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取材・文=松雪治彦 協力=コヤッキースタジオ
コヤッキースタジオ、都市ボーイズ、MATT SHOW。都市伝説をテーマに活動するYouTuberたちが、他言無用のクローズドイベントに集まった。 なぜYouTubeでも語れない“事実”をあえて明かすのか? その真意から、都市伝説とインターネットが向かう新時代の必然が見えてきた。
2022年1月15日、YouTubeチャンネル「コヤッキースタジオ」が登録者数40万人到達を記念して「KOYA st NIGHT ~40万人ありがとうの夜会~」(コヤスタナイト)を開催。ちなみに開催後に登録者数は48万を超えていた。
コヤッキースタジオは、世間的にはざっくり「都市伝説系」とカテゴライズされるテーマで動画配信を行っているYouTubeチャンネル。https://www.youtube.com/c/koyakky-st
UFOや陰謀などの世界的ミステリー、古代文明から近代史を含む歴史の闇、テクノロジーや企業活動から読み解く現代社会の謎、または童話や漫画などの考察などなど視野の広さは驚くばかり。過剰に煽ることなく、リサーチと考察に基づいた知見をきっちり伝える「コヤスタ」のスタンスは、虚実ないまぜになりがちなネット情報のなかでも安心して楽しめるチャンネルだ。
今回の「コヤスタナイト」には、ゲストとして都市ボーイズ(はやせやすひろ、岸本誠)と、MATT SHOWがゲスト参加。いずれも都市伝説をテーマに活動する人気YouTuberであり、販売開始で早々にソールドアウトした108席をファンが埋め尽くした。
昨今のイベントには珍しく、オンライン配信やアーカイブなどは、ない。会場で語られた話の内容は他言無用と何度も念押しされた、完全クローズドな現場だった。
YouTubeという世界的にオープンなプラットフォームで情報発信する面々がなぜクローズドにこだわったかといえば、もちろん、公開できない話をするためである。いや、正確には、「広く公開はできないが、話しておきたい秘密」を語るためだろう。知ってしまったことは少しだけでも語りたい……という登壇者の思い(と来場者への信頼)があるのだが、今後の情報発信に備えたリテラシー・コントロールについての実験的な側面もありそうだ、と思うのは邪推だろうか?
ではここで、会場で語られた情報を公開しよう……ということはもちろんできない。未解決事件、心霊写真、日本の裏面史、文字通りの地下の謎など、確かにYouTubeで公開できない話が続出した。ひと言だけ添えておけば、公開しないからといって曖昧だったり強引な推測だったりするわけではなく、扇動的、煽情的でもない。わけあって公開しがたい話を、言える範囲で伝えたものだった。
と、気になるばかりの説明で申し訳ないが、おそらく各YouTubeチャンネルにて少し明かされる部分もあるだろう。個人的には、TのH氏が語っていた謎の養成所についての話が気になったので、おかわり希望の気持ちである。
後半は「コヤスタ」に何度か出演している秘密結社のメンバーも登場。秘密結社の内部について、また、結社がかかわっている世界の動きについての事実を聞いて、自分が暮らしている社会に見えない補助線がひかれたような納得感を得た。鵜呑みにしていいのか、という内省もあるが、別の登壇者からの指摘や情報と一致する部分も多く、語りは確かさのあるものだった。
それは決して工作や陰謀ではなく……素直に啓蒙的なものだった、とだけ書いておく。当然ながらエリートの矜持があふれていた。
都市伝説、都市民俗学での“話”は、「友達の友達から聞いた話だけど……」で始まるフォーマットだ。実在する発信源を示しつつ、曖昧な雰囲気を帯びる伝聞の形式は、深刻な話であっても語りやすく聞きやすい。その“ノリ”が伝播を誘発し、次の「友達(の友達)」へ伝えられていく。現代日本では「信じるか信じないかはあなた次第」という聞き手のリテラシーに任せた「嘘かもしれないけどね」のアトモスフィアも加味され、その親しみやすさはさらに増した。
YouTubeでは日々、多くのチャンネルで都市伝説が語られている。曖昧さを残せる都市伝説というスタイルに真実を隠しておけるのは、情報を出す側には都合がいいはずだ。インターネットでなにもかもオープンになってしまう時代、というのは幻想である。隠されたものは隠されたままに、発信者側の選択肢が増えただけといえる。
真実のようなフェイク、単純に誤った情報も各種メディアにあふれている現在、情報を持つものが何を隠し、誰に何を伝えるか、という選別は日々、行われているといっていい。
YouTubeで「都市伝説」を語る面々による「ここだけの話」や、秘密結社のメンバーが「あえて明かした」情報を、どう受け止めるか。
今回のイベントは、隠された叡智に気づかされる、まさにオカルト体験だった。今後、彼らの動画配信を“知ったうえで”見るのが楽しみである。
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