昭和子ども交霊術ブームと「脱法コックリさん」の進化/初見健一・昭和こどもオカルト回顧録
昭和の時代、少年少女がどっぷり浸かった怪しげなあれこれを、“懐かしがり屋”ライターの初見健一が回想する。 今回は、古典的交霊術が小学校カルチャーに適応して育まれた「コックリさん」を振り出しに、その派生
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構成=いわたみどり 撮影=中園貴志
取材協力=キングレコード、大怪獣サロン
ムー愛読者であり、一時は「オカルトにのめりこみすぎて医者に止められた」過去を持つ重篤読者、大槻ケンヂ氏が、ムーPLUS初登場。ムーでの取材は約10年以上ぶりとなる。 ノストラダムスの大予言が外れた”ネタバレ”時代以降の2000年に結成された「特撮」のニューアルバム「エレクトリック ジェリーフィッシュ」のリリースを記念し、”2021年のムーの読み方”を聞いた。 (2021年5月3日記事の再録
目次
――子供時代からの生粋のムー読者だということですが、2021年の現在はどんなふうにムーと向き合っているのかをお伺いしたいんですが。
大槻 僕ね、ムー読者の中でもかなり読み込んでいるほうだと思いますよ。なんせ、線を引きながら読んでますから。赤線だの黒線だの緑線だの……。
とにかくムーって文字数が途方もないでしょう。専門用語もたくさん出ていて、かなり難解な雑誌だと思うんですよ。さらに、たまに「読者はこんなことはご存知でしょうが…」の一言から一気にバーっと本題が始まる記事とかあるじゃないですか。いや、全然存じ上げませんけどねって(笑)。だから、わからないことや重要なことは線を引いてチェックしつつ、あとでネットで調べたりして真剣に熟読してるんですよ。
――そんなに熱心に読んでくださってるとは! 実は作り手側からしても、「ここまではムーの読者なら理解しているのかなぁ、もう少し詳しく説明したほうがいいのでは」と思うこともよくあります。
大槻 いや、もうそこらへんはすっ飛ばしてくれていいです。検索しながら読むというのも楽しみの1つでもあるんで。
ここ最近の記事では(2021年)4月号の巻頭特集「宇宙に時間は存在してない」は、どうかしてましたね(笑)。ループ量子重力理論とか相対性理論やら波動関数……なんだそりゃ、でした。凄かった。理解するのにかなりの体力使いました。そもそもあれを巻頭に持ってくるという選択をしたこと自体が凄いことですよ。
――総力特集でもないとわかりづらくなるんですよ。説明するのに2万字は必要な内容なんで。たとえば6000字くらいにすると、まったく説明できずに中途半端に終わってしまったかもしれない。
大槻 なるほど。確かにそうかも。それにムーは文章で解説していく雑誌ですしね。それにしてもムーは解明されている科学と疑似科学とスピ系のオカルトと呼ばれているものをごった煮してうまいこと組み合わせていきますよね。「それでつまりはこうなのである!!……かもね」って(笑)。
――大槻さんはどんなスタンスでムー的なことと付き合っているんですか?
大槻 ビリーバーでも信者でも懐疑派でも肯定派でも否定派でもなくて、無責任な面白がり派ですね。
たとえば「有明UFO接近遭遇事件の謎」(2018年8月号)という記事をよく覚えているんですけど、宇宙人はどうやら「有明海の海苔の培養液」を求めて飛来してきてるらしいと。これはやられましたよね。ショッキングでした、思いもよりませんでした。なんせ海苔ですからね(笑)。
宇宙人にとって海苔がどう活用されているのかわからないけれど、どうやらそうらしい。で、「海苔かよ!」と突っ込みつつも「でもひょっとしたらそうかもしれない」と許容する。この突っ込みと許容がいまの僕の居心地のいいスタンスなんじゃないかと思います。他の真面目な読者のみなさんには、半端者と言われてしまいそうですけど。
――でも実はこんなことを信じてますとか、個人的にはこういう解釈してます、みたいなことがあったりしませんか?
大槻 特にはないんですけど、ただ、宇宙人や幽霊、妖精や妖怪、とにかくこの世のあらゆる不可解な現象は、人類ではない「なんだかわからない存在」が意味不明のイタズラを仕掛けているだけなんじゃないかなとよく思います。UFOや幽霊もなぜ出てくるか真意がわからないじゃないですか。なぜパッと出没して消えるのか。ただ豆腐を運んでくる妖怪とかも、結局なにがしたいのか目的がわからない。
だから彼らにはもともと目的なんかまったくなくて、単にちょっかいをかけているだけ。意味がわからないのは意味がないからと、そんなことを考えたりしますね。
――それって意外と当たっているかもしれませんね。ところで大槻さんは一時期オカルトから距離を置いていた疑惑があるんですけど?
大槻 秘密にはしてないんですけどね、それ本当です。精神的に不安定になってた時期があって、そのときもムー的なことにすごくハマっていたんですけど、診ていただいていた医者から「大槻さんね、まずはオカルトとかUFOとか、あまり興味持たないほうが心が安定しますよ」と言われて、「ですよね~~」と、素直に納得してオカルト全般から離れたの。
でもどうしても好きで、しばらくしてから先生に「やっぱりオカルト好きなんですよ。また興味持ったら駄目ですか?」と聞いたんです。そしたら「まぁ~じゃあ、とりあえずUFOくらいなら夢があるからいいんじゃないですか」って。
そーゆーわけでUFOから復活したんですけど、その先生との会話があまりにも面白かったので、「オカルトをドクターストップされた男」というキャッチフレーズを自分でつけてました(笑)。
――大槻さんの作る楽曲に、ムーが影響を与えていることってありますか?
大槻 もちろんです。僕ね、たぶん世界でもオカルト用語を1番歌詞に取り入れているミュージシャンだと思うんですよ。
筋肉少女帯と特撮にもけっこう入っているんですけど、オケミスというソロ活動の「アウトサイダー・アート」というアルバムは、退行催眠や幽霊や人体自然発火といったオカルトのことばっかり唄っています。そんなのを歌詞にしている人はそんなにいないだろうなぁ~と。
http://www.okenkikaku.jp/contents/209580
――でも今回の特撮のニューアルバム「エレクトリック ジェリーフィッシュ」はあえてオカルト用語を使いすぎないようにした……と聞いていますが?
大槻 そうなんですよ。できるだけ抑えて抑えて、でも実はそこに僕のオカルト観が隠れているんです。
全体のテーマは「終わりはわかっているのに、終わりが見えない不思議な世界に僕たちは生きている」。
どんな人でも最終的にはみんな死ぬとわかっているのに、でも人生自体の終わりは見えない。やがては死ぬというネタバレはされてても、いま現在はコロナ禍や災害やいろんな事件があって、終わりの見えない日々を送っている不思議。そんなことを描きたいなと思いました。
こじつけでもなんでもなく、それって僕のオカルト観と一緒なんです。
たとえばムーを購読するじゃないですか。「異星人の正体は日本人だった!!」とか「地球人は宇宙人だった!!」やら「グレイは河童だった!!」とかね、凄い特集記事がある(笑)。
だからって、河童や宇宙人にインタビューをした記事が出るわけじゃない。そんなことはわかっているのに、でも読んじゃう(笑)。
解明されていない=終わりが見えない。
ずっとそんなことが続く、To Be Continuedな日々。
だけどそこが面白くていいんじゃん♪ってことですね。
収録曲「ミステリーナイト」が「ムー」Official Inspired songに決定! インタビューでも言及された”ネタバレしても終わらない”メッセージを込めた「ネタバレの世界で生きてくための方法」も含めた全11曲が収録される。https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICS-93993/
<特報>特撮「ミステリーナイト 」×月刊「ムー」スペシャルリリックMV初公開!
<特報>特撮『ミステリーナイト』×月刊「ムー」 ダブルネームグッズ情報
「ムー」のカバーアーティストであるzalartworks氏がコラボビジュアルを担当! 楽曲のイメージを受けて手掛けたイラストのコラボグッズがリリース決定。2021年5月15日より始まるツアーの会場と、ニューアルバムの発売を記念して5月12日〜5月26日まで墓場の画廊(中野本店)で開催される記念展にて販売予定だ。
特撮『ミステリーナイト』×月刊『ムー』ダブルネームグッズ デザイナーインタビュー
https://evilamag.com/special/post/2759/
大槻ケンヂ
1966年生まれ。ロックミュージシャン、筋肉少女帯、特撮、オケミスなどで活動。超常現象ビリーバーの沼からエンタメ派に這い上がり、UFOを愛した過去を抱く。
筋肉少女帯最新アルバム『君だけが憶えている映画』特撮ライブBlu-ray「TOKUSATSUリベンジャーズ」発売中。
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