たった一夜で全住民が姿を消し、誰も住めなくなった呪いの現場! インドに伝わる恐怖の村伝説を追う
一夜にして村民全員が姿を消した村があるという。村からの“夜逃げ”の直前、人々はこの村には二度と人が住めないように呪いをかけたというのだ――。
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映画「紅い服の少女」のモデルとなった事件は、妖怪のしわざだったーー! 台湾で広く知られる「小さな赤い姿」の妖怪を追う。
台湾である怪奇映画が公開され、全土で大きな反響を呼んだ。その作品は「紅い服の少女」として、日本でも2022年9月30日に公開が決定している。
映画の原題は「紅衣小女孩」。17年前に実際に起こった不可思議な事件を元に制作されている。
その事件とは、1998年の3月ごろに起きた。台中郊外の山中に、ある家族が登山に出かけたときに撮ったビデオに、赤い民族服を着た見知らぬ少女が写っていた。程なくして家族の一人が突然亡くなるなど、さまざまな不幸が次々と家族を襲うようになった……というものだ。
事件を踏まえて、くだんの映像を見ると、この赤い服の少女は、身長が140センチほど。だが、老婆のような顔をしており、肌の色が青みがかった灰色で、眼球全体が紺の単色に覆われているなど、この世のものとは思えない無気味な姿をしている。
数々の特質から、この赤い服の少女は台湾に古くから伝わる妖怪・魔神仔(モシナ)ではないか? と現地で解釈されている。一家を襲った不幸も、台湾全土で多発する魔神仔事件の一種だというのだ。
日本にはなじみがないが、台湾で毎年のように事件を起こしている妖怪・魔神仔とは一体いかなる存在なのであろうか?
台湾では毎年、春先から夏の終わりにかけて、山中で老人や子供が失踪する謎の事件が多発している。事件に巻き込まれた失踪者は、決まってある言葉を口にする。
「無気味な”小矮人”に連れ去られて、気づいたら何日も山中をさまよっていた…」というものだ。
台湾では、このように人を山深くへと連れ去る小人を、魔神仔と呼んでいる。
この魔神仔という言葉は、小さい魔神という意味で、毛神仔や墓神仔、芒神とも表記され、「モシナ(モシナァ)」と発音する。
台湾でモシナはだれもが知っている存在で、人を驚かすと、決まって「你是魔神仔嗎?(お前はモシナか?)」という言葉が返ってくるほどである。
魔神仔事件は毎年必ず数件は起こり、新聞やテレビなどの報道メディアで取り上げられることも多い。その存在だけでなく、魔神仔がどのような性質を持っているかということも、多くの台湾人が熟知している。日本でいうところの神隠しを行う天狗や山姥、狐などの妖怪を思わせる扱いだ。
ただし、日本の説話に埋もれた妖怪と異なり、魔神仔は現在でも人間相手に実際の誘拐事件を引き起こし、その存在が信じられている。それだけでなく、恐怖の対象として台湾全土で畏れられている。
魔神仔事件の特徴は、老人や子供が小さい姿の何かに導かれて行方不明になり、当人の尋常の体力ではいとうてい移動できない遠く離れた場所で発見されることにある。まさに神隠しだ。
一例を挙げると、2014年6月に花蓮県で80歳の女性が突如失踪し、5日後に3キロ離れた地点で発見される事件が起きた。この女性は脚に麻痺があり、満足に歩けないはずであった。しかし、警察の監視モニターには、その女性の脚が突如動き出し、山間部に向かって素早く走り出す奇怪な映像が残されている。
また、魔神仔事件では、失踪した人が山中をさまよううちに親切な人たちと出会ってご馳走をされるが、朝起きると口の中にはバッタや牛糞などが詰め込まれているという事例も非常に多い。このような体験をして生還した人によると、バッタは鶏の腿肉、牛糞はご飯と思って美味しく食べていたそうだ。
近年でも各地で魔神仔が老人を連れ去る事件が数件発生し、2013年には台湾に観光に来た78歳の日本人の老人も被害に遭っている。この老人は、台北近郊の山間部にある観光地・金瓜石黄金博物館の近くで7月2日に失踪し、4日後に15キロ離れた場所で発見された。事情聴取によると、彼が失踪していた4日間の記憶はまったくなく、発見されたときはなぜ自分がこの場所にいるかも解らない状態であったという。
老人や子供を茫然自失の状態に陥らせ、山中へと連れ去る魔神仔。その実像は、古くからさまざまな文献に記録されている。
秦代に編纂された「山海経」や東晋の道士・葛洪が著した「抱朴子」には、現在の魔神仔の特徴に類似する山の妖怪がいくつか記されている。
その中で、魔神仔に近いとされているのが、台湾人の9割近くを占める本省人の故郷である福健省に存在した「山都木客」という謎の生物だ。
山都木客は、深い山中の樹や洞穴に居住する半獣半人の生物で、姿を自在に変化させることができるが、普段は人間の子供のような姿形をしており、長い毛に覆われた皮膚の色は黒色で、赤い目をしているという。
近年、この特徴を持つ謎の生物が、苗栗県南庄にある鵝公髻山で目撃された報道記録が残っている。
1985年1月26日付の『中国時報』によると、鵝公髻山に現れた奇怪な生物は、全身黒い毛に覆われているが頭髪だけが長く、13歳くらいの子供の身長で、直立歩行で歩いていたという。
その生物は、この地に住む台湾原住民・サイシャット族の銭さんが飼育する鶏を2羽奪い、木に登って生きたまま食べていたそうだ。
苗栗に住むサイシャット族の間では、古くから災いをもたらす黒矮人(黒い小人)の伝説が伝えられており、黒矮人を鎮める「パスタアイ(矮霊祭)」という祭りを2年に一度開催している。
また、台湾原住民の間には、この矮人伝説を持つ民族が多く、魔神仔との関係性が識者によって指摘されている。
この黒い小人の伝説は、東南アジアからニューギニアの島嶼部で近年まで原始生活を送っていた体の小さな少数民族・ネグリト(大洋州ピグミー)が、台湾に居住していたときの名残であるとも考えられている。
もしかしたら、たびたび目撃される謎の黒矮人とは、この地で滅びた筈のネグリトが僅かながらに生き残り、深い山中で生活を続けている証なのであろうか?
台湾の原住民が居住する山深い地域は、現在でも入山許可がないと立ち入れない閉ざされた場所であり、多くのことが謎に包まれたままになっている。
魔神仔に山中で遭遇したり誘拐事件に巻き込まれたりする人の多くは、魔神仔の特徴として「姿が赤い」と語る。この赤いというのは、髪の色であったり、目や身体、帽子、服の色であったりとさまざまだが、いずれも赤という点で共通している。
冒頭で述べた謎の少女も、小さい身体に赤い服を着ているという特徴から、魔神仔として認識されたのだ。
特に「赤い目」は、台湾北部の魔神仔の特徴で、現在でも赤い目の魔神仔が北部で多数目撃されている。台湾で有名な風水師・林正義が北部の宜蘭の山中で遭遇した魔神仔は、小さい猿のようで、青蛙のような皮膚を持ち、赤い目をしていたという。
また、「赤い服」を着た少女の姿をした魔神仔の目撃例も多く、2014年6月と7月に花蓮市と台東県で数日間、山中に失踪した老人は、いずれも赤い服を着た少女に誘拐されたと証言した。
南部の屏東県では、台風の後に山へキノコを採りに出かけた83歳の老婦人が5日間行方不明になり、救出されたときに、「赤い髪と大きな目」をした背の高い女性と遭遇して衣服と食べ物奪われたと語った。
この赤い髪の女性魔神仔は、この地の陰廟に祀られるオランダ人女性の八寶公主と特徴が一致するところから、事件の後に廟で鎮魂の儀式が行われた。
以上の例が示すように、魔神仔の外見的な特徴には、必ず赤い色が含まれている。そして、赤い特徴を備えた実体を持ちながら、突然消えたり、別の姿に自在に変化したりすることもできるといわれている。
ホラー映画「紅い服の少女」を辿ると、台湾で広く知られる妖怪「魔神仔」とのつながりも見えてきた。
続く後編では、ムーならではの「魔神仔」の正体について考察していく。
(ムー 2015年12月号記事を微修正して再録)
楊閃岳
台湾をはじめアジア事情に通じるライター。
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