深紅のドレスで飛び跳ね、見る者を恐怖させる「アクロバティックさらさら」/ダンダダン考察ファイル
人気アニメ「ダンダダン」の第1クールで、あまりにも切ない親子の絆を描いた妖怪「アクロバティックサラサラ」。視聴者の多くを涙させたこの物語の源流である都市伝説とはいかようなものか…その謎に迫る──。
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北米公開を皮切りに大ヒットを記録し、A24作品史上最高となる興行収入2億ドルを突破する異例の快挙を成し遂げた映画『バックルームズ』が、いよいよ日本公開! 実写化されたネット発の都市伝説(クリーピーパスタ)に震えよう。
目次
今年5月に全米公開されるやいなや、あの『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』の興収を上回り、全米興行収入1位を獲得した映画『バックルームズ』が、2026年9月4日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開スタートした。
本作は、謎の黄色い空間“Backrooms”が舞台の映画だ。
ある⽇、⾃らが営む家具屋の地下の壁をすり抜けて異次元=バックルームズへと迷い込んでしまったクラークは、不条理な世界で怪異に直⾯する。セラピストのメアリーもまた、彼の⾏⽅を追ってバックルームズへと⾜を踏み⼊れる。
どこまでも続く黄色い壁紙の部屋、終わりのない廊下。不自然な間取りと、意味を失い床に埋まった設置物。わずかに現実からズレている――そんな出口のない「リミナルスペース」はなぜ存在するのか。この空間で⼀体何が起きているのか?

元ネタは、2019年頃に海外のインターネット掲示板で生まれた“Backrooms”という都市伝説=デジタルフォークロア。詳しくは後述するが、この都市伝説“Backrooms”はネット上の有志たちによって、リアルタイムで設定が追加され続ける現代の怪談(クリーピーパスタ)のひとつだった。それを実写化し、スクリーンの世界へ完全昇華させたのが本作となる。
現実世界の裏側=リミナルスペース(Liminal Space:境界空間)に迷い込む「リミナルスペースホラー」としては、日本で大ヒットしたゲーム&映画『8番出口』の源流に繋がるものと言ってもわかりやすいかもしれない。
ちなみに筆者、普段活動しているオーディオライターの立場から、本作の音響にまつわる見どころについて公式リリースに解説コメントを寄せている身である。ただ、世界的なデジタルフォークロアの発展系としては、やはりムー的目線でも見逃せない一作。というわけでここでは、オカルト・都市伝説の観点から、本作の構造を紐解いていきたい。

本作の登場人物たちは、ふとした瞬間に家具ショップの地下にある壁を通り抜け、「黄色い壁紙が続く異空間(=バックルームズ)」に迷い込んでしまう。この根底にある概念が、「ノークリップ」だ。

もともとはゲームなどで、開発者モードやプログラミングのバグによってキャラクターが壁や床のあたり判定をすり抜け、本来は行けないはずの未定義領域へ入り込む現象を指す言葉である。
しかし、これが都市伝説の文脈に持ち込まれたとき、意味合いは一変する。「我々の暮らすこの現実世界にもプログラムのバグが存在し、ふとした瞬間に足元のあたり判定が外れ、世界の裏側へと滑り落ちてしまう」という観念へ発展するのだ。
この「いつもの場所から一瞬で異界へ迷い込む」構造は、古くから日本で語られてきた「神隠し」そのもの。あるいは、2ちゃんねる(現5ch)の投稿から始まった現代の都市伝説「きさらぎ駅」を思い出してもいいだろう。
いつもと同じ電車に乗り、いつもと同じ景色を眺めていたはずなのに、トンネルを抜けると存在しないはずの無人駅に着いている——。「ノークリップ」とは、現代のネット時代における「神隠し」の新たな変奏である。
そして、現実世界をノークリップしてすり抜けた先にある異界、リミナルスペース。それは、現実空間の位相が狂い、次元の隙間に放置された世界の裏側だ。
リミナルスペースは、深夜の無人になった商業施設、誰もいない学校の廊下、蛍光灯が不気味に明滅する地下通路など、本来であれば「人が集まっているはずの場所」から完全に人間が消失した空間となっており、その不気味さで人を惹きつける。その恐怖に魅了された人々の想像力が掻き立てられた結果、今回の『バックルームズ』や『8番出口』のような作品に発展していくわけだ。

人は、ただの「誰もいない空間」が怖い。人間にとって「見慣れた風景」の中にわずかな不条理(あるべき人がいない、ドアの位置がおかしい、無限に同じ廊下が続く)が紛れ込むと、精神的圧迫感が生じる。映画「バックルームズ」は、この圧迫感を実写化した作品となっている。
登場人物たちが迷い込む、どこかで見たような黄色い壁紙が続く部屋(=バックルームズ)。そこには、湿ったカーペット、頭上でブーンと鳴り響く蛍光灯の雑音が延々と続いており、観る者の無意識下にある何かを刺激する。そして、逃げ場のない無限の部屋は、それ自体が自己増殖を続けており、空間の形をした怪異と言えるだろう。

さて、リミナルスペースの概念から生まれた都市伝説“Backrooms”の起源は、2019年に海外の匿名掲示板「4chan」に投稿されたたった1枚の画像に遡る。黄色い壁紙の部屋が映った画像の投稿に、「現実の裏側に落ちてしまった先の空間」「爆音で鳴り響く蛍光灯のノイズ」などのリプライが添えられたことで、“Backrooms”はストーリー性を持つデジタルフォークロアとして発展することとなった。

作者不詳のその投稿は、すぐさま世界中のネットユーザーの想像力に火をつけた。明確な著作権者が存在しないデジタルフォークロアだからこそ、有志たちが「実はこの空間には階層(Levels)がある」「こんな異形(エンティティ)が潜んでいる」と自由に設定を書き足し、巨大なシェアワールドへと成長していったのだ。いわば、世界中のネット住民の恐怖心が集合体となって作り上げた現代の妖怪である。
そして2022年、この現象をより加速させたのが、当時わずか16歳だったケイン・パーソンズだ。彼は、自身のYouTubeアカウントで、“Backrooms”の世界観を実写映像化した『The Backrooms (Found Footage)』を投稿。アナログホラー&モキュメンタリーの手法と独自設定を組み込んだその動画は爆発的な再生数を記録した。
そして今回、気鋭の映画スタジオA24のもと、パーソンズ自身が監督を務めて長編映画化を果たしたのである。冒頭でお伝えした通り、映画は全米公開されるやいなや見事に大ヒット。「映像版 Backrooms」の金字塔を打ち立てたYouTube発の映画監督は、本作で全米興行収入1位の監督最年少記録を更新するまでに至った。
映画『バックルームズ』は、無限に増殖を続けるリミナルスペースの恐怖を、大画面スクリーンと音響の没入感で体験できる一作だ。 いわば、観客自身がバックルームズという名のリミナルスペースに迷い込める映画。ムー目線では、都市伝説の世界に入り込める映画と言っても良いだろう。
どこまでも続く黄色い壁紙の部屋と、周囲を取り巻く不快な蛍光灯の低音ノイズ……映画館という暗闇の空間でそれらを全身に浴びれば、すぐに映画館の座席ごと「現実の裏側」へノークリップできる。

タイトル: 『バックルームズ』
公開:9月4日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ All Rights Reserved.
監督:ケイン・パーソンズ
出演:キウェテル・イジョフォー、レナーテ・レインスヴェ、マーク・デュプラス、フィン・ベネット他
2026|アメリカ|126分|英語|5.1ch|原題︓Backrooms|字幕翻訳︓佐藤恵⼦ | 映倫︓G |
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC.
公式サイト https://a24jp.com/films/backrooms/
公式X https://x.com/A24HPS
公式Instagram https://www.instagram.com/backrooms_jp/
公式TikTok https://www.tiktok.com/@backrooms_jp
杉浦みな子
オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
https://foriio.com/minako-sugiura
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