青森の古代宇宙人”シャコちゃん”と「青森EXPO」の謎を追う!/山下メロ・平成UMAみやげ

文・写真=山下メロ

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    平成レトロの視点では、遮光器土偶は平成初期に重要なキャラだった!

    「平成レトロ」というキャッチフレーズ

     ここ最近、世間では「平成レトロ」という言葉が話題となっています。
    懐かしいと感じる平成初期のアイテムや文化のジャンルとしてこの言葉を提唱したのは私です。
     平成という時代が終わるのが決まるよりも前から、
     平成文化が無価値のように扱われている現実に危機感を持ってもらおうと思い、提唱しました。

    筆者・山下メロは平成レトロの象徴として「ファンシー絵みやげ」を収集している。

    平成初期の重要キャラとしての遮光器土偶

     そんな平成時代の初頭に顕著だったキャラクターが、古代宇宙飛行士説の裏付けとして扱われる縄文時代の遮光器土偶であることを知っていますでしょうか。

     遮光器土偶は、その名の通り遮光器を付けたような顔をした土偶で、青森県の木造を中心に出土しました。遮光器や体の模様から、これは古代に地球に飛来して人類に知能を授けた宇宙人を模したものではないかいう説があるのです。

     今回、例として筆者の友人宅にあった高さ50センチくらいある遮光器土偶のレプリカを紹介します。
     友人は、娘さんの結婚式にて新郎新婦から両親への贈り物としてもらったそうです。両親にビッグサイズの遮光器土偶を贈るというのは、かなりぶっ飛んでますね!

     それはさておき、なぜこの遮光器土偶が平成初期に重要かと言いますと、まずはドラえもんの映画『のび太の日本誕生』があるのです。1988年、昭和の末期からコロコロコミックで原作が連載され、平成元年の1989年にアニメーション映画として公開されました。その映画の中に登場するギガゾンビの手下が、遮光器土偶モチーフのツチダマという敵だったのです。ネーミングとしては「土偶」を訓読みして「つち」「だま」なのでしょう。

     さらにその翌1990年(平成2年)、当時人気だったファミコンのRPG『ドラゴンクエストIV』にも遮光器土偶は登場します。「どぐうせんし」「いしにんぎょう」「うごくせきぞう」「ミステリドール」と、色違いで4パターンの土偶モンスターがいるのです。

     はっきりとした理由は分かりませんし、偶然なのかもしれません。
     昭和時代には遮光器土偶をモチーフにしたミクロマンコマンドという玩具もありましたが、確かに平成初期、漫画・アニメ・TVゲームと、子ども向け文化に遮光器土偶が登場していたのです。

     平成初期と遮光器土偶は、1989年のドラえもん、1990年のドラクエ、そして1991年にも重要な出来事があります。

    遮光器土偶の駅舎

     1991年(平成3年)、ふるさと創生事業による交付金で青森県つがる市・五能線木造駅駅舎の改修が行われました。なんとその駅舎には、2階建ての建物の屋上部分まで突き出した巨大な遮光器土偶の像が張り付いているのです。

    右下の足があったはずの部分で両手を挙げているのが筆者。
    列車が到着すると目が光るという仕組みについて事前に知っていましたが,
    昼でもしっかり光っているのを確認できました。

     地元の方たちに”シャコちゃん”と呼ばれているこの像のモチーフは、地元の亀ヶ岡遺跡からの出土品で、重要文化財となっているもの。
     数々の土偶が国宝に選ばれているにもかかわらず亀ヶ岡の遮光器土偶は国宝になっていません。

    遮光器土偶の土産は存在するのか

     1980年代~1990年代に全国の観光地にあふれていた子ども向け雑貨土産を「ファンシー絵みやげ」と呼んでいます。
     その中に遮光器土偶はありそうで見つかっていません。

    青森県のファンシー絵みやげの例。りんごに関するお土産が多い。

     そんな中、見つけたファンシー絵みやげ的なキーホルダーがこちらです。

    画像4

     なんと、宇宙人っぽいアンテナが生えた空飛ぶ遮光器土偶!?!?
     これはまさに古代宇宙人説を裏付けるものなのでは!?!?
     しかも青森県の名産品であるリンゴのようなものを持っているではありませんか。
     なぜかリンゴがストライプですが……。

     これは一体なんなのか……。いわゆる80年代から90年代に子ども向けに作られた観光地みやげ=ファンシー絵みやげっぽいのですが……
     結論から言うとここに描かれている宇宙人っぽいアンテナが生えた空飛ぶ遮光器土偶。
     これがまさに「シャコちゃん」なのです。

    青函博の中の、函館EXPOと青森EXPO

     ちなみに前回紹介した空飛ぶシャコちゃんのキーホルダーはこちらです。

    画像6

     この中には青森EXPO88の文字と、SEIKAN EXPOの文字。
     お分かりの通り、EXPO=博覧会のキーホルダーで、まさに1988年という地方博が多かった時代。
     確かに博覧会の名称は色々あってややこしいものです。
     たとえば1985年の通称「つくば万博」は、「つくばエキスポ」「つくば85」「科学博覧会」など色々な名称・略称・愛称で呼ばれたものです。
     しかしそんな中でも今回は、さらにややこしいです。

     はい、こちらには函館EXPO’88の文字が。ややこしいですね。
     ちなみにこちらのカモメのマスコットは「かんちゃん」と言います。

     同じ青函博という略称なのに、函館EXPOと青森EXPOがあるのはなぜかというと、正式名称を青函トンネル開通記念博覧会と言って、青函トンネルが開通するのを記念し、青森と函館でそれぞれ「青森EXPO’88」「函館EXPO’88」という博覧会が同時に開催されたのです。

     青森駅ちかくにある三角形のピラミッドパワーを感じる建物。
     AOMORIの「A」をかたどったこの青森県観光物産館アスパムの周辺が青森EXPOの会場でした。

     万博公式マスコットを使わなかったファンシー絵みやげキーホルダーには、背景に三角形のパビリオンも見られます。ただし、他の万博でも使われたイラストなので、「A」型の建物・アスパムを意識してるわけではなさそうです。
     これらのキーホルダーはどちらも「青森」とも「函館」とも限定していません。それぞれに公式キャラクターがあるもののせっかく非公式のイラストを使うのであれば、両方の会場で売れたほうが良いですから、限定しないほうが良いのです。

     そんなわけで、青函博の青森側のマスコットが地元から出土した遮光器土偶をモチーフにした「シャコちゃん」だったのです。

     さて、同時の会場地図がキーホルダーの裏側に描かれていました。

     証紙がシャコちゃんの顔。

     これを見ると、やたらとゾーニングやゾーンという言葉が出て来ます。
     そういえば、函館EXPO’88のキーホルダーの裏側にいずれも「ゾーン539」と書かれていました。

     ほとんどの裏側にゾーン539の文字とイラスト。
     ゾーン539 JR館というパビリオンを、JR北海道が函館EXPOに出展していたようです。

     この名称は青函トンネルの長さ53.9kmからのネーミングのようですが、
    「ゾーン + 数字」という組み合わせで、何かサイエンスや未来というものを感じさせてきます。エリア51などにも通じるネーミングとも言えるでしょう。

     古代宇宙飛行士説のマスコット・シャコちゃん。
     そしてピラミッドパワーやプロビデンスの目を想起させる三角形のアスパム。
     そこにゾーン539……

     そういえば先日、街を歩いていて似たものを目撃しました。

     日常の路上風景ようでいてシルエットで描かれると不穏に感じるイラストと「ゾーン30」の文字……。

     ゾーン539にも通ずるゾーンは、日常にも潜んでいました。

    (2021年5月4日、6月3日記事を再編集)

    山下メロ

    平成レトロの提唱者。ファンシー絵みやげなどバブル時代周辺の懐かし文化を紹介する。著書に「平成レトロの世界 山下メロ・コレクション」(東京キララ社)など。

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