墓で暮らす人々が集まったセブ島「キャレータ墓地」に潜入! フィリピン社会の悲しい現実を物語る衝撃の内部/小嶋独観
珍スポを追い求めて25年、日本と世界を渡り歩いた男がフィリピン・セブ島の「キャレータ墓地」で目撃! 現代フィリピン社会を象徴する光景とは?
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この道25年の古参マニアによる全国屈指の“珍スポット”紹介! 今回は山梨県に点在する首地蔵をレポート! 悲しい言い伝えと新事実も発覚!
山梨市北部の水口という集落にある、首地蔵と呼ばれる実に奇妙な仏像を訪ねた。
それは一目見たら忘れられない非常に特異な姿をしている。
巨大な自然石の上に頭がチョコンと乗っているだけ。もはや「仏像」と称してよいのかどうかすら怪しい存在だ。
見ようによってはさらし首のようですらある。
しかもこの巨石、明らかに道から飛び出している。道路の路側帯のラインのカーブからもその出っ張り具合がうかがえよう。
通過する自動車もチョット迷惑そう。
この巨石が首地蔵になったのには言い伝えがある。その昔、赤ん坊を背負った少女が、大雨による土砂崩れで転落してきた巨岩の下敷きになり亡くなってしまった。その後、村では赤ん坊の夜泣きが増え、岩からもすすり泣く声が聞こえてきたという。そこに旅の僧侶が訪れ、少女の供養のために地蔵の頭をつくり、岩の上に乗せて供養をしたのが始まりだという、
また、近年も道路拡張の際にこの首地蔵を削ろうとしたり移転しようとしたところ、担当者が病気になったり事故になったりと大変な事があったらしい。
なんとも不思議な謂れのある首地蔵だが、今でも地元の人々の信仰は篤いようで、胴体の巨石には春彼岸と書かれた紙が数枚奉納されていた。
また、首地蔵の前には岩の下敷きになったという少女の供養なのだろうか、けん玉と履物が奉納されていた。
実は、このような首地蔵は山梨県の甲府盆地北部周辺に6体確認されている。本稿では残りの5体も全て紹介していきつつ、首地蔵の全容に迫ろうと思う。
次に紹介するのは、笛吹市の保雲寺の首地蔵。本堂の脇にある。
これも胴体の部分は自然石だ。しかし、自然石とはいえどことなく身体っぽい形状をしているようにも見える。もしかしたら、たまたま身体っぽい自然石があったので頭をつけて首地蔵にしたのかもしれない。
次は甲府市東光寺。甲府善光寺を見下ろす小高い丘の中腹にある石地蔵。
坂道の路傍に巨石があり、その上に頭が乗っている。
高さは8.7メートル。今回紹介する首地蔵の中でも最も大きなサイズだ。見上げると、その大きさに圧倒される。建立(つまり頭が乗せられた時期)は宝永4(1707)年。
形状的にやや不安定な部分に頭が乗っていて転がり落ちないか心配したが、裏に回ってみるとちゃんと補強してあったので安心した。
次は、瑞泉寺の境内にあるこの仏頭。
本堂新築の際、土中から掘り起こされたという。傍らに「ひきとり地蔵」という看板があった。胴体の自然石がないので厳密には首地蔵の定義からは外れるが、恐らくどこかの自然石の上に乗っていたのだろう。
甲府市の塩澤寺。本堂裏手の墓地に首地蔵がある。
かなり個性的な顔立ちである。
巨大な鼻、たるんたるんの目。今回紹介した首地蔵の中でもとびぬけて強烈なインパクトを放っていた。
しかも台座の自然石が傾いているので、頭部もうつむき気味でこれもまた独特の雰囲気が漂っていてよろしい。
地元では「たんきりまっちゃん」と呼ばれていて、咳や痰の病に御利益があるそうだ。お地蔵さんなのに「ちゃん」付けって……。
墓地の一画にはもうひとつ巨岩があり、その上部にもほぞ穴が開けられていた。
もしかしたら、この巨岩も首地蔵だったのかもしれない。
最後に青松院。
本堂前にちょこんと鎮座していた。
この地蔵は「合羽地蔵」と言われている。胴体の部分が裾広がりの形状だからか。
以上、全6体の首地蔵を紹介した。
で、首地蔵とはなんなのか? 最初に紹介した水口の首地蔵のエピソードを思い出していただきたい。少女を飲み込んだ巨石はその後も祟りや怨念めいた話が付きまとっている。つまり、胴体の巨石の部分は首地蔵となる前から特別な存在だったのだ。そこに仏頭を乗せることで巨石の祟りを鎮める、という図式になっている。ここからはいつもながら筆者の勝手な妄想なのだが、アミニズム的な信仰対象としての巨石に、仏教的な仏頭を乗せることで古来の土着的信仰を仏教が調伏した、ということを表現したのではなかろうか(もちろん私の妄想です)。
これらの首地蔵をご覧いただいた読者諸氏の中には、長野県諏訪市にある「万治の石仏」を思い浮かべた方も多い事であろう。
この万治の石仏も自然石の上に頭を乗せたスタイルだし、なんとなくその表情も首地蔵に似ているように思える。
しかしこの両者は地蔵菩薩と阿弥陀仏と尊格が違うし、万治の石仏は胴体部分にも線刻されており厳密には首地蔵とは異なる。しかも、首地蔵が集中している甲府盆地北部からは数十キロ離れていることから直接の関係はないのではないか、というのが従来の見解であった。
ところが2017年、首地蔵界を揺るがすニュースが飛び込んできた。万治の石仏から北東に数キロ離れた場所で、万治の石仏にそっくりな石仏が発見されたというのだ。それは人があまり立ち入らないような渓谷で、たまたま地元の方が見つけたというのだが、それが万治の石仏というよりはモロに首地蔵の形状なのだ。これまで関係性が薄いとされてきた首地蔵と万治の石仏の関係性がこの新発見により一気に接近する可能性もある。今後の調査、研究よっては「首地蔵、万治の石仏ブラザー説」も飛び出してくるかもしれない。世間的にはどうでもいい事かもしれないが、個人的には勝手に期待をパンパンに膨らませている今日この頃なのである。
小嶋独観
ウェブサイト「珍寺大道場」道場主。神社仏閣ライター。日本やアジアのユニークな社寺、不思議な信仰、巨大な仏像等々を求めて精力的な取材を続けている。著書に『ヘンな神社&仏閣巡礼』(宝島社)、『珍寺大道場』(イーストプレス)、共著に『お寺に行こう!』(扶桑社)、『考える「珍スポット」知的ワンダーランドを巡る旅』(文芸社)。
珍寺大道場 http://chindera.com/
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