アルゼンチンのサッカー名門クラブを襲った「7匹の黒猫の呪い」とは!? 35年にわたる絶望を招いた呪詛

文=webムー編集部

    直近のW杯優勝も果たしたサッカー強豪国、アルゼンチンでかつて発生した呪詛騒ぎ。35年にわたりクラブとサポーターを悩ませ続けた恐怖の呪いとは――?

    アルゼンチンサッカー界の“呪い騒動”

     古今東西、スポーツにおけるジンクスや呪いにまつわるエピソードは事欠かない。その中でも、史上最大のミステリーの一つと囁かれているのが、かつてアルゼンチンのサッカークラブを襲った「7匹の黒猫の呪い」だ。

     時は1960年代、アルゼンチン中東部ブエノスアイレス州の都市アベジャネーダを本拠地とするサッカークラブ「ラシン・クラブ」は、創設以来となる大躍進を遂げていた。所属する1部リーグ「プリメーラ・ディビシオン」で最多得点をはじめ数々の記録を塗り替えるシーズンが続き、順位もうなぎ上り。1966年にリーグ優勝を果たすと、その翌年には初めて南米クラブ王者を決める大会「コパ・リベルタドーレス」で優勝。ホームタウンの経済にも絶大な好影響をもたらしたという。

    コパ・リベルタドーレスで優勝した1967年のチーム 画像は「Wikipedia」より引用

     ところがこの優勝騒ぎの最中、ホームタウンを同じくするライバルクラブ「CAインデペンディエンテ」のサポーターによる悪事が発生する。なんと一部がラシン・クラブのホームスタジアムに極秘裏に侵入、敷地内に“7匹の黒猫の死骸”を埋めると、成績低迷を願う呪詛儀式を行ったというのだ。

    信じられないチームの転落劇

     すると、この年を境にファンの誰も想像できなかったラシン・クラブの前代未聞の転落劇が始まる。シーズンごとに成績は低迷し、1976年頃からは1部リーグからの降格危機を連発。なんとか踏み留まっていたものの成績は好転せず、ついに1983年には2部「プリメーラB・ナシオナル」に降格となった。

     ところが、それでも不幸は止まらない。1985年に1部復帰を果たすなど、一時は希望の光が見えたかのようにも思えたが、結局10年以上にわたり成績は低迷し続け、なんと今度は1998年にクラブが破産。膨大な額の借金を抱え、経営権が譲渡されるなどの混乱が相次いだのだ。

    悲嘆に暮れるサポーター 画像は「YouTube」より引用

     しかし、ここからさらに驚くべき展開が待っていた。ラシンサポーターの間で、あまりにも長期にわたるクラブの低迷と混乱の原因は30年以上前、あの「7匹の黒猫の呪い」だとする認識が既成事実化。さらにクラブの経営陣も、呪いへの対処に本腰を入れることを決める。そして10万人を超えるサポーターを動員し、ホームスタジアムに埋められた“7匹の猫の死骸”を掘り返す一大事業が実施されたというのだ。

     サポーターによる懸命な捜索活動の結果、ホームスタジアム周辺から6匹の猫の死体が発見される。ところが、あと1匹がどうしても見つからない。諦めムードも高まっていた2001年、当時のレイナルド・メルロ監督が「たとえピッチの芝生を掘り返し、スタジアム全体を壊して建て直すことになっても、最後の1匹が見つかるまで捜索を止めるな」とクラブとサポーターを鼓舞した。すると直後、なんと最後の1匹の死骸が発見されたというのだ。

    呪詛からの解放と劇的復活

     その後、まさに奇跡が起こる。呪いから解放されたラシン・クラブは、水を得た魚のように勢いを盛り返し、なんと同年、1966年以来となる1部リーグ(アペルトゥーラ=前期)優勝を果たすことになった。歓喜するサポーターたちによってメルロ監督の銅像まで作られる熱狂が巻き起こったという。驚異的な出来事ながら、当時のアルゼンチンは国家全体が経済危機の真只中にあり、この話題が世界的な騒ぎになることはなかった模様だ。

    画像は「Bolavip」より引用

     35年ぶりの優勝以降、クラブの成績は浮き沈みを経ながらも、2014年には再びリーグ制覇を果たした。現在は運営企業を変えながら、地域に密着したチームとして熱狂的なサポーターによって支えられ、アルゼンチン5大クラブに数えられている。

    「7匹の猫の呪い」については現在もサポーターの間で議論が続いており、単なる偶然であるという声、呪いをかけられたという心理状況がクラブとサポーターの集団意識に影響したという説も唱えられているが、呪詛による超自然的な力の介入だったと考える人も多いという。

    ラシン・クラブのホームスタジアム、エスタディオ・フアン・ドミンゴ・ペロン 画像は「Wikipedia」より引用

     真相は謎のままだが、4年に一度のサッカーW杯で本来試合とは何の関係もないはずの動物による勝敗予言が話題になったり、ゲン担ぎでヒゲを伸ばす野球選手がるように、スポーツにおいて運などの技術以外の面が結果を左右するケースがあることは多くの人が認めるところだろう。

    【参考】
    https://bolavip.com/ar/futbolargentino/Se-supo-la-cantidad-de-fechas-que-fueron-suspendidos-Payero-y-Nardoni-tras-el-ESCANDALO-en-Boca—Racing-20230505-0032.html
    https://www.infinityexplorers.com/cat-curse-of-racing-club-seven-dead-cats/

    webムー編集部

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