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日本史上最強の鬼は、新潟出身のイケメン元ヤンだった!松原タニシが今回追いかける超人は、旅先で偶然出会ったあの妖怪界の超大物だ。
松原タニシの超人化計画、前回は「即身仏」たちの足跡を追った。その配信後に借りた事故物件の元住人が即身仏でした、という衝撃の報告からはじまった第3回。この企画、何かを引き寄せてしまうのか……。
(「即身仏」が気になった方は第2回をご覧ください)
といったところで、今回追いかける超人はこちら。
酒呑童子である。
酒呑童子といえば、今でも妖怪系ゲームなどでラスボス扱いされることも多い妖怪界の超大物。
平安京をさんざんに荒らし回ったこの鬼の一味は、安倍晴明の占いによって正体を突き止められ、隠れ家の大江山に潜入した武将・源頼光とその家臣の四天王たちによって退治されたとの伝説が残されている。
大酒飲みで、その酒好きがアダとなって「鬼が飲むと毒になる」という酒を頼光たちに飲まされ首をとられてしまうのだが、酒呑童子という名前もこの酒好きに由来している。
今回「超人化計画」の舞台となるのは、新潟県。
9月に新潟県の燕市で怪談会の仕事があったのだが、近所に何かあるかなと調べていたらちょうど新潟にいるタイミングで「越後くがみ山 酒呑童子行列」というイベントが開かれることをしったのだ。
毎年開催されている歴史ある行列だそうで、なんだろうこれは、ということでさっそく見学にいってみた。
酒呑童子行列がおこなわれる燕市の国上(くがみ)は、江戸時代の僧侶・良寛さんのゆかりの地でもある。そのためこんな良寛モニュメントもあるのだが、この場所が行列の出発地点となるらしい。
しばらく待っていると、やってきました、酒呑童子行列の一団。
写真中央でマイクにむかっているのが、「これからいくぞー」と掛け声をかける酒呑童子さんだ。黒マスクの手下鬼たちも、予想していたよりずっとおしゃれでかっこいい。
ところで酒呑童子というと、平安京、大江山と京都方面の妖怪という印象があるが、なぜ新潟で酒呑童子行列なのか。じつは、この新潟県にも酒呑童子伝説が残されているのだ。
新潟に残る酒呑童子伝説を、現地にあった看板の説明などをもとにご紹介しよう。
その昔、桓武天皇の皇子が越後を訪れた折、従者として一緒にやってきた否瀬善次俊綱(いなせよしつぐとしつな)という者があり、子孫は越後に定住した。
その子孫に俊兼というものがいたのだが、子に恵まれず、越後のとなり信濃国の戸隠山九頭竜権現(現在の戸隠神社)に願掛けをすることでようやく子を授かった。
ところが俊兼の妻はなんと16ヶ月も妊娠。そうしてやっと生まれた男児には「外道丸」という名が付けられる。
外道丸って我が子になんて名前をつけるんだ、と思うが、これは幼な子にはあえて良くない名前をつけて悪霊などから守るというまじないだったのかもしれない。
しかし、やっぱり外道丸はすくすくと名前のとおりの乱暴者に育ち、手に負えなくなった両親から国上寺というお寺に預けられることになってしまう。
ここで一休さんのように修行することになるのだが、あいかわらず外道丸の乱暴は治らない。ところが、そうこうしているうちに突然、外道丸の母親がなくなってしまう。
これを機に外道丸は心を入れ替え、別人のように修行に励むようになるのだ。
ところで、じつはこの外道丸、すごいイケメンだったのである。
「更生した元不良のイケメン」なんてモテないはずがない。外道丸は村の娘たちから大モテで、大量の恋文、ラブレターをもらうようになるのだ。
しかし心を入れ替えた外道丸は、修行の身ゆえと煩悩を断ち切り、届いた恋文にもいっさい見向きせず、広げてみることすらしなかった。
だが、そこに悲劇が生まれてしまう。外道丸が一向に振り向いてくれないことを悟ったひとりの娘が、悲観して入水自殺してしまったのだ。
それを知った外道丸が娘からの恋文を放り込んでいたつづら(かご)を開けると、もうもうと紫色の煙がたちこめる。その煙を浴びた外道丸は、イケメンから恐ろしい鬼の姿になってしまったのだ。
勝手に好きになられて、勝手に身投げさなれ、その呪いで鬼になる……。なんてかわいそうなんだ外道丸。
こうして人ではなくなってしまった外道丸は仏の道を捨て、寺を飛び出すのである。これが平安京を震え上がらせる最強の鬼・酒呑童子伝説の、すべてのはじまりだったのだ。
酒呑童子は生まれながらの鬼ではなく、もとは人間だった。なぜ「超人化計画」で酒呑童子を追うのか、おわかりいただけただろうか。
松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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