<読者投稿>深夜、聞こえてきたのは無邪気に笑う座敷童子の声か?

イラストレーション=不二本蒼生

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    丸岡由典/青森県八戸市

     平成29年12月上旬、家族でとある温泉旅館に宿泊したときの話です。

    「ゆったり家族旅行がしたいわね」
     このように妻と母がリクエストしたため、行く場所をどこにしようか私は悩んでいました。そんなとき、「座敷童子の住む旅館がいい」
     と、妻が提案しできたのです。
     そこは有名な温泉旅館であり、この手の話が好きな妻らしい提案だったといえるでしょう。
    “人気の宿だから満室だろう”
     そう思いつつもダメ元で旅行の1週間前に連絡してみたところ、
    「その日は、少々、空いております」
     との返事。当然、即決しました。
     出発当日、大喜びしながら私たち3人はその旅館へ向かいました。
     車で長めのドライブを経て到着。旅館はとても温かみのある落ちついた佇たたずまいをしています。
     館内を見まわっていたところ、共用の居間へ案内されました。
     入ってまず目に飛びこんできたのは立派な掛け軸です。床板にところ狭しと並んだ小さなおもちゃ類にも目がいきました。
    「なんか雰囲気あるよね」
    「おもちゃをお供えしていく方々が多いんだろうね」
     などといいながらその場で家族写真を撮りました。
     その後、温泉や食事を心ゆくまで堪能し、3人とも上機嫌です。
     やがて夜が深まってきたので、
    「さあ、寝ようか」
     といい、左側に妻、右側に母といった具合で川の字で床に就きました。枕元にわずかな明かりを灯したまま。
     しばらくして私は目が覚めてしまいました。まだ夜明けまではたっぷり時間があります。
    “普段なら朝まで起きない自分が、
    今日に限ってなぜ?”
     そう思いながら布団の中で左向きの姿勢を保っていました。
     そのときです。みぞおちにカリカリカリッと、3度、指のような何かでくすぐられる感覚が走りました。
    “えっ!?”
     驚いて布団をまくって中を確認してみましたが、だれも何もいません。
    両脇にはスヤスヤと寝息を立てて眠る妻と母がいるだけです。
    “今のはなんだったんだろう?”
     元の体勢に戻り、寝なおそうとしたその瞬間、今度は右の耳元で、「あはははっ!」
     と、5~6歳の子供が発するような無邪気でふわりとした笑い声が聞こえました。
     たまらず私はガバッと起きあがりました。両脇で眠っているふたりは相変わらず熟睡しています。
     部屋の様子を見まわしても、気になる点はいっさいありません。
     モヤモヤしながらも心を落ちつけようとしているうちに、いつしか眠りに就いてしまったようです。

     夜中、このようなことがありましたが、朝の目覚めはスッキリそのもの。これは意外でした。
     朝食の際、昨晩のことを妻と母に話したところ、
    「座敷童子があなたのところに来たんじゃないの?」
     と、冗談半分の返しをされてしまいました。
     じつはそのとき妻は妊娠中で、大きなお腹をしていました。
    “もしかすると赤ちゃんが無事に産まれてくるように、座敷童子がおまじないをかけにきてくれたのかもしれない”
     などと、真剣に想像する今日このごろです。

    (本投稿は月刊『ムー』2026年10月号より転載したものです)

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