予言が外れる理由と、占いが当たる理由は表裏一体? エントロピーで考える「生命は宇宙の特異点」
古今東西、予言が外れてしまった例は枚挙に暇がない。しかし、エントロピーと時間の観点から人間を見れば当たり前のことだった?
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アメリカで今、チーズを使って未来を占う魔女が話題だ。実はこのチーズ占い、西洋では1800年近い歴史をもつ由緒正しい占いだという。世界に存在する伝統的かつ個性的な占いの数々とともに紹介する!
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人生一寸先は闇であり、いつ何時病気や事故などの不幸に見舞われるかわかったものではない。自分の人生がこの先順調に進むのか、将来の結婚相手はどのような人なのか、気にならない人間の方が少ないだろう。
そこで人類は、ほとんど石器時代から、何とかして未来を予測しようと様々な手法を編み出してきた。とりわけ、占いのやり方は多様で、世界には数えきれないくらい多くが存在する。
入神状態に陥って神仏の託宣を受ける占いは、人類史と同じくらい古くから伝わり、西洋占星術や手相、水晶球凝視、易などもそれぞれ数千年の歴史を誇っている。歴史の中では他にも次々と占いが編み出され、古代ギリシャ時代においてさえ、230種が存在したという。
本人の身近にある様々な事物を観測する占いも多い。
手相や人相は言うに及ばず、未来の吉凶を判断するため、神の生贄として捧げられた動物の腸や肝臓、上空の雲の形、鳥の飛び方や馬の走り方、道端の草の実のつき方など、ありとあらゆる物品が使用される。その背後には、ミクロコスモスたる人間と周辺環境の間には不思議な照応関係があり、辺りに散らばる何気ない品々の状態の中にさえ、待ち受ける凶事や幸運を示唆するものがあるという魔術的な考えがあるのだろう。
このような思想に基づけば、占いに用いる品物に制限はなくなる。
なかには、日々食卓に上る身近な食物を使用する占いもある。そうした占いの一つが、チーズの欠片を利用する「チーズ占い」である。
現在ではあまり知られていないが、チーズ占いは2世紀頃から行われてきた由緒正しい占いであり、中世ヨーロッパではかなり盛んだったようだ。英語では「Tyromancy(タイロマンシー)」あるいは「Tiromancy」と呼び、これはギリシャ語でチーズを意味する「turos」と占いを意味する「manteia」を組み合わせた言葉だ。
一口にチーズ占いといっても、様々なやり方がある。
中世において一般的だったのは、チーズの形、穴の数やその深さ、ひびやくぼみ、さらにはカビが作る模様など、そのチーズ片の特徴を総合的に読み解いて判断を下すものだ。
なにしろ当時のチーズは、現代のスーパーで売られているように均一にスライスされてパックされたものとは異なり、一回ごとに手作りで人為的にカビを植え付けたものも多かった。切り分けた形も様々だし、カビの模様もひとつひとつ違う。
模様やひび割れ、穴などの読み取り方については、チーズにハート型を見ると「恋の前兆」、赤ん坊の形はしばしば「予期せぬ変化や物事の中断」、卵あるいは籠の中の卵が見えたら「思いもよらぬ栄達」などという判断がなされたようだ。
また、深いひび割れは困難な時期に向かっていることを示唆し、穴の数は偶数が吉兆とされたようだ。
チーズ占いには、もっと簡易なやり方もある。
例えば、将来の結婚相手が誰か知りたいときには、何人か心当たりのある名前をひとつずつチーズ片に書いてしばらくそのままにしておく。この場合、最初にカビの生えたチーズに書かれたものが将来の伴侶の名前である。
イエスかノーかで答えられる質問についても、同じように2つのチーズ片にイエスとノーを書き込み、最初にカビが生えた方を回答とすることができる。
さらに似たようものとして、質問に対して想定される答えをいくつかのチーズに書き込み、腹を減らしたネズミのいる籠に投げ込むやり方もある。この場合はネズミが最初に食べたチーズに書かれた内容が質問の答えになる。
さらに変わった手法としては、チーズをワインで煮て溶かし、チーズ・フォンデュにして占う場合もある。パンなどのディップをフォンデュに漬け、ディップにこびりついたフォンデュの形で将来を占うもので、不定形から判断するという点では、茶の葉占いやコーヒー占いに通じる部分がある。
このように、なかなか個性的かつ長い歴史もつチーズ占いだが、現代ではほとんど廃れていた。それを蘇らせ、認知向上と普及に努めているとして最近話題になっているのが、アメリカのシカゴに住む占い師、ジェニファー・ビロックである。
ビロックは10代の頃から魔術やオカルトに関心を持っており、茶の葉を用いた占いを行っていた。一方、チーズを食べるのも好きだったので、チーズ占いにも手を広げたということらしい。現在はチーズ占いのワークショップや、ワイン・ショップやチーズ店と提携したイベント企画も行い、「台所の魔女」とあだ名されている。
まったく同じ形に整えられたスーパーのスライス・チーズでは、形や模様から判断する伝統的なやり方は難しいだろうが、ハムスターなどを飼っている家庭では、チーズに答えを書いて食べさせるというやり方はできるだろう。
なお、世界的に人気のロールプレイング・ゲーム「ウィッチャー3 ワイルドハント」には、「チーズ占いの部屋」というステージも存在するらしい。
さて、チーズ占いの他にも、身近な食べ物を使った占いは、世界各地にいくつもある。
ヨーロッパには、リンゴや洋梨を使った占いも伝わっており、若い娘の結婚の見込みや将来の夫について占うことが多いようだ。
たとえば、クリスマスや大晦日の夜、あるいはハロウィーンの夜にリンゴの皮を剥き、肩越しに後ろに投げ、落ちた皮が作った形が未来の夫のイニシャルを示すというものや、11月30日の聖アンドレアスの祝日に若い娘が未亡人からリンゴをもらい、それを割って片方を食べ、片方を枕の下に入れて寝ると未来の夫を夢に見るというものがある。
ドイツのブランデンブルク州の一部には、娘が大晦日の夜に水を入れた鉢と石鹸とタオルとリンゴをベッドの前のテーブルに置き「りんごさん、誰が私の夫になるか言っておくれ」と唱えると、未来の夫が出てきて顔を洗って立ち去るという伝説も伝わっている。
同様に洋梨についても、結婚に関係する占いが伝わっている。
クリスマスか、12月20日の聖トーマスの祝日の夜、若者が梨の木に枝やわらの束を投げ上げ、3度目に木にかかると近々結婚のはこびとなるというものだ。何度投げても木にかからないときは、その回数の年月を独身で過ごすという。
さらに、世界には団子を使った占いもある。
よく見られるのが、団子の中に小物やおみくじを練り込んでおくというやり方だ。
チベットの場合、大晦日に小麦粉の団子を入れたスープを食べる風習があるが、団子には羊毛や唐辛子、磁器のかけらなど9種類の具が包まれたものがある。手に取った団子に何が入っていたかによって翌年の運勢を占うのだが、羊毛の場合は「優しい心ですごせる」、唐辛子は「性格も辛口になる」、炭は「心の真っ黒な年」、白い磁器のかけらは「心が純粋なまま過ごせる」、などとされている。
そして日本にも、食べ物を使って1年の運勢を占う占いがある。代表的なものは粥占いや豆占いであろう。
粥占いは場所によって筒粥、あるいは管粥とも呼ばれ、多くは各地の神社での神事として行われる。
これも場所によってやり方は異なるが、埼玉県秩父郡子鹿野町馬上につたわる「馬上のクダゲエ」の場合は、12か月を示す篠竹の棒12本を芯として、その周りに30種の穀物を表す30本の竹を巻き、さらにその外側に雨・嵐・世の中を表す3本、計45本の竹の管を束ねて鍋の真ん中に入れて粥を炊く。粥ができたら竹の管をひとつずつ割っていき、中に入った粥の数でそれぞれの月や、それぞれの穀物の収穫を占うというもの。
神社によっては、チーズ占い同様にカビの生え具合で天候などを占うものもあるようだ。
また、豆占いは節分や小正月の行事として行われ、囲炉裏に火を燃やし、灰を掻き出してから、12か月を表す12個の豆を並べる。一定時間経過後、豆の焦げ具合から1年の天候を判断する。判断は、黒く焦げたら日照り、白かったら雨というようなものだ。
この豆占いも神事として行われることがあり、近江八幡市安土町内野の八幡神社では「豆焼き神事」とも呼ばれ、囲炉裏の代わりに七輪に乗せて熱くした鉄板を使う。
さらに、日本にはかつて煎餅を使った占いも存在した。
これは、神社などでくばられていたおみくじ入りの煎餅で、辻占煎餅と呼ばれていた。この辻占煎餅をアメリカに持ち込んだのが山梨県出身の庭師萩原眞(1857~1925)であり、彼がサンフランシスコで経営していた喫茶店でこれを提供したところ評判となり、やがてサンフランシスコの中華料理店が真似したことから、今では世界中の中華料理店でフォーチュン・クッキーとして知られるようになった。
【参考】
『太陽』1979年12月号(平凡社)
『Divining the future』(Eva Shaw/Gramercy)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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