人形が社殿を埋め尽くす和歌山「淡嶋神社」の真骨頂とは!? 「見せる」こだわりと陳列への執念
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都市伝説には実は、元ネタがあった。今回は、謎の村にまつわる奇妙な話を紹介
近年、怖い村にまつわる都市伝説が多数語られている。その筆頭は「杉沢村」だろう。
これは青森県の山中にあるとされる廃村で、村に向かう途中の道には「ここから先へ立ち入る者、命の保証はない」と記された看板が立てられている。さらに進むと村の入り口があり、そこには朽ちた鳥居が立っていて、根元には髑髏のような形をした岩があるという。
奥へ進むと廃墟となった村の家屋があるが、血痕が今も残されており、足を踏み入れた者は村に残る怨霊たちに襲われる。
杉沢村では、かつてひとりの若者が精神に異常をきたし、一夜にして村人を皆殺しにした後、自身も命を絶った。これにより村は滅び、怨霊の棲み処と化したのだという。
後日譚というか、杉沢村に伝わる都市伝説として、以下のような話が知られている。
あるカップルが山中で道に迷い、夜も更けたころ、女性がトイレに行きたいといい出した。しかしトイレなどあるはずもない場所なので、女性が車から降り、草むらで用を足す間、男性は車内で待っていた。
しかし、突然車が何者かに揺すられるように揺れ出した。あたりを見回すとだれもいないにもかかわらず、次々と車のガラスに血痕が現れ、それは人の手の平の形をしている。男性は思わずアクセルを踏み込み、逃げ出した。車から降りていた女性を置き去りにして……。
翌朝、明るくなってから男性がその場に引き返してみたが、女性はおらず、その後見つかることもなかった。女性の末路については発見されたものの廃人と化しており、精神病院に入院している、とされる場合もある。
この杉沢村と並んで有名なのが「犬鳴村」だ。これは心霊スポットとして有名な福岡県の犬鳴峠の付近にある村だとされる。
犬鳴村は外界と隔絶されており、村の入り口には、「この先、日本国憲法は通用せず」と書かれた看板が立てられている。そして村に通じる道には縄と缶で作られた罠が仕掛けられており、外部の人間がこれに引っかかると凶器を持った村人たちが追いかけてくる。
この村人たちは異常に足が速く、捕まると惨殺されてしまう。犬鳴村は江戸時代ごろに酷い差
別を受け、外部との交流をいっさい拒んできた村とされ、日本の行政の記録や地図からは抹消
されているという。
また村の入り口近くにはボロボロのセダンがあり、その付近の小さな小屋には人間の死体が山積みにされていると語られる場合もある。この村に入ると携帯電話の電波が圏外となり、助けを呼ぶこともできない。またこの村は村人たちが自ら外界との交流の道を閉ざしたのではなく、感染症等を患っていた人々を隔離する目的で作られたと語られることもある。
このほかにも杉沢村と同じように村に入ると怨霊たちに襲われるとされるパターンもある。
これら杉沢村、犬鳴村以外にも村にまつわる都市伝説は全国にいくつもあり、さまざまに語られている。最近では先述した「犬鳴村」をモデルにした清水崇監督の映画『犬鳴村』(2020年)が公開され「恐怖の村シリーズ」として続編『樹海村』(2021年)、『牛首村』(2022年)が公開された。
海外でもアリ・アスター監督の『ミッドサマー』(2019年)が公開され、日本でも話題になった。この作品ではアメリカの大学生グループがスウェーデンのある村で異教の儀式に巻き込まれていく様子が描かれている。これ以前にも、小説では安部公房の『砂の女』(1962年)、横溝正史の『八つ墓村』(1949〜51年)など、奇妙な村を扱った作品は多数ある。
このように怖い村たちは現代人を恐怖させるとともに、惹きつけているようだ。
しかし、人に知られぬ恐るべき村の話は現代にだけあるわけではない。実は歴史を遡ってみると、同じように隠された村に偶然足を踏み入れてしまう、都市伝説めいた話が存在しているのだ。そんな話のいくつかが、平安時代末期に記された説話集『今昔物語集』に記されている。
まずひとつ目は『今昔物語集』巻31、第13「大峯を通る僧、酒泉郷に行きし語」だ。
昔、僧が大峯(現在の奈良県大峰山)で道を間違え、迷った末に人里に辿り着いた。
その里には黄色い酒を湛える不思議な泉があり、僧が驚いていると、里の者たちが大勢やってきてある家に案内され、食事を提供された。そしてその家の者が若い男に「この人を連れて例の場所へ行け」と命じた。
僧はその若い男に山の片側に連れていかれ、「実はあなたを殺すためにここに来た。以前からあなたのように偶然村を訪れた人がこの村のことを語ることを恐れ、必ず殺していた。だから、人はこのような村があることをだれも知らない」と告げられる。僧は泣いて命乞いをし、村のことを話さないことを条件に生きて帰された。
しかし僧は口が軽い男だったため、この村のことを口外してしまう。それを聞いた若者たちの一部が僧に案内させてこの村に向かった。しかしその者たちは二度と帰らず、人々は彼らはひとり残らず皆殺しにされたのだろうと語り継いだという。
『今昔物語集』にはもうひとつ不思議な村に迷い込んだ僧の話がある。巻26第8「飛騨国の猿神、生贄を止めたる話」だ。
飛騨国(現在の岐阜県北部)で道に迷った僧が、大きな滝の裏側に伸びる道の先に人里を見つける。僧はその里で歓迎され、妻を貰い、食べ物は好きなだけ与えられて幸福に暮らす。
しかしあるとき、妻の様子がおかしいことに気づき、里の者たちの動向を探ったところ、自分が妻の代わりに神への生け贄として捧げられようとしていることを知る。
だが、僧は強かった。妻に刀を用意させ、生け贄として村人たちに宝倉に連れていかれた後、現れた猿神たちを刀で逆に脅し、人を傷つけないよう約束させたのだ。
そして村を生け贄の恐怖から救った僧は長者となり、妻とともに幸せに暮らしたという。
このように、現代の怪異譚に近い怖い村の話が平安時代にも存在していた。主人公が僧侶であったり、酒の湧く泉や猿神の出現などは現代では珍しいかもしれないが、隠された村に迷い込み、その村独自の習わしにより恐ろしい目に遭う点などは現代にも通ずる部分がある。
しかし『今昔物語集』においてふたりの主人公の明暗はくっきりと分かれている。現代においても恐ろしい村に迷い込んでしまったとき、あなたが平和な日常に帰れるかは、その勇気と行動にかかっているのかもしれない。
朝里樹
1990年北海道生まれ。公務員として働くかたわら、在野で都市伝説の収集・研究を行う。
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