伝説の聖痕者の像が血涙を流した! 「奇跡」認定に動かないバチカンの慎重姿勢の謎

文=遠野そら

関連キーワード:

    かつて聖痕現象で奇跡の体現者となったピオ神父の像に新たな異変が起きた。だが世界を憂う血涙を取り巻くバチカンの動きに疑問も集まっている。

    聖痕(スティグマ)伝説のピオ神父の像に異変

     イタリア・カンパニア州カザルバ地区の教会で、神の奇跡をも彷彿とさせる聖像の『血涙現象』が確認され、大きな話題となっている。

     異変が起きたのは、2026年4月18日夕方のこと。人口約400人ほどの小さな村・カザルバ村の中心に建つサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会で、礼拝に訪れていた信者がパドレ・ピオ神父像の左目から血のような赤い液体が流れていることに気がついたのだという。

    血のような赤い涙を流す聖パドレ・ピオ像。画像=https://en.lasicilia.it/news/current-affairs/3041828/padre-pio-cries-in-casalba-the-mystery-of-the-red-tear.html

     そのピオ神父像は、教会入り口付近に設置されていたことから、発見当初は塗料の剥がれや汚れの付着などが疑われたそうだ。だが、司祭が布で像の顔を拭いても赤い痕跡は消えず、さらには教会内の防犯カメラの映像を確認しても人為的な細工やいたずらを示す根拠は一切確認できなかったという。

     司祭はこの出来事についてあくまでも「自身の見解」と前置いたうえで次のように語っている。

    「防犯カメラ映像を過去1か月分確認しました。ですが聖ピオ像の足に触れた信者以外、聖像に接触したものは確認できませんでした。カメラの角度から残念ながら赤い筋が生じた瞬間の特定には至りませんでしたが、私はこの現象を天からの啓示として受け止めています」

    村のシンボル的存在だというサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会。画像=Wikipedia

     実際に画像を見てみると、聖ピオ像の左目から頬にかけて液体が流れたような痕跡が確認できる。その水筋は、まるで目縁から涙があふれ出たように見えるが、決定的な違いはその色だ。まさに血液をも思わせる茶褐色なのである。

     現在は、紫外線による表面塗料やコーティング剤の溶け出しや、像内部に仕込まれた芯材のサビなど多角的な調査が進められているというが、その一方で、この現象を単なる物理的異変ではなく、聖パドレ・ピオからの「徴(しるし)」として受け止める人々も少なくはないという。

     イタリア出身のカプチン・フランシスコ修道会の司祭であるパドレ・ピオ神父は、キリストが十字架上で受けた傷と同じ部位に『聖痕(スティグマ)』が現れたとされる。1918年9月、第一次世界大戦が終結に向かう混乱のさなかに起きたそれはカトリック教会のみならず広く奇跡として知られた。
     歴史上、聖痕を受けたとされる人物は少なくはないものの、ピオ神父はまさに超越した存在であった。聖痕から流れ出た血は、バラやユリを思わせる芳香が漂っていたとも伝えられている。
     他にも奇跡的治癒、未来予知、同じ瞬間に遠く離れた2つの場所で目撃される「バイロケーション(分身)」など、ピオ神父には聖痕者というだけでは説明がつかない超常的な逸話が数多く語り継がれてもいる。

     だからこそ、ピオ神父の聖像に涙を流すような赤い筋が現れた——聖像になっても我々人類に何かを伝えようとしていると考えるのは筆者だけではないだろう。

    聖痕が現れた翌年(1919年)のピオ神父。生前のピオ神父は日々耐え難い痛みに襲われていたという。画像=https://en.wikipedia.org/wiki/Padre_Pio

    「奇跡」認定に慎重なバチカンの真意は?

     ただ、繰り返しになるが、バチカンはまだ今回の血涙現象を「奇跡」とは認めていない。

     振り返れば、2024年にバチカンは約半世紀ぶりに「超自然的とされる現象」に関する調査基準を大幅に改定している。「奇跡」の新たな判断基準を発表するなど、現象そのものだけでなく、信仰上の影響や教義との整合性を含め検討する仕組みへ変わったことはご存じの方も多いだろう。
     これまで血涙現象の他にも、聖母出現や幻視などが数多く報告されており、近年では、ドイツ西部ノルトライン=ヴェストファーレン州の小さな村・ジーヴェルニヒで、2000年から聖母出現をめぐる現象が報告され大きな話題になっている。これは3人の子どもの母親である女性の前に、聖母マリアや幼子イエス、大天使ミカエル、さらには複数の聖人が繰り返し現れ、平和への祈りと回心、そして世界へ向けた預言的な警告を受け取ったというものだが、2026年にはアーヘン教区が調査委員会を設置。現在もその真偽について慎重な検証が進められている最中だ。

    聖母出現を証言するマヌエラ・シュトラック氏。これまで神の慈悲が幾度となく掲示されたという。画像=https://www.kath.net/news/75396

     だからこそ、今回のイタリア・カザルバ村で起きたピオ神父像の血涙現象についてもその結論を急ぐことはできない。だが、少なくともひとつの問いを私たちに投げかけているのは間違いないだろう。『奇跡』とはいったい何を持って奇跡と呼ばれるのだろうか。今後の続報に期待したいと思う。

    遠野そら

    UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。

    関連記事

    おすすめ記事