ブリューゲルの名画に恐竜が描かれていた!! 16世紀の美術オーパーツ/権藤正勝
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カンボジアといえば、9世紀から13世紀初頭にかけて造られたクメール王朝の遺跡、いわゆるアンコール遺跡群がよく知られている。有名なところではアンコール・ワットやアンコール・トムなどが挙げられるが、今回紹介するのは同遺跡群の東部に位置するタ・プロームだ。
かつては8万もの人が住んでいたといわれるタ・プロームは、1186年に創建された仏教僧院跡だ。廃墟となって久しいこの遺跡は現在、ガジュマルの木によってほとんどの建造物が浸食されている。通常であれば樹木を除去し、石の積みなおしを行うというのが遺跡保存の王道なのだろうが、ここは今日に至るまで手つかずのままだ。というのも遺跡保存にあたって、あまりにも樹木の遺跡への食い込みが深いため、もはや破壊の段階を越えて、むしろ保護する役割を果たしているのではないか、という議論があるためである。
なお、同遺跡はのちにヒンドゥー寺院に改造されたため、現在では多くの仏教的装飾は削り取られてしまっている。
ところが残された装飾のなかに、奇妙なレリーフが発見されたのだ。
掲載した写真をご覧いただきたい。どう見ても恐竜、それもステゴサウルスの姿そのものではないだろうか。
このレリーフが広く知られるようになったのは、1997年にあるガイドブックで紹介されたことによる。著者が「ステゴサウルスの非常に説得力のある表現」と書いたことで、大きな話題となったのだ。
だが、本当にステゴサウルスだとしたら、製作者はどうしてその存在と姿を知ったのか。この遺跡が造られたのは12世紀。恐竜の復元状態が知られるはるか前のことだから、まさに謎としかいいようがない。
なお、現地へはカンボジアのシェムリアップから、タクシーで30分ほどで行くことができる。
ちなみにタ・プロームは、2001年の映画『トゥームレイダー』にも登場している。そのため「トゥームレイダー寺院」とも呼ばれているという。
(月刊ムー 2024年9月号掲載)
中村友紀
「ムー」制作に35年以上かかわるベテラン編集記者。「地球の歩き方ムー」にもムー側のメインライターとして参加。
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