ポジティブになれる怪奇浄化体験・三連発!/松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎の怪談行脚

文=松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎

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    伝説のコラムを再録公開! 3人の異色ユニットが、行く先々での怪奇体験を披露する。今回は「ポジティブ」なお話を持ち寄った。みなさん一緒に「ポジティブポジティブ!」 (2020年4月24日記事)

    ポジティブポジティブ

    タニシ 事故物件住みます芸人・松原タニシです。
    田中 神戸の実家は俺が守る! オカルトコレクター・田中俊行です。
    健太郎 四国の怪談は俺が守る! 恐怖新聞健太郎です。
    田中 決まりましたね。
    健太郎 ありがとうございます、まだ自信はないですけど。
    タニシ 先月から田中さんと健太郎さんはそれぞれ守るものができましたからね。
    田中 守るものがある人間は強いっていうことに気づいたから僕たち。
    タニシ 田中さんは最近やたら前向きですよね。
    田中 今世界が大変なことになってるけど、こんな時やからこそ「ポジティブ、ポジティブ〜」で行かな。

    今やおなじみ、田中の「ポジティブ」

    健太郎 何ですか? ポジティブ、ポジティブって。
    田中 あ、これは姉貴の友達がある女の人に洗脳されてて、俺と姉貴でその洗脳を解こうと思ってファミレスに呼び出してんけど、そしたらその友達が過呼吸になりだして、それを見た姉貴が「ポジティブ、ポジティブ〜、ほら、ポジティブ、ポジティブ〜」って言い出して。
    健太郎 そんなので過呼吸止まるんですか?
    田中 そしたらその友達も「ポ…ジ…ティブ…ポ…ジ…ティブ……」って言い出して。姉貴も「そう、もっと、ポジティブ、ポジティブ〜、ポジティブ、ポジティブ〜」って詰め寄って、友達も「ポ…ジティブ…ポジティブ……ポジティブ、ポジティブ……」って。結果ファミレスの店内に「ポジティブポジティブ」が響き渡ってたわ。
    健太郎 めっちゃやばいですやん。
    田中 だから健太郎さんももっとポジティブでいかなあかんと思う。ほら、ポジティブ、ポジティブ〜
    健太郎 ポ、ポジ…ティブ……
    田中 もっと、ほら、ポジティブ、ポジティブ〜
    健太郎 ポジティブ、ポジティブ……

    田中・タニシ・健太郎の3人で「ポジティブ」。流行らせましょう!

    大山に守られているから

    タニシ じゃあ今回はポジティブな怪談、前向きになれる怪談でいきましょうか。稲川淳二さんも言ってましたからね。「人を不幸にするマイナスのエネルギーがあるんだったら、人を幸せにするプラスのエネルギーもあるはずだって。ワタシはね、怪談話をしながら、そのプラスのエネルギーを探したいんですよ」って。
    田中 めちゃくちゃええ言葉よなぁそれ。
    タニシ まず僕からいきますね。鳥取県に住む女性の斉藤さんは、20年前に岡山のライブハウスであるミュージシャンから心霊写真の本をもらったんですが、その本を持ってからいろんなことが起こるんです。実家が火事になったり、通勤電車で何回も倒れたり、仲の良かった友達に突然公園に呼び出されてボコボコに殴られたり。それで友達の紹介で奈良県のあるお寺に行って住職に診てもらったら「家に悪い本があるはずだから持ってきなさい」と言われる。改めて心霊写真の本を持って奈良のお寺に行って供養してもらったら、だんだん体調も運気も良くなって、今の旦那さんと出会って結婚するんです。
    田中 嫌やなぁその心霊写真の本。あ、その旦那さんってタニシくんの知り合いの人か。
    タニシ そうそう、ラーメン屋のバイトで一緒に働いてた人です。で、この旦那さんと斉藤さんの出会いってのが「僕は大山(だいせん)に守られてるから」って台詞らしくて。
    田中 大山って、鳥取県の?
    タニシ そう、鳥取県の大山です。旦那さん、子供の頃に大山の渓流に家族で泳ぎに行ってたら流されてしまったらしいんですが、結構流れがきつかったので助けるにも大人でも間に合わず、お母さんは「もうだめだ」って思ってて。下流はダムみたいにせき止められてたから、あの壁にぶつかったらもう死ぬしかないという状況だったらしいんですが、まさかの排水口からすぽっとはき出されて無事生還。それ以降旦那さんの口癖は「僕は大山に守られているから」。
    健太郎 実際すごい奇跡ですよね。
    タニシ そんな未来の旦那さんと斉藤さんが付き合って半年くらいの時に一緒に大山に行って、御神木みたいな木の前で二人で写真を撮ったそうなんです。すると、斉藤さんの顔の鼻の部分だけ消えた心霊写真みたいなのが撮れてしまったんですね。もう心霊写真にはえらい目に遭ってる斉藤さんだから、また奈良のお寺に持っていこうとしたけど、友達には「これは大丈夫やと思うわ」って言われてそのままにしてたそうなんですが、それからすぐに鼻で息ができなくなって、病院に行ったら酷い副鼻腔炎だったことが判明して。それで手術することになって、なんとか無事治すことができたらしいです。
    田中 え、良かったやん。
    タニシ 斉藤さんは今まで旦那さんの大山の話は半信半疑だったそうなんですが、それ以降大山の神様が「キミ、鼻のことで大変なことが起こるから気をつけろよ」ってあらかじめ教えてくれてたんじゃないかって思うようになったそうです。

    斉藤さん自身による心霊写真の説明図。顔の鼻部分がダルマ落とし的に消えていたようだ。

    地獄の谷で人格錬成

    健太郎 心霊写真が実は警告っていうパターン、ありますもんね。じゃあ僕も場所にまつわる話をさせてもらいます。僕の住んでるところに八幡神社という神社がありまして、その境内の裏に“地獄の谷”といわれてた場所があったんですよ。今はもう入れないんですけど。
    田中 すごい名前。
    健太郎 みんなそこを登ってよく遊んでたんです。で、僕の同級生にTくんっていうめちゃくちゃ悪いいじめっ子がいたんですよ。例えば道にT君がションベンしてそこに手をついて歩かされたりとか、僕もよくいじめられてたんですけど。
    タニシ 悲しき少年時代。
    健太郎 ある日彼に連れられて地獄の谷を登って遊んでたんですけど、気がついたらT君が見当たらないんです。「どこいったんやろ?」って思って探してたら、少し道から外れた森の中にちょっと開けたところがあって、そこにT君がポツンと立ってたんです。「何してんの?」って声をかけたら、我に返ったみたいに「おう」とだけ返事してまた地獄の谷を登り始めたんですけど。その直後に「なんか色々ごめんな」っていきなり言われて「えっ何が?」って言ったんですけどT君はスタスタ歩いていくんですよ。そのあと地獄の谷から降りて普通にその日は帰ったんですが、翌日からT君、めちゃくちゃ良い子になって学級委員とかになっちゃうくらい善人になったっていう。
    田中 ええ!?
    健太郎 だからあの地獄の谷の森の中の開けた場所は何かしらそういうパワースポット的な場所だったのかなって今考えると思いますね。
    タニシ すごい、何なんやろその場所。行ってみたい!
    田中 ええ話やなー。

    恐怖新聞健太郎の少年時代。フェイスペイントはしても、白塗りはまだ未経験。

    こだま

    タニシ じゃあ最後は田中さん、お願いします。
    田中 数年前に九州の福岡の怪談会に行った時、終わった後での打ち上げの席で、ある霊能者の方がいたんです。打ち上げは6〜7人ぐらいいて話が盛り上がり、頼んでもいないのに何故か霊能者の方が一人ずつ前世をみてくれたんです。
    タニシ 面白そう。
    田中 その人の考えでは、輪廻転生で生まれ変わるのは人間だけではないっていう。
    健太郎 六道輪廻みたいなものですかね。天界道、地獄道、人間道、阿修羅道、畜生道、餓鬼道みたいな。
    田中 そうそう、そして人間は各自の「業」によってさまざまな姿になり無限に近い輪廻を繰り返すというんです。次は人間に生まれ変わるとは限らず。前世は犬かも猫かもしれない。現に打ち上げに参加された方の中にはバッタと言われた人もいました。大体は人間を繰り返すらしいんだけど、バッタの人はその前が人間だったけど何か善くないことをしたらしくて魂のレベルが下がったらしい。
    タニシ なんか危ない思想ですね。
    田中 確かに、で最後に僕の番が回ってきたんです。みんなより少し時間がかかった感じがしました。眉をひそめ首を傾げながら考え込んで「あ、こだまか」と言われたんです。一瞬訳が分からず、山や谷で音が反射して遅れて聞こえる現象である山彦かと思いました。
    健太郎 こだまって、ジブリの映画(もののけ姫)に出てきた、樹木に宿る精霊の木霊(こだま)ですか?
    田中 そうなんです! ぼくの前世は精霊らしく「あなたは魂1年生!」って言われたんです。「それはどういう感じなのですか?」と質問すると、何度も輪廻を特に人間を繰り返すことにより魂のレベルが上がり最終的に神(と言われる存在)の世界に行くことができるらしいのです。なのであなたはこの先大変長い道のりを辿ることになると言われたんです。そして魂1年生の特徴として教えてくれたのが、あなたは赤ちゃんのような存在で人に頼らないと生きていけない、そしてとても常識・世間知らずと言われたんです。

    健太郎 常識・世間知らずっていきなり俗っぽいですね。
    田中 ちなみにその霊能者の方はもうかなりの輪廻転生を繰り返しており、そろそろ上の世界に行く予定だと教えてくれました。僕は前世がバッタと言われた人より魂のレベルが低いらしく、そこからの飲み会は何故かとても肩身がせまい思いでした。その後も何かモヤモヤしたものが残りました。でもね、こう考えるようになったんです。仕事や何かでミスした時に「あー僕は前世が木霊(こだま)なんだ。魂1年目だから仕方ないんだ」とこう思うとミョーに自分で納得して木霊の事もミスした事もポジティブに捉えられるようになりました。もう前世というか今も半分は木霊(こだま)の気持ちで生きてますね。

    タニシ 大丈夫ですか。
    田中 大丈夫です。

    田中こだま俊行、生涯ポジティブ宣言。

    松原タニシ

    心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。

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