月面に超巨大都市やピラミッドがある! 謎の構造物を建造したのは異星文明か?/並木伸一郎・月の都市伝説
月で確認されている代表的な構造物らしきものの数々を解説していこう。
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「ピラミッドパワー」をご存じだろうか。ピラミッドの中にしおれた花を入れると復活し、切れないカミソリは切れるようになり、牛乳はいつまでも腐らない――。そんな謎のパワーをピラミッドパワーと呼ぶが、なんとピラミッドは本当に電磁波を集中させる構造を持っているらしい。ピラミッドパワーを科学の視点で考えてみよう。
1930年、エジプトにあるクフ王のピラミッドの中で小動物の死骸を見つけたアントワーヌ・ボビー氏は、それがまるでミイラのようにカラカラに乾いていることを不審に思った。
帰国後、ボール紙で90センチ角のピラミッドの模型を作り、中に肉や卵を置いておくと乾燥が進んだという。これはピラミッドパワーが発見された一番最初の例と言われている。
並木信一郎氏の著書『不思議発掘! 縄文超文明と日本のピラミッド』によると、ピラミッドパワーを有名にしたのは旧チェコスロバキアの電気技師カレル・ドレバルが行った実験だという。古くなり切れなくなった剃刀の刃を、ボール紙で作ったピラミッドの模型の中に入れておいたら、切れ味が戻ったというのだ。ドレバルは特許「ピラミッド型カミソリ再生装置」まで取っている。よほどカミソリの再生に自信があったのだろう。
これ以外にも、ピラミッドパワーは生モノの腐敗を遅らせる、タバコの味を変えるなどの効果があると言われる。
日本では、ヘミシンク(幽体離脱が可能になるという特殊な音楽)の普及活動を行っている坂本政道氏らが、ピラミッドパワーの研究をNPOである国際総合研究機構(IRI)で行っている。IRIによれば、ピラミッド型構造物には6キロメートル以上離れた人たちの意識が影響するという。しかも、その中で瞑想をすると意識がエネルギーとなるそうだ。
働きが何であれ、ピラミッドパワーの正体は電磁力だろう。宇宙には4つの力、強い力、弱い力、電磁力、重力しかなく、これ以外の力は見つかっていない(ダークエネルギーは重力ではないかと言われている)。強い力と弱い力は原子レベルの話なので関係なく、重力は弱すぎて影響がない。だから残るは電磁力なのだ。
電磁波や通電による殺菌効果は広く知られており、電子レンジを使った殺菌はよく行われている。大腸菌程度であれば、完全に破壊できる。筆者も魚に通電して熟成させることが可能か実験したが、塩水中で12ボルトを通電したところ、常温でも1週間は腐ることがなかった(内臓は抜いてある)。比較した通電しない魚は2日目で臭いはじめた。
食べ物を乾燥させたり、長持ちさせるというピラミッドパワーは、電磁波だとすれば説明がつく。電磁波によって殺菌されているのだ。殺菌されるので、ピラミッド内の死骸は腐敗せず、そのまま乾燥したのだろう。殺菌状態なら食べ物は長持ちする。剃刀の刃も、単に表面に細菌が付いてコロニーをつくって切れ味を悪くしているだけなら、細菌が分解されれば、切れ味は戻るだろう。植物が元気になるのも、根などの細菌がいなくなり、免疫が戻ったためと考えられる。
また、電磁波の中でも周波数の高い高周波を浴びることで、植物の成長が向上することわかっている。上智大学マイク口波サイ工ンス研究センター センタ一長の堀越智准教授による「マイク口波刺激による植物の有効育成」など、多数の論文が発表されている。
高周波は空気に電気を帯びさせ、オゾンに変える。オゾンは毒性が高いが、少量なら高い殺菌効果があり、健康被害もない。オゾン発生装置により、養鶏場の殺菌を行ったところ、病気のニワトリがいなくなり、年間80万円かかっていた抗生物質がすべて不要になった例もある。
ボール紙でできたピラミッド模型で効果があるということは、ピラミッドの形状自体がアンテナのような役割をして、電波を集める働きがあると考えられる。そうであれば、ピラミッドパワーは神秘でもなんでもなく、新しい形のアンテナということになる。
ロシアITMO大学の研究チームは、クフ王のピラミッドが外部の電磁波(約1.5GHz~500KHz)と相互作用することを発見した(「Electromagnetic properties of the Great Pyramid: First multipole resonances and energy concentration」Article in Journal of Applied Physics・July 2018)。
研究チームは、高さ138.75メートル、底部の各辺230mメートルを持つピラミッドの実物大3Dモデルを使用し、内部構造も現時点でわかっている範囲で通路や各部屋を再現。また、全体に均一の伝導性と反射率の物質でできている(ピラミッドに使われている石灰質の岩石の代わりである)とし、ここにさまざまな波長の電磁波が入射した場合、どのような挙動になるのかをシミュレーションした。
すると、ピラミッドの形状は入射した電波を外部に逃がさず、増幅するデザインになっていることが判明した。クフ王のピラミッドは内部に女王の部屋と王の玄室があり、その部屋で磁場が増幅され、通路がマイクロウェーブの伝導路のように働いて、頂点に向けて電流を放出しているらしい。
ピラミッドはそれ自体が電波を増幅して電流に変換し、コンデンサのように蓄電してから放出するという、一種の発電システムとして機能していたのだ。またシミュレーションでは、複数のピラミッドが並ぶとピラミッド同士で共鳴が起こり、電磁場の集束を高めることもわかった。
ITMO大学では、太陽電池の配置にピラミッド型を使うことで、発電した電力を無駄なく集束して取り出すことができるのではないか?」と予想している。
問題は電磁波の飛び交う現代であれば、ピラミッドの発電システムも利用価値があるが、ピラミッドが作られた当時のエジプトに電気はなかった。あったとしてもせいぜい金属メッキに使う程度で、ピラミッドを使って発電しても、どのような利用法があったというのか。
かつてのエジプトは今の姿とは違い、ナイル川の豊富な水量を使った大穀倉地帯が広がっていたという。もしかしたらピラミッドは、穀物を病害から守り、人々の健康を守る巨大な神具、神によって衛生を守る奇跡の装置だったのかもしれない。ピラミッドから放出される電気が空気を常にイオン化し、発生する微量のオゾンが大気を殺菌し、国民と穀物の健康を守ったのではないか。
電気のシステムがわからず、経験上、ピラミッド型が体にいいのだと知っているだけだとしたら、より大きなピラミッドを作り、より大きな範囲を守ろうとしたのは当然ではないか。
ピラミッドには工学的な利用価値がある。こんなに単純なデザインで電波を増幅できるなら、応用範囲は広い。古代人の経験則を私たちも利用させていただこう。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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