巨樹・怪樹・妖樹にまつわる謎と伝説!全国「御神木」9選/本田不二雄
この国にはたくさんの〝ヌシ〟がいる──。 全国の巨樹を訪ね、拝していく旅で出会ったのは、偉大にして恐ろしく、想像を超えた「ちから」に満ち、存在の奇跡を思わせる驚異の御神木群だった。
記事を読む
世界の神話や伝承に登場する幻獣・魔獣をご紹介。今回は、頭は猿、躯は狸、尾は蛇、手足は虎ーー「鵺」です。
『平家物語』によれば、仁平の頃、夜な夜な東三条の森のほうから一群の黒雲がやってきて御殿を覆い、時の近衛天皇が魘されるという怪事が起こった。そこで源三位源頼政が警固を命じられた。夜半、頼政は「雲の中に怪しき物の姿」を見てこれを射落とすと、「頭は猿、躯は狸、尾は蛇、手足は虎の姿なり。鳴く声鵺にぞ似たりける」という、何ともいいようのない怪物であった。
つまり『平家物語』では、頼政が退治したのはあくまでも「鵺という鳥に似た声で鳴く正体不明の怪物」であったのだが、それがいつしかその怪物自体が「鵺」と呼ばれるようになり、そのまま定着してしまったものらしい。ちょうど「フランケンシュタインという人物が創った名前のない怪物」が、いつしか「フランケンシュタイン」という名前で定着したのと同じ伝である。
この怪物の屍体はその後、洛中洛外を引き回された後、空の舟に入れられて淀川に流されるが、世阿弥の謡曲『鵺』によれば(ここではすでに怪物自体の名が「鵺」とされている)、この舟は摂津の国芦屋の里に流れ着いた。ある旅の僧がその川の畔の堂に泊ったところ、川のほうから怪しい声が聞え、髪を振り乱した舟人が現れた。僧が問い質すと、この舟人はなんと、自分は源頼政に退治された鵺の亡霊であると名乗った。そこで僧が一心に経を読むと、鵺は「涅槃に引かれて真如の月の、夜潮に浮かびて是まで参りました。あら有難や」と懺悔し、暗い海の底へ帰っていったという。
地元の伝承によれば、鵺の屍体が漂着した場所は現在の大阪市都島区で、当時は「澤上江」と呼ばれる湿地帯であった。鵺の祟りを恐れた村人は、これを懇ろに弔った上、祠を建てて「鵺塚」として祀ったという。
この伝承に基づき、現在、大阪港の紋章デザインで、紋章を左右で支えている「サポーター」はこの鵺である。ただし、「躯は狸」では格好が付かないためか、この紋章では鵺の胴体は「獅子」ということになっている。
https://www.city.osaka.lg.jp/port/page/0000016593.html#1syou
2020年2月1日の記事を再編集
松田アフラ
オカルト、魔術、神秘思想などに詳しいライター。
ランキング
RANKING
関連記事
巨樹・怪樹・妖樹にまつわる謎と伝説!全国「御神木」9選/本田不二雄
この国にはたくさんの〝ヌシ〟がいる──。 全国の巨樹を訪ね、拝していく旅で出会ったのは、偉大にして恐ろしく、想像を超えた「ちから」に満ち、存在の奇跡を思わせる驚異の御神木群だった。
記事を読む
イースター島のモアイ像はいかに造られたか? 海洋探検家たちが発見した失われた巨石文明/羽仁礼・ムーペディア
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、南太平洋に浮かぶ小さな島を世界に知らしめた謎の巨石像を取りあげる。
記事を読む
マンデラ効果か!? 幻のドラマ「キャンドル・コーヴ」の記憶/宇佐和通
多くの人に語られつつも存在が確認されない、幻のテレビドラマがある。マンデラ効果(マンデラエフェクト)に飲み込まれた作品なのか、それとも…?
記事を読む
天空からしか確認できない巨大すぎる図形・ナスカの地上絵/ムーペディア
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。今回は、近年の発見も記憶に新しい、広大なナスカの大地に描かれた巨大な地上絵を取り上げる。
記事を読む
おすすめ記事