白いヴェールをまとった泣き女は今もさまよう……メキシコの幽霊ラ・ジョローナの伝説と現在/遠野そら
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日本古代史上、最大の鏡と剣が奈良の古墳で発掘された。類例のない宝物を手にしていたのは、いったいだれか? この謎を三上編集長がMUTubeで解説。
1月25日、考古学ファンを驚喜させるニュースが日本列島を駆けめぐった。
この日、奈良市教育委員会と奈良県立橿原考古学研究所が、奈良県北部(奈良市丸山)にある国内最大の円墳で、4世紀後半の築造と推測される富雄丸山古墳(直径約109メートル)から、形の巨大な青銅鏡と長大な蛇行剣が出土したと発表したからである。
これらは墳丘からせり出した「造り出し」で見つかった埋葬施設から出土したもので、盾形青銅鏡は縦64センチ、横幅は最大で31センチ、厚さは0.5センチ。背面中央に紐(つまみ)があり、その上下に神獣などを表現した精緻な文様が施されている。神獣文は、体をうねらせた龍を浮き彫りにした古墳時代の倭鏡(国産の鏡)の代表格「鼉龍鏡」の図像文様に酷似しているため、「鼉龍文盾形銅鏡」と命名された。銅鏡は通常円形であり、盾形は国内では前例がない。大きさも類例がなく、鏡面の面積は、これまで国内最大だった福岡県の平原遺跡出土の銅鏡(直径46.5センチ)を上まわる。
次に蛇行剣だが、蛇のように曲がりくねった形状が特徴で、このタイプの鉄剣は国内では80本以上見つかっている。ただし、今回の蛇行剣はその大きさが破格で、全長は2メートル37センチ、幅は6センチ。これまで最大だった宇陀北原古墳(奈良県宇陀市)の84.6センチの約3倍で、蛇行剣としてはもちろん、鉄剣としても国内最大になるという。
蛇行剣はその形状からしておそらく祭祀や呪術(魔除け)に用いられたもので、神獣としての龍蛇をかたどったものであり、これを所持する人物の権威を象徴する一種のレガリアでもあったのだろう。そしてその人物が死去して埋葬されたのち、副葬されたのだろう。盾形銅鏡もこれと似たような性格を有していたと思われる。
「国宝級だ」との声もすでにあがっているが、しかし、これほどまでの特色をもつのであれば、何らかのかたちで史料・文献に言及されていてもよさそうのものである。
『日本書紀』神代巻をみると、出雲に降臨した素戔嗚尊は八岐大蛇を「十握剣」で斬殺し、大蛇の尾を切り裂くと中から霊剣「天叢雲剣」が現れた。天叢雲剣はのちに日本武尊の手に渡って「草薙剣」と名を改めたという。皇室の三種の神器のひとつである。
十握剣や草薙剣(天叢雲剣)の具体的な形状は不明だが、そこには神秘的な形状をもつ蛇行剣のイメージが重ねられていたのではないだろうか。いや、長大な蛇行剣の由緒を誇るため、「かつて偉大な勇者がこの神剣で大蛇を斬って退治した」「大蛇を斬ったので曲がりくねってしまった」「大蛇の尾から取り出された霊剣なのだ」といった説話が語られるようになり、それが神話化していったのではないだろうか。
これとは別の可能性も指摘できる。
富雄丸山古墳がある富雄川流域(生駒山地東側の丘陵)は、饒速日命を奉じてヤマト王権の軍事・警察を司った有力豪族・物部氏の本拠地と目されてきた土地だ。そして、物部氏の古伝承をもとに9世紀ごろに成立したとみられる史書『先代旧事本紀』には、物部氏の遠祖・宇摩志麻治命が、東征を果たした神武天皇から国土平定に用いられた神剣「布都御魂」を授かったと記す箇所があり、布都御魂はのちに物部氏によって神として奉斎されるようになったという。
してみると、富雄丸山古墳の蛇行剣は物部氏の神剣伝承のモデルになったもので、古墳の中心的被葬者は宇摩志麻治命のモデルにあたる物部氏の有力者だったのではないか。いや、被葬者は4世紀に実在した宇摩志麻治命その人で、蛇行剣は彼が仕えた大王から下賜されたものだったのではないか。『先代旧事本紀』によると、神武天皇即位の際、宇摩志麻治命は神楯を立ててこれを祝したというのだが、この神楯は、今回見つかった盾形銅鏡と何らかの関係があるのかもしれない。
また、物部氏が祭祀を司った奈良県天理市の石上神宮には、4世紀に朝鮮半島の百済から倭に贈られたとされる「七支刀」(国宝)が伝世されているが、刀身の左右に交互に3つずつ小枝のような突起をもつその独特の形はどこか蛇行剣を彷彿させる。
今回出土した蛇行剣は、七支刀をヒントに物部氏がつくったものである可能性もあるのではないか。今後のさらなる調査・研究によって「空白の世紀」と呼ばれる4世紀の歴史が解明されることを期待したい。
(文=古銀剛)
掲載記事は本誌(電子版)で。
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