暴露も実は間違いで、実際は、カワウソの写真がとても上手に撮れたという説もある。どっちにしても巨大生物の写真ではない。
のっけから「いない」話になってしまったけど、「外科医の写真」だけで全面否定できないのがネッシーの面白いところ。
これまで膨大な「ネッシーらしきもの」の情報が集まってきているので、大きく3つの時代に分けて紹介していこう。
まずは古代。7世紀に成立した「聖コロンバ伝」という古文書にも「ネス湖の怪獣」の記録がある。西暦565年にコロンバという聖職者がネス湖の怪獣を退散させたというエピソードが記録されている。
ただし、退治したという怪物は「水に住んでいる大きなもの」というくらいで、龍とか蛇のような、今でいうネッシーのような姿かどうかはわからない。そもそもコロンバはスコットランドで布教を担当していた聖職者。伝道のために英雄的な話として「盛った」可能性もある。史実よりは伝説に近いと考えられる。
もちろん、このころはネッシーという通称ではない。
中世になると、スコットランド各地で「ケルピー」という伝説のモンスターが語られるようになる。大きな湖や沼に潜む幻獣で、顔は馬のようだけど下半身がウミヘビのような姿。ときどき陸上にあがって人を襲う。ケルピーは不吉な幻獣で、その姿を見るだけで死、特に溺死の予兆となるとか。
ネス湖も大きな湖なので、当然、ケルピー伝説も多くあった。
というように「ネス湖には怪獣がいる」というのは、いわゆるネッシーの目撃や報道よりはるか以前からあった、といえる。
続いての年代は1930年代。
スコットランドの幻獣伝説に彩られたネス湖は、近代化の中で運河が通り、周辺の商業利用が進む。
そんなネス湖で、昔話や伝説ではないネッシーの存在が騒がれたきっかけは、1933年の目撃事件にある。マッケイ夫妻が「巨大な怪物」を目撃したという情報が地元紙に掲載されたことなどを始まりに、ネス湖の怪獣=ネッシーが世界的に知られていくことになった。
1933年8月にはジョージ・スパイサー夫婦がネス湖畔の道路を横切る巨大生物を目撃し、11月にはヒュー・グレイが世界初といわれる写真撮影に成功している。
そして翌年、1934年に話題になったのが、冒頭で紹介した「外科医の写真」だ。
このように1933年は、現代につながる「ネッシー元年」といえる時期。
この年に国道82号線が開通し、湖の見通しが良くなり、観光客を含めて交通量が増えたのもネッシー騒動を過熱させた原因だともいわれている。
また、古くから囁かれてきた「ネス湖の怪獣」が、「中生代の大型水棲爬虫類プレシオサウルスの生き残り」として認識されていった背景は、1925年の映画「ロスト・ワールド」や、1933年に公開の映画「キング・コング」の影響があるとも思われる。世界のどこかに古代の生き物が生き残っているのではないか……というイメージが、ネス湖の怪獣を中生代の恐竜、首長竜というイメージで強化していった。
その後、すっかり怪獣スポットとして知られたネス湖には民間の怪獣マニアが集まり、目撃、撮影、捕獲などに挑んでいく。1960年にティム・ディンスデールが動画撮影に成功したのは大きな成果だ。
そして1970年代にボストン応用科学アカデミー調査団によって水中カメラや水中音波探知機による捜索が行われた。ここでは頭部やヒレらしき部分の撮影に成功している。
これらの写真や目撃情報などを総合すると、プレシオサウルスのような姿とざっくり言われつつも、いくつかユニークな特徴があることがわかってきた。
・頭にツノがある
・背中にコブがある
・前足と後ろ脚はヒレになっている
……などの「ディテール」だ。
とはいえ、全身を写真で決定的に姿を捉えたものはなく、目撃証言にもブレがある。なにしろプレシオサウルスなのにスパイサー夫婦は「陸上で見た」というのだから、なかなか謎が深い。
さらに、頭のツノをピーンと立った耳、背中のコブをタテガミとすると、馬のようなシルエットにもイメージが重なってくる。となるとケルピー伝説にもつながってしまい、古代の怪獣、水辺の妖怪としてのネッシーと、現代の情報が一致するということにもなる。
数々の否定論にも晒されながら、それらを凌駕する目撃情報、写真、科学的な調査などが積みあがっているネッシー研究。現在の「調査」はどうなっているのか?
まず、現在も毎日、観察されている。今は固定カメラで24時間ライブ配信もある。YouTubeだと「Nessie On the NET」でネッシーを観測することが可能だ。
そして最近の話題としては2019年の「ウナギ騒動」がある。
国際的な科学者チームが2018年6月にネス湖で2週間に及ぶ調査を実施し、湖水からネス湖に住む生物のDNAを解析。その結果、約3000種におよぶ生物のDNAが検出されたが、多くの微生物ほほか、すでに確認されている魚類や哺乳類のDNAしか出てこなかった。ワニなどの水生爬虫類のDNAは痕跡すらなかったとか。そのなかでもっとも可能性が高いとされたのがオオウナギ、というのだ。
だが、確かにウナギは大型になることはあるが、あくまでも消去法でしかない。それに、すでに知られている生物が大型化したもの、という巨大生物説は逆に信憑性が高まったともいえる。
そして、2020年にはソナーで巨大な生物が撮影されていたり、2021年にはドローンで撮影されていたり、2023年には10代の少女が撮影に成功したと、公式記録サイトが発表している。
こうなってくると、「こんなに調査されているのに決定的な証拠がない」と考えるか、「こんなにたくさん情報があるんだからいるに違いない」と考えるか、どちらの説得力もある。
正体についても、プレシオサウルス、巨大両生類、巨大アザラシ、巨大なカメなど様々だけど、「古代から何かしら巨大なヤツ」がネス湖を騒がせていることは間違いない。
ここで「ネッシーの正体はこれだ!」という結論はもちろん出ないが、首長竜にしても、カメやスッポンなどとしても、はたまた未知の生物だとしても、ネス湖の怪獣にまつわる情報がこれからも世界を騒がせていくだろう。
webムー編集部
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