秘密結社との関係は? サンフランシスコの民家で発見された金属の棺と少女遺体の謎/遠野そら

文=遠野そら

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    こんなところに棺が? 中にはミイラが? 美しい少女の遺体には、とある秘密結社が関わっていそうだが……?

    「子供の足音」が鳴る家のガレージで発見

     2016年5月、米・カリフォルニア州サンフランシスコ郊外にあるリッチモンド地区にある個人宅の床下から、古い棺とそこに眠る美しい少女の遺体が発見された。この謎の少女遺体の身元を調査したところ、さまざまなことが判明したーー。

     少女の遺体と棺はガレージの改装中、工事業者によって偶然発見されたものだ。棺の大きさは約1.5メートル。金属製でサビが深くまで侵食していたが、蓋にはめ込まれていたガラス部分から中を覗くと、そこには白いレースのドレスを着た少女の遺体が横たわっていたのだという。肌はやや褐色がかっていたが、豊かなブロンドの髪や、胸に置かれた十字架の花輪は、まるで2、3日前に眠りについたような状態であった。

    発見された少女遺体が見つかった民家。
    画像参考:https://www.latimes.com/local/lanow/la-me-ln-miranda-metal-casket-girl-identified-20170509-htmlstory.html
    棺は小さく、ひと目で子供のものだとわかる。https://arkeonews.net/the-secret-of-the-mummy-in-the-crystal-coffin-found-in-a-garage-in-san-francisco/

     自宅の所有者であるエリカ・カーナー氏は、警察や検察の調査で事件性がないことを確認すると、少女の身元探しを開始。1日も早く両親のもとで眠りにつけるよう、保護者に遺棄された子どもたちの埋葬を支援する非営利団体「ガーデン・オブ・イノセンス(GOI)」に協力を依頼したのである。
     というのも、サンフランシスコでは事件性のない身元不明の遺体は、その土地の所有者に埋葬義務が発生する。しかし、少女は埋葬するために必要な死亡診断書を取ることができなかったため、GOIに頼らざるを得なかったのだという。


    少女遺体が収められていた鉄製の棺。
    画像参考:https://www.latimes.com/local/lanow/la-me-ln-miranda-metal-casket-girl-identified-20170509-htmlstory.html

     カーナー氏は、「これまでもだれもいない部屋から子供の走り回る音を聞いています。もしかしたら少女が両親を捜していたのかもしれません」と語っており、故人の敬意から写真も公開していない。
     GOIによると、少女は洗礼用のドレスを着用し、紫色の花を手に安置されていたそうだ。ブロンドの髪の丁寧に編み込まれ、遺体の周りにはバラやローリエ、かすみ草が供えられていたことから、ひと目で裕福な家庭の子供であることがわかったという。

    突き止められた少女の身元

     少女の棺が発見されたのは、1936年にサンフランシスコの都市開発で宅地分譲された地区であり、古くはオッドフェローズ墓地の敷地内にあった。このことからGOIは少女が墓地移設時に取り残された可能性が高いと推測し、地道な調査を重ねたところ、ついに少女の身元を突き止めたのだ。

     棺の中に眠っていたのは、エディス・ハワード・クック。1876年10月13日、「マラスムス」によってこの世を去った、わずか2歳11か月の少女であった。マラスムスは栄養障害の一種であるが、これは死の数ヶ月前、ウイルス性の病気に罹ったことで投与された薬による深刻なタンパク質欠乏が原因と考えられているようだ。
     遺体には防腐処理を施した形跡はなく、なぜ約150年もの間、朽ちることなく保管されていたのか。その理由については、地下という安定した気温と、鋳鉄製の密封性が高い棺によるものと考えられているが、はっきりとはわかっていない。

     またGOIは、エディスちゃんの毛髪から核DNAや、母方の遺伝情報を示すミトコンドリアDNAを抽出し、両親のみならず祖父母やその子孫まで調べ上げている。それによるとエディスちゃんの母親は、カリフォルニア・ゴールドラッシュ最盛期にサンフランシスコで成功を収めた開拓者一家・スクーフィー家の出身で、子孫は今もサンフランシスコで事業を営んでいるという。

    少女の遺体は墓地に再埋葬され眠りについた

     現在、エディスちゃんは何度か埋葬先を変えながらも、新たなオッドフェローズ墓地で両親とともに眠りについており、子孫たちが後見となっているそうだ。
     カーナー氏は、「エディスちゃんが安心して眠りにつけたことにホッとしています」と述べているが、どうやらまだだれもいないはずの部屋から子供の走り回る音が聞こえてくる現象は収まっていないという。

     さて、この騒動の舞台となったオッドフェローズ墓地とは、共済、相互扶助を目的としたイギリス発祥の秘密結社「Odd Fellows of Independent Order(IOOF)」メンバーの墓地である。このことから、エディスちゃんの両親もメンバーである可能性は高いだろう。
    「IOOF」はアメリカで労働者階級やその家族の相互援助や救済活動を行っていた団体(秘密結社)で、今も世界各地に1万以上、アメリカにも1750の支部がある。少女の棺が取り残された背景には、秘密結社としての特別な理由でもあるのだろうか。もしかしたら床下には他にも棺が眠っているのかもしれない。

    「IOOF」が儀式に使うチャート図。https://www.messynessychic.com/2020/01/17/237753/
    少女の遺体は現在再埋葬された。
    https://www.latimes.com/local/lanow/la-me-ln-miranda-metal-casket-girl-identified-20170509-htmlstory.html

    【参考】
    https://arkeonews.net/the-secret-of-the-mummy-in-the-crystal-coffin-found-in-a-garage-in-san-francisco/
    https://www.latimes.com/local/lanow/la-me-ln-miranda-metal-casket-girl-identified-20170509-htmlstory.html
    https://www.messynessychic.com/2020/01/17/237753/

    遠野そら

    UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。

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