生命発生の起源を考える「宇宙になぜ、生命があるのか」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    宇宙になぜ、生命があるのか

    戸谷友則 著

    「単純な科学反応の積み重ねで生命は発生できる」

    「生命の起源」。それはある意味、人類最大の謎である。生命の起源に比べれば、むしろ「宇宙の起源」の方が、遙かに詳細に判明している、と本書の著者はいう。
     著者・戸谷友則氏は、東京大学大学院教授で、専門は天文学・宇宙物理学。本書はそんな、日本が世界に誇る第一線の物理学者が、畑違いともいえる「生命科学」最大の謎に果敢に挑んだ意欲作である。そして何と著者は、この難問に対して、実に宇宙物理学者らしい解答を導き出してしまうのだ。
     この宇宙の大きさは一応、だいたい138億光年であるとされている。がそれは、実際にはあくまでも宇宙の年齢と光速度から導きだされた「観測可能な宇宙」の大きさに過ぎない。
    「インフレーション理論」によれば、実際の宇宙の大きさは、何とその10⁷⁸倍であるというから驚く。
     そして「インフレーション宇宙全体」がこれほど広大であるのなら、その中では「単純な科学反応の積み重ねで生命は発生できる」と、著者はいう。
     著者はこの仮説を、2020年に学術論文として世に問い、全世界にセンセーションを巻き起こした。
     本書はこの論文を、広く一般人にも理解できる形で説き明かしたもの(それでも数学の苦手な文系者にとっては難解ではあるが)。それも、元論文の著者自身がそれをやってくださっているのだから、これ以上ありがたい話はない。

    講談社/1100円(税込)

    (2023年11月号掲載)

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