「ファラオの呪い」の正体を最新科学で考察! 古代エジプト人によって放射線の罠が仕掛けられていた説

文=仲田しんじ

    かつてエジプトでツタンカーメン王の墓の開封に携わった20人以上が、後に不可解な体調悪化でさまざまな病状を発症して死亡した。「ファラオの呪い」として恐れられていたこの出来事が最新研究によって科学的に解明したという。それは意図的に仕組まれた放射線被ばくであったというのだ――。

    一連の死は放射線被ばくに起因

     永遠の眠りに就いたミイラの安息を妨げた者は呪われてしまうのか――。

     1922年にエジプトの「王家の谷」でツタンカーメンの墓が発見され、ただちに調査チームが墓の内部への侵入と発掘に着手した。

    天井の解体作業 画像は「Wikipedia」より

     考古学者のハワード・カーター、イギリス貴族のカーナボン伯爵をはじめとする調査チームが発掘作業に取り組んだが、その後に両者を筆頭に調査に携わった20人が相次いで体調を崩し、がん、敗血症、脳卒中、窒息、心不全、糖尿病、肺炎、マラリアなどで次々と死亡したのだ。カーナボン伯爵にいたっては、発掘作業の6週間後に敗血症と肺炎の合併症で亡くなっている。

     やがて一連の不幸は「ファラオの呪い」と呼ばれるようになり、超常現象ミステリーとして人々に恐れらるようになった。

     しかし今年4月に学術誌「Journal of Scientific Exploration」で発表された研究で、著者のロス・フェローズ氏はツタンカーメンの墓に3000年以上にわたって封印されたウランや有毒廃棄物から放出される有毒レベルの放射線が、人々の死の原因となったと報告している。

     発掘当時のツタンカーメンの墓内の放射線レベルはきわめて高かったため、接触した人は致死量の放射線障害やがんを発症する可能性が高く、関係者の一連の死は決して呪いなどではなく、放射線被ばくに起因するものであったというのだ。

    画像は「Journal of Scientific Exploration」より引用

     フェローズ氏によれば、ギザのピラミッドに隣接する2か所でガイガーカウンターによって放射線が検出され、放射性ガスであるラドンもサッカラ遺跡のいくつかの地下墓で検出されたという。

    「現代の研究では、古代エジプトの墓には、許容できる安全基準の10倍という非常に高いレベルの放射線が存在していることが確認されている」(研究論文より)

     同氏は墓の内部に配置されていた「2つの石造りの保管箱が発する強い放射能が関係している」と指摘している。

     墓は石灰岩で作られており、その岩盤からも微量のラドンが放出されているのだが、この保管箱は玄武岩でできており、局所的に強い放射線が放出されているのだ。「ファラオの呪い」は局所的な高レベル放射線であったことになる。

    ミイラの棺を検分する考古学者のハワード・カーター 画像は「Wikipedia」より

    「墓を破った者は医師も診断できない病気で死に至る」

     今回の研究によれば、発掘に携わった人々の一連の死は呪いではなく放射線だったということになるが、それにしても古代エジプトの人々はこの放射線の作用を知っていたのだろうか。

     壁に刻まれた碑文の不気味な“警告文”の存在を考慮すると、古代の墓を建設した人々がこうした放射線の毒性を知っていた可能性があるようだ。

    「呪いの性質はいくつかの墓にはっきりと刻まれており、ある墓は『この墓を破った者は医師も診断できない病気で死に至るだろう』と予見的に翻訳されていた」とフェローズ氏は書いている。

     墓を作った古代エジプトの人々は、この墓は“立入禁止”であり、禁を破った者に災いをもたらすために意図的に墓の内部の放射線レベルを高めていた可能性もある、というのだ。したがって、ある意味では放射線という“呪い”がかけられていたことにもなる。

    墓への入り口 画像は「Wikipedia」より

     サッカラ遺跡内の複数の墓(南の墓、ジョセル王のピラミッド、セラペウムの墓のトンネル)でも高レベルのラドン濃度が測定されている。

     また、1960年代にジョセル王のピラミッドの下で発掘された数千個の壺には、まだ特定されていない最大200トンもの未確認物質が含まれており、毒素がミイラ化した遺体と一緒に埋められていたことが示唆されている。

     やはり人の手が及ばないようにするため、放射線と有毒物質という“呪い”が遺体と共に封印されていたのだろうか。

    「遺跡で報告されている(ラドンなどの)強い放射線は、大まかには元の岩盤からの自然放射に起因していると考えられています。しかし、放射レベルは異常に高く局所的で、これは石灰岩の岩盤の特徴と一致せず、他の不自然な発生源を示唆しています」(フェローズ氏)

     墓を開封した者には放射線という災いが訪れたとことになるが、しかしながら文字通り命を懸けてツタンカーメンの墓の封印を解いて研究したことが、近代エジプト学の前進に大きな前進を果たしたことは間違いない。

    【参考】
    https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-13355233/Scientist-cracks-cause-Pharaohs-curse-killed-20-people-opened-King-Tutankhamuns-tomb-1922.html

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

    関連記事

    おすすめ記事