君は怪談レジェンドから案内状を継承されたことはあるか?/大槻ケンヂ・医者にオカルトを止められた男(11)
予告編でお腹いっぱい、むしろ内臓破裂の衝撃ホラー映画の思い出。令和では別角度から、映画がらみの怪奇現象がオーケンを襲う。
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文=大槻ケンヂ 挿絵=チビル松村
お化けが出る前兆は、ヒヤっとした空気や頭痛や嫌な匂いでもなく……「ヒュ~ドロドロ……」を期待してしまう。
子供の時のことだ。
夜、一つ歳上の兄とテレビを観ていたら急に家の灯りがバン!と消えた。当時ちょうど「悪魔の棲む家」(80)という霊現象の起こる家の映画が流行っていた頃だから『え! 大槻家にもついに!』とそれは兄弟大いに震え上がったものだ。
後にそれはブレーカーが落ちたことが原因とわかるのだが「霊だよ! これ霊だよ! やばい!」と弟は兄にしがみついた。すると兄が真顔で弟に言ったのだ。
「大丈夫だ!まだ太鼓が鳴っていない」
昭和の怪談と言えば幽霊が出る直前にドロドロ~と太鼓が鳴ってムードを上げるのが定番であった。それはあくまで演出的効果音なのであって霊現象そのものとは何も関係無いと思うのだけど『なるほど兄ちゃんの中では太鼓の音こそがオバケ登場の始まりという認識なのか』と闇の中で弟は妙に感心したものだ。
「三茶のポルターガイスト」事件においては、太鼓の音ではなく線香の香りがオバケ登場の始まりと認識してよいようだ……。世田谷区の三軒茶屋にある老朽化したビルに、ここ何十年、ほぼ毎日、幽霊が出現するのだそうだ。特にビル4階にある演劇稽古場「ヨコザワ・スタジオ」では、ラップ音やポルターガイストが頻発し、置いてあるボードが揺れ時計が飛び、そして天井その他の場所からにょき~っと白い手が現れて、5本の指をくねらせてまた天井その他にす~っと引っ込んで消えて行くというのだ。そしてそれらの心霊現象が起こる時、必ずあたりには線香の香りが立ちこめるのだという。
「…線香…で、銘柄はなんですか?」
先日イベントでお会いしたオカルト編集者の角由紀子さんに僕は思わず尋ねたものである。
角さんはヨコザワ・スタジオの怪事を御自身のYouTubeなどで取り上げた方で、これは大評判を呼び、今年ついに角さんメインで映画化。「三茶のポルターガイスト」として劇場公開された。驚くべきことに、映画には実際の各怪現象が全て映像に捉えられている。しかし、線香の香りまではそりゃ映像だから不可能だ。だから、尋ねた。
「角さん、幽霊って具体的にどこの線香使ってるんでしょうね。やっぱり『青雲』とかですか」
角さんは「さぁ」と一呼吸置いてから「『青雲』とかじゃないですかねぇ」と答えてくださった。
★この続きは二見書房から発売の書籍「医者にオカルトを止められた男」でお楽しみください。
https://www.futami.co.jp/book/6281
大槻ケンヂ
1966年生まれ。ロックミュージシャン、筋肉少女帯、特撮、オケミスなどで活動。超常現象ビリーバーの沼からエンタメ派に這い上がり、UFOを愛した過去を抱く。
筋肉少女帯最新アルバム『君だけが憶えている映画』特撮ライブBlu-ray「TOKUSATSUリベンジャーズ」発売中。
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