フリースタイル破戒僧・一休に学んだぜんざいと納豆のパワー/松原タニシ「超人化計画」一休さん編

取材=松原タニシ 構成=高野勝久

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    禅寺での断食体験の結果、俗世の欲望が消滅してしまった松原タニシ。おなじ禅宗のスーパースターの足跡を訪ねて、あの寺へ!

    前回はこちら

    日本一有名なあの禅僧の足跡を追う!

     松原タニシの超人化計画、今回は超人を目指しての断食体験チャレンジだ。

     結果、予定とはずいぶんちがった修行結果を迎えたのだが……。

     そして断食が終わって、いっちゃいました、こちら。

    「一休寺」の看板がわかるだろうか

     一休寺。断食修行の道場とおなじ臨済宗のお寺であり、かの有名な一休さんゆかりのお寺だ。

     ゆかりの地だけあって、飛び出し一休さん、大人の一休さん、あそこにもここにも一休さんがいる。

    一休さんゆかりの地、道路にも一休さんがたくさん。

     タニシは知らなかったのだが、一休寺を訪れた日はたまたま年に一度の「一休善哉(ぜんざい)の日」だった。年に一度、一月の一番最後の日曜日は一休さんのお寺で善哉を食べて、一休さんに今年一年の約束をしましょう、という日だ。

     これも知らなかったのだが、善哉というのは一休さんが命名したものなのだという。

     小豆を煮た料理そのものは昔からあったのだが、その小豆を煮た汁を一休さんが食べて「善哉(よきかな)この汁」といったから、善哉(ぜんざい)という名前がついた、という説があるのだそうだ。

     で、これが一休善哉の看板。お寺なのにバニーガールを描いてOKっていうのが一休さんのお寺ならではのところだ。バニーガールなのは卯年だからだが、一休さんって、大人になったらめちゃくちゃエッチになるのだ。

     あのアニメや昔話の印象が強いが、大人の一休さんはすごく官能的な表現をするようになるのである。イメージにないですね。

     これが一休善哉。断食明けの善哉は、うまい。うまかった。お腹に響いた。

     注目して欲しいのは、善哉の右下にあるこの黒いもの。これは一休さんが編み出したといわれる納豆なのだ。「寺納豆」と呼ばれている。

     一休とんちロードの看板によると、大豆やはったい粉、麹などを原料として半年以上も天日干しにしてつくる保存食だそうで、その製法は一休さん伝授。

    一休とんちロードの看板より。寺納豆をつくっているところ。

     これがすごい。一粒で食卓にあるすべてが一休納豆になってしまうのだ。普通の納豆なんてもんじゃない。他のすべての味を無に……ムーにしてしまう濃さなのだ。

     食感は干しぶどうに近いのだけど、香りがもう……なんといったらいいのか。無限塩こんぶみたいな。一休寺の一休寺納豆、すごい食べ物だ。

    強烈エピソードだらけの人生

     そしてこちらが一休さんのお墓。

     この菊の紋章……そう、一休さんは天皇の子なのだ。そういう説があるとかではなく、もう宮内庁がそういっているのである。一休さんのお墓は「後小松天皇皇子 宗純王墓」として宮内庁が管轄している。だからお寺のなかでもここだけは入れないのだ。

    宮内庁公認、一休さんは皇子なのだ。

     以前即身仏のお寺を巡ったとき、お坊さんに「ヤバいお坊さんていないですか」と質問したら「一休さんだよ」と教えてくれたことがあったが、そんな風に名前があがるほど一休さんはあらゆる意味ですごい僧侶だったのだ。

     一休さんが生きていた時代は、世の中が乱れに乱れ、仏教界も腐敗のまっただなかにあった。坊さんたちはいかに幕府に取り入るかに腐心していて、権力争いに明け暮れていた。そんななか、一休さんは姿かたちだけで偉ぶる僧侶たちへの戒めとして、髪の毛も伸ばしてボロボロの服をまとい、禅の心を体現していた。

     そんな感じでやっているので、民衆からは大人気の一休さん。そうなると権力者たちのなかにも人気者の一休さんに取り入りたいという連中がでてくる。

     ある権力者は、うちの法事にぜひ来てほしいと一休さんに依頼する。一休さんはこれをうけるのだが、そこからのエピソードがすごい。

     法事の前日、一休さんはいつものボロボロの衣装でその権力者の屋敷を訪れ門前で托鉢をはじめる。すると門番が「そこの汚い坊主、どこかへ行け」といって一休さんを乱暴に追い返してしまうのだ。
     翌日、法事の当日に今度は立派な袈裟をつけて屋敷にいくと、今度は「一休さんありがとうございます」ということで丁重にもてなされ、たくさんのご馳走がならべられた。
     すると一休さん、ありがとうございますーといってその出された食べ物をすべてきれいな袈裟になすりつけるのだ!
     まわりが騒ぐと、一休さんは「昨日は追い返されたのに今日はもてなされる、お前たちが求めてるのはこのピカピカの衣装のほうなんだろう」といって、食べ物でベトベトにしたその法衣だけを脱ぎ捨てて帰ってしまったというのだ。

     一休さん、メッセージがすごい。そしてその伝え方よ。

    かの有名な「このはしわたるべからず」。

     またこれも有名なエピソードだが、ある正月、街じゅうが新年を祝って「おめでとう」といいあっているなか、一休さんは道端におちていた頭蓋骨を錫杖に挿し、

    「門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし」

    と歌を読みながら街を歩いて回った。正月はめでたいめでたいといっているが、正月がくるたびに人間は一年ずつ死に近づいているんだぞ、というメッセージなのだ。

    ドクロをもつ一休さんの顔はめ。

     これもメッセージはわかるが、やり方……。だがこれが一休さんなのだ。そう、いましたよ今回も超人が。

     超能力を使うとかではないが、間違いなく超人でしょう、一休さん。

     とうわけで今回、断食修行の結果出会ったのは、一休宗純という超人でした。

     断食ですっかり俗気が抜けてしまったけれど、次回はまたちゃんと欲望を復活させて超人化計画頑張ります。

    修行のようすはこの動画から!

    松原タニシ

    心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。

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