首相公邸の怪談と二・二六事件の幽霊/吉田悠軌・怪談解題
昭和11年2月26日、日本を震撼させ、その後の歴史にも大きな影響を与えた一大事件は、数多くの怪談をも生み出していた。現場となった建物には、今も事件の記憶が刻みつけられているのだろうか。
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気鋭の怪談研究家が名作怪談を解体する。
2024年刊行の「教養としての最恐怪談 古事記からTikTokまで」の好評をうけ、第2弾が刊行される。
今回は「教養としての名作怪談 日本書紀から小泉八雲まで」と題し、日本書紀、日本霊異記、源氏物語、太平記から明治大正の名作文芸など、古典籍や名作文学の「恐い話」を厳選し、その恐怖の歴史的、文学的系譜を解説する。
怨霊の祟り、江戸の化け猫騒動、戦時中の怪奇事件が裏付ける業の応酬とは?
小泉八雲が見出した日本の怪談を通じて、本邦独特の死生観が浮かび上がる……。
筆者は「ムー」連載「怪談解題」でもおなじみ、気鋭の怪談研究家・吉田悠軌だ。
「教養としての名作怪談 日本書紀から小泉八雲まで」
吉田悠軌・著 四六版 224ページ
本体価格1600円+税 2025年7月1日配本予定
発行:ワン・パブリッシング
(カバー絵、各章挿画=森口裕二)
第一章 神威
天逆手、三種の神器、蘇民将来、水の神の寿命、刑部姫
第二章 怨霊
御霊たち、子を淵に捨てる話、源氏物語、三島由紀夫と川端康成、逆さ幽霊
第三章 禁足
イラズノモリ、古墳の祟り、八幡の藪知らず、飯降山、一眼寺
第四章 呪詛
縊鬼、溺鬼、吉備真備、恋まじない、幽霊の継子いじめ
第五章 来訪
八百比丘尼、子脅しの化物、日忌様と二十五日様、うつろ舟の蛮女
第六章 異形
鍋島の化け猫、牛鬼渕、牛娘、道成寺、蛇とタバコ
第七章 戦争
彰義隊の墓、首相公邸の幽霊、お化け灯篭、戦艦陸奥の最期、ルーズベルト呪殺、羽田の大鳥居
第八章 八雲
子育て幽霊、茶碗の中、小豆とぎ橋、幽霊滝の伝説、耳なし芳一、ムジナ
●どんな基準、視点で怪談を選びましたか?
今回は「名作怪談」ということで、教養として知っておくと楽しい「古典」に焦点を当てるようにしました。「古典」とは、誰もが名前くらいは知っているけど内容は詳しく知らない作品……というイメージがあるでしょう。確かにそうした有名作も多くいれてますが、同時に、私がオススメしたい知られざる「古典」も配分するように心がけました。
●この中で「これは絶対知っておいてほしい!」怪談は?
「飯降山」「ルーズベルト呪殺」についての怪談です。前者は「まんが日本昔ばなし」の最恐トラウマ回として有名な話、後者は知る人ぞ知るオカルトネタといった知名度の差はありますが。いずれもこれまでにでてこなかった新しい情報や見識を打ち出せたかと思います。
●執筆していて、筆者自身で驚いた、意外に思った怪談は?
「源氏物語の生霊」です。昔から知っている話でしたが、今回の執筆にあたり、調べていくほど読み込んでいくほど、その奥深さに驚きました。「千年前に、ここまでの怪談に到達していたのか!」という。それは私が「怪談」の仕事を二十年やっていたからこそ、深められた理解なのでしょう。「文学」という視点だけでなく、「怪談」というアプローチから『源氏物語』を読んでもらうのもいいかと思います。
●怪談の紹介、解説でこだわった部分は?
概要や粗筋の説明に終わらず、自分なりの視点や新情報は必ず入れ込むようにしました。有名な「名作怪談」ならばインターネットに情報は多くあるため、AIにお願いすれば、それなりに精度の高い紹介・解説を提供してもらえるでしょう。そこから一歩進んだ、AIでは生成できない独自視点、調べられない情報を入れるようにしなければ、書籍として刊行する意味がないと考えたからです。
●どんな読者に手に取ってほしいですか?
前作『教養としての最恐怪談』もそうでしたが。怪談にほとんど触れていない初心者と、そうとう知識のあるマニアと、両者を同時に満足させられる作りにしているつもりです。知らなかった怪談に気楽に触れてもらうキッカケにも、知っていたはずの名作について議論を深めるキッカケにもなってもらえれば嬉しいです。
吉田 悠軌(よしだ ゆうき)
作家。怪談・都市伝説研究家。1980年東京都八王子市出身。
早稲田大学卒業後、ライター・ 編集活動を開始。怪談サークル「とうもろこしの会」の会長をつとめ、 オカルトや怪談の研究をライフワークとする。実話怪談の語り手としてイベントやメディアに出演するほか、テレビ番組「クレイジージャーニー」では禁足地や信仰文化を案内している。
「ムー」にて実話怪談、都市伝説の考察記事をレギュラー執筆する。
著書に『教養としての最恐怪談 古事記からTikTokまで』(ワン・パブリッシング)、『ジャパン・ホラーの現在地』(集英社)、『現代怪談考』(晶文社)、『オカルト探偵ヨシダの実話怪談』シリーズ1~4巻(岩崎書店)、『中央線怪談』(竹書房)、『日めくり怪談』(集英社)、『禁足地巡礼』 (扶桑社)、『一行怪談(一)(二)』(PHP研究所)など多数。
前作「教養としての最恐怪談」の情報は以下!
webムー編集部
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