妖怪好きは民話を集める…「ひどい妖怪を語る会」に至る”お化けの縁”/村上健司
ムー公式web最長連載「妖怪補遺々々」が100回を通過! 記念企画として「ひどい民話を語る会」とのコラボ対談を実施した。お化け盟友・村上健司が黒史郎を語る。
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「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。
目次
藤巻一保 著
「八紘一宇」という教義に囚われ、日本を破滅へと導いた「神懸かり軍人」たちの人物伝
かつて本欄で、藤巻一保氏の『偽史の帝国』をご紹介した。日本こそが全世界の「国家・民族を基体とする一大家族世界を肇造する」歴史的使命を帯びている、そして日本は「いかなる時代であっても天孫族の血を引く天皇によって治められねばならない」という「特殊なイデオロギー」がいかにして作られ、どのように運用されてきたのかを、綿密に検証した名著である。
同じ著者による本書『戦争とオカルティズム』は、この『偽史の帝国』の姉妹篇であり、表裏一体を為すもの。「八紘一宇」という異常な教義に囚われ、日本を破滅へと導いた「神懸かり軍人」たちの人物伝である。
『シオン賢者の議定書』に代表されるユダヤ脅威論から、それとはまったく相容れないと思われる日ユ同祖論、さらには『竹内文献』を始めとする古史古伝、「古神道」や大本などの新興宗教、そして心霊主義……彼ら「神懸かり軍人」たちの思想的バックボーンは、まさに「渾沌」。
だが、彼らはいずれも、「世界全人類の祖国」たる「神国日本」が八紘一宇を成し遂げることで、世界の恒久平和と繁栄の神代が再現される、という「戯画にも等しい言説」「ファナティックな主張」を体現する存在であった。
本書はそのような「神懸かり軍人」17名+1名を取り上げ、その生涯と思想を徹底的に掘り下げることで、かの時代を浮彫にしていく。
だが、ことはその時代のみには留まらない。「国民には天皇は神だと徹底して刷りこむ一方で、実権を握る特権層は、天皇から言葉を奪い、裏で操るという二重構造をつくりあげてきた」が、その構造は、今日に至ってもなお、厳然と続いているのである。
そして著者は、今なお天皇を利用しつづけている者たちの正体をこそ問わねばならぬと、訴えかけるのだ。
なお本書は、本誌月刊「ムー」誌上に、2015年から2019年まで連載された「神国日本の歴史群像」を元に、大幅に加筆・再構成したものである。古参の本誌読者であるなら、本誌でも異彩を放っていた、あの卓越した連載が、こうして一冊の書籍としてまとめられたことに、快哉を叫ばれよう。
高木道郎 著
「海での怪異」にまつわる昔話や体験談
地球表面の3分の2を占める、広大な海洋。そこにはいまだ、人知の及ばぬ領域がある。はるか宇宙の彼方よりも、むしろこの地球の深海のほうにこそ、多くの謎が秘められているといっても、過言ではないだろう。
何しろ本書によれば「海というフィールド自体が大気のある地上や空とは別のシステムで成り立っている『異界』」に他ならないのだ。
本書の著者・高木道郎氏は、「釣り具とカメラを手に」全国を巡るフリーランスライター。『磯釣りをはじめよう』『釣りはサイエンス』などの釣り関係の著作で知られ、釣り雑誌の編集も手がける。
本書は、そんな根っからの釣り師である著者が、全国の船宿の主人や、釣り人たちから採集した「海での怪異」にまつわる昔話や体験談を集めた、興味深い読み物である。
著者によれば、かつては「釣行に欠かせないイヴェント」であった船宿での昔語りも、時代の変遷とともに、次第にその語り部を、語り継ぐ場を失いつつある。そこで著者は、それらの物語が「干からびて、砕けて、消える前に掬い上げて『標本化』しようと思った」。
本書で語られる51編の物語は、たしかに「なんの役にも立たない」ものかもしれない。
だがそれでも、「その話が創り出す余白みたいなものが日常をかろうじて支えている」という著者の想いには、本誌読者も、共感するところ大であろう。
矢追純一/保江邦夫 著
おなじみの著者ふたりが、人生やUFOを語り尽す
かたや、かつて日本テレビの「11PM」や「木曜スペシャル」などでUFOや超能力、超常現象をテーマとした人気番組を次々と世に送り出し、一世を風靡した名物ディレクター・矢追純一氏。
かたや、UFOや神事などにも造詣の深い世界的な理論物理学者・保江邦夫氏。
本書は、このおふたかたが、人生やUFOについて語り尽す対談本。月の裏側に反重力元素がある(だから月は常に同じ面を地球に向けている)とか、クルマの運転がそのまま瞑想になるとか、かつてトヨタ自動車の内部にUFO製作プロジェクトがあったとかいった軽い話題に始まり、2039年のシンギュレーションで人類が滅亡するとか、地底人がUFOを飛ばしているとか、電気自動車に対する文句とか、芸者遊びとか、あのユリ・ゲラーを連れて夜の銀座に繰り出す話とか、ともかくどこを取っても興味深い話がぽんぽん飛び出す。こうして楽しくおふたりの話を聴くうちに、いつしか読者は「極上の人生」を生きるコツを身に着けているのだ。
それにしても、あの矢追純一氏が90歳近いお歳であるにもかかわらず、こうして旺盛な活動を続けておられることに、何よりも感銘を受けた。「目標に向かう見えない流れに身を任せれば、結局、思い通りの人生を生きることができるのだ」。まさに「極上の人生」ここにあり、というところだろう。
秋山眞人 著/布施泰和 協力
UFOとコンタクトする、具体的な方法もわかる!
この世界でUFOとコンタクトしたことのある人は「世間の人が知っている以上に、膨大な人数に及ぶ」と著者は断言する。
本書は、実際にUFOとコンタクトした人、またはそれを望む人向けに、そのすばらしい体験をどのように人生に活かしていくかを説く、異色の案内書である。
著者の秋山眞人氏は、日本を代表する超能力者であり、UFOコンタクティ。これまでに「何千回」となくUFOと遭遇しているという。
そんな著者によれば、UFOとの遭遇による「コンタクト・インパクト」は文字通り、人生を激変させるほどの衝撃力を持ちうる。たとえばUFOとの接触を機に「非常に天才的な能力を発揮」したり、「教えを説くように」なった人々がそれだ。また中には、宇宙とひとつになる感覚である「ワンネス」を頻繁に経験するようになったり、夢の中でUFOからの啓示を受けるようになったコンタクティもいる。
このようにいうと、だれもがUFOとコンタクトしてみたくなるだろう。最終章では、そのための具体的な方法が説明される。
それにはまず、気持ちが優しくて勇気のある人々と5人組を作る。このグループで深夜(午前3時ころ)にパワースポットを訪ね、簡単なキャンプをしながら、リラックスして空を眺めるのだという。実践にはそれなりの覚悟と準備と移動手段、それに良好な人間関係があるとよいだろう。
エリコ・ロウ 著
脳力開発に役立つテクニックを提供する実用書
かつては「脳の神経細胞は通常の細胞とは異なり、一度死ぬと、二度と再生しない」などといわれていた。
だが、脳研究の進展とともに、実際には脳内の神経細胞も新生していることが判明した。さらに近年では、脳は「可塑性」、すなわち「脳神経系が内在的または外界からの刺激に反応してその構造、機能または接続を再編成することにより、活動を変化させる能力」まで備えていることが明らかとなったのである。しかもその能力は、生涯にわたって保持できるというから、何とも朗報である。
本書は、脳の可塑性に関する数多くの英語の研究論文に基づき、読者自身の脳力開発に役立つ、具体的なテクニックを幅広く提供する実用書。
脳を活性化させるのに効果的な食事法から、睡眠の効用、認知力を向上させる職業、ストレスや孤独が脳に及ぼす悪影響、子供の頭をよくする法則、さまざまな瞑想法とその効果、脳の最適化のための具体的テクニック、そして脳のアンチエイジングの実際まで、有用な情報が満載されている。
著者エリコ・ロウ氏は、米国シアトル在住のジャーナリストで、マインドフルネス&ウェルネスのトレーナーでもある。著書の『太古からいまに伝わる不滅の教え108』は、かつて本欄でもご紹介した。本書は、同書とはまったくテイストの異なるハードな内容であるが、どちらも人生の伴侶とすべき良書である点にかわりはない。
横澤丈二 著
三茶の雑居ビルで展開される、信じがたい心霊現象
東京は世田谷区の繁華街・三軒茶屋、通称「三茶」。今でこそ下北沢と並ぶお洒落スポットとして老若男女の人気を集めているが、戦時中には軍事施設が集中していたために重点的な攻撃の標的となり、東京大空襲を超える焼失被害を受けたという過去もある。
そんな三茶の駅から2分という好立地に居を構える「ヨコザワ・プロダクション」。本書の著者である横澤丈二氏が主宰する、アクターズスタジオである。だが何と、このスタジオの入居する雑居ビル、標題通り「日本一の幽霊物件」なのだ!
入居早々、横澤氏はこのビルのエレベーター内で、黄色いレインコートを着た幽霊と出くわす。氏が声をかけると、幽霊は首だけを回転させて氏のほうを向いた。その「どこに鼻と口があるのかもわからない真っ黒の顔」の奥には「キラリと光るふたつの目があった」。
もうこの時点で、勘弁してくれといいたくなるが、怪異は止まらない。裏階段の手摺りを「老婆の生首だけがスライドして4階まで追いかけて」くるわ、スピーカーから長さ6メートルにも及ぶ腕が伸びてきて劇団員の肩に乗るわ、別の劇団員の背中から半透明の白い大蛇が生えてくるわ。もうにわかには信じがたい、心霊現象のオンパレードが展開されるのである。
なお、一連の怪現象の一部は実際に撮影されて映画化された。好奇心旺盛な方には、おすすめしておこう。
真貝寿明 著
宇宙には物理法則を守る「検閲官」が存在する!?
ノーベル賞物理学者ロジャー・ペンローズが1960年代に発表した「特異点定理」は、この宇宙にはあらゆる物理法則が破綻をきたす「特異点」が存在することを証明した。この特異点が、ブラックホールの中に隠されているうちは問題はないのだが、厄介なことに特異点の中には「裸の特異点」といって、ブラックホールという「服」を着ていないものもいるらしい。
そこでペンローズは、この宇宙には物理法則を守るため、裸の特異点を取り締まる検閲官のようなものが存在すると考えた。これが「宇宙検閲官仮説」である。
本書は、この「宇宙検閲官仮説」を軸に、相対性理論、ブラックホール、膨張宇宙、そして「宇宙検閲官仮説」の副産物として登場した、新たな物理学の進展などのトピックを紹介する啓蒙書である。
一般的なブルーバックスの流儀に反して(?)、難解な数式がてんこ盛りで、文系の人はこれだけでアレルギーを発症してしまうかもしれないが、著者自身が「数式はすべてイメージとして読み飛ばしていただいても話はつながっています」と述べてくれているので、少し安心である。
数式含め、本書の内容を完全に理解するには、数学や物理学の博士号くらいは必須であろうが、著者の平易で軽妙な語り口に騙されて、わかった気になるだけならだれでもできる。一級の知的エンタテインメントとして挑んでみるのも乙ではないか。
(2023年6月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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