<読者投稿>幽霊画に描かれていた女性が掛け軸を抜けだし、私の元へ!?

イラストレーション=不二本蒼生

関連キーワード:

    読者投稿から気になるものをピックアップ!

    髙田孝之/栃木県

     大学生のときに、お化け屋敷でアルバイトをしていたときのことです。
     郊外にある小さな遊園地に設けられたお化け屋敷は古くてちゃちなものでした。
     私が担当するろくろ首も、ひと目で人形とわかる代物で、それをうしろからピアノ線で操作するといった簡単なものでした。
     思ったとおり客の入りは芳しくありません。私は初日から嫌気が差していました。

     営業時間終了間際、ひとりの女性がお化け屋敷に入ってきました。薄暗いところで見ても、かなり美人なのがわかります。
     それ以来、彼女は毎日、夕方になるとお化け屋敷にやってくるようになりました。
    “こんなお化け屋敷のどこがおもしろいんだろう”
     そう思いつつ、彼女がやってくるのを心待ちにするようになりました。
    “こんなバイト、いつ辞めてもいい”
     常々、そう思っていた私は、意を決して彼女に声をかけてみることにしました。
     待ちに待った彼女がやってきたので、私は竹藪から飛びだし、「あ、あの……」
     と、声をかけました。彼女は間近で見てもやはり美人です。
    「ここでバイトをしています。毎日、あなたのことを見ていました。よかったら食事でもごいっしょに……」
     われながら恥ずかしくなるような下手な誘い方をしてしまいました。
     返事はありません。しかし、彼女は微笑んでいるように見えました。
     私は吹きだした汗をタオルで拭きつつ、再度、彼女に顔を向けたところ……彼女の姿が見あたりません!!
     あわてて周囲を捜しましたが、やはりどこにもいませんでした。
     ちょうどそのときお化け屋敷の責任者がやってきました。そして、
    「さっさと片づけをして」
     と、いったため、
    「でも、まだ女性のお客様が中に残っていますよ」
     と、答えました。
    「そんな人、知らないよ」
     そういいながら責任者は片づけを始めます。仕方なく私も従いました。
     お化け屋敷内のお堂の掃除に取りかかったときのことです。私の体がその場から動けなくなりました。
    「幽霊画だよ」
     お堂の掛け軸に描かれていたのは、長い髪をした着物姿の美しい女性の横顔でした。それは間違いなく私が声をかけた女性でした。
     なんと着物の下に足がありません。
    “あの女性は、毎日、掛け軸の中から抜けだしていたのか!?”
     掃除を終えたあともずっと落ちつきません。ようやくアパートまでたどりつき、重い足どりで鉄骨の階段を上りました。
     ふと自分の家の玄関前を見やったところ、なんとそこに例の幽霊画の女性が立っていたのです!!
    「誘ったのはあなたよ」
     まるでそういっているかのようです。しかも微笑んでいます。
     恐ろしさのあまり、私はその場に座りこんでしまいました。そして、手を合わせて懸命に『般若心経』を唱えていたのです。

     われに返ったときには、女性の姿はどこにもありませんでした。
     その日を境に、お化け屋敷のバイトを辞めたことはいうまでもありません。

    (本投稿は月刊『ムー』2026年10月号より転載したものです)

    関連記事

    おすすめ記事