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画家ピーテル・ブリューゲルの名画「サウロの自害」に、人間と共存している恐竜の姿が描かれていた。昔話を伝え聞いたのか、それとも「見て」描いたのか。謎の絵画に世界が注目している。
16世紀のブラバント公国(現オランダ)の画家ピーテル・ブリューゲル。あのバベルの塔を描いたことで知られているが、人物像に関する資料が少なく、生年月日や出生地などがはっきりとしない謎の画家である。
彼が描いた絵画のひとつに「サウルの自害」と呼ばれる作品がある。聖書を題材にし、イスラエル人とペリシテ人の戦いの様子を描いたものだが、その絵の中にとんでもないものが描かれていると話題になっている。
絵画の遠景部分、緩やかな丘を登る人々の行列の左上に、3頭の恐竜が描かれているのだ。そして恐竜には人が乗っている。その極端に長い首は、間違いなく竜脚類である。しかも首の角度から考えて、竜脚類でもブラキオサウルス、もしくは近い種だと考えられる。
普通なら「画家が遊び心で描き入れた」と考えるのが妥当だろう。しかし、最初に恐竜の化石が確認されたのは、一般的に1820年にイギリスの医師マルテルが発見したイグアノドンの歯だといわれており、世間的に恐竜の存在が流布したのは、1824年に発見されたメガロサウルスの歯がきっかけである。つまり18世紀ごろのことで、ブリューゲルが恐竜の存在を知っているはずがないのだ。しかも、解剖学的に見ても竜脚類そのものの姿をだれが想像で描けようか。
では、なぜイスラエル、つまりカナンの地の戦いを描いた絵画の中に恐竜を描き込んだのか? そもそもなぜ竜脚類の存在を知っていたのか? ヒントはブリューゲルの他作品にある。
彼の作品は「サウルの自害」をはじめ、聖書を題材にした絵画が多い。それは、おそらく結婚後にベルギーに拠点を移す前に訪れたイタリア旅行が少なからず影響しているのではないか。彼はイタリアの地で聖書の舞台となった古代オリエントの歴史を伝え聞いたのだろう。
実は、古代オリエントには恐竜の存在をほのめかす遺物がある。古代エジプトを初めて統一したナルメル王の「パレット」だ。画像をご覧のとおり、首輪に繋がれた2匹の竜脚類と見られる生物が装飾されている。この生物は「サーポパード」と呼ばれ、アフリカ大陸に棲息し、現在でも目撃報告がある未確認生物のひとつである。
さらに、カナンから東に位置する古代バビロニアのイシュタル門にも、ムシュフシュ(古代シュメール語で恐ろしい蛇の意)という首の長い動物のレリーフが残されている。イシュタル門のムシュフシュは恐竜の印象が薄いが、ルーブル美術館が所蔵する古い円筒印象に描かれたムシュフシュは、首の長い竜脚類そっくりの姿として表されている。
さらにいえば、エジプトから、サハラ砂漠を挟んで南側の中央アフリカの密林地帯では、恐竜の姿に酷似したUMA「モケーレ・ムベンベ」の伝説がある。モケーレ・ムベンベの目撃が集中しているのは、コンゴ共和国北部のリクアラ地区テレ湖周辺。モケーレ・ムベンベは、首の長い竜脚類の生き残りだと考えられている。
実は、ピラミッドが作られはじめたころまで、サハラ砂漠は比較的湿潤な気候だった。この事実を鑑みれば、恐竜は有史以前からその一帯に生息していた可能性はある。
「サウルの自害」から読み取れば、ブラキオサウルスのような竜脚類は、時の経過とともに進行したサハラの砂漠化により生息域を奪われ、わずかに生き残った一部が古代のエジプトからオリエント周辺で家畜化され、人間と共存していたのかもしれない。
そして現代でもモケーレ・ムベンベの目撃報告があるように、アフリカ大陸の奥地に人知れず棲息していた恐竜をブリューゲルが実際に〝見ていた〞とすれば、「サウルの自害」に描かれた竜脚類の姿にも納得がいくのだ。
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