宇宙創世と物質創成の接点とは?「宇宙のはじまりと素粒子」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

関連キーワード:

    「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。

    宇宙のはじまりと素粒子

    田島 治 著

    最新物理学情報がすんなり頭に入る、巧みな構成

     宇宙や物質の起源といえば、それこそ有史以来、数多の哲人たちが取り組んできた千古の謎である。だが近年では、素粒子物理学などの高度の発達により、人類の叡智はついにその蘊奥に肉薄しつつあるようだ。

     この謎を一般人にわかりやすく説明するために、本書はまず「ウロボロスの蛇」を提示する。自らの尾を飲み込もうとする、古代エジプトの蛇の図像である。そしてここでは、その蛇の頭が「宇宙」、そして尻尾が「素粒子」となっている。つまり「宇宙創世と物質創成の接点」こそがこの蛇の口の中、というわけである。このスケールの大きさに度肝を抜かれてしまえば、もはや著者の俎上に載せられたも同然だ。

     最初の数章は、基本的な知識の解説で、多少の数式に目をつぶれば中学生でも理解できる。その後の章も丹念に読み込んでいけば、いつの間にやら「ダークマター」「ダークエネルギー」「素粒子」「ビッグバンの初期と晴れ上がり」「量子ゆらぎ」などの最新情報が、すんなり頭に入ってしまうのである。その巧みな構成力には、思わず舌を巻く。

     著者の田島治氏は、京都大学大学院教授で、専門は宇宙素粒子物理学。そして本書は、最近講談社が精力的に取り組んでいる「京大×ブルーバックス」シリーズの一冊である。「自分らしく」をモットーとするという京大のユニークな校風がなければなし得なかったであろう、稀有なる傑作である。

    講談社/1210円(税込)

    (月刊ムー 2026年10月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

    関連記事

    おすすめ記事