人造人間から人工生命論へ「ゴーレムの生命論」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    ゴーレムの生命論

    金森修 著

    伝説上のゴーレムから、最新の人工生命論まで

     ゴーレム。よく知られているように、泥人形に術者が生命を吹き込んで作った人造人間である。
     本書は「〈人造人間〉ゴーレムという問題系にふさわしく、主として生物的偏差という異化効果に照らされて、その光の下で浮き彫りになる〈人間未満の人間〉たちの姿」を描こうとする試み。そして本書の論は「集中と深化という力線よりは拡散と接続という力線によって主導されている」。このような文体に陶然となる方は、迷わず挑んでいただきたい。

     著者によれば、ゴーレムとは「ユダヤ教やユダヤ文化と切り離せない」存在であり、それを本当に理解するには、ヘブライ語の習熟を序の口として、『トーラー』、『ミシュナ』、『タルムード』への沈潜など、「一生を要する作業」が必要となる。そこで著者は本書において、「ゴーレムそのものではなく、〈ゴーレム的なもの〉の輪郭を浮き彫りにするという作業」に徹する、と謙遜する。それでいて話は伝説上のゴーレムから、執筆当時の最新の人工生命論にまでおよぶのだから、読書の愉悦、ここにありといえる名著である。

     著者の金森修氏は、残念なことに2016年に逝去されたが、フランス哲学、科学思想史、生命倫理学などを専門とし、かつては東京大学大学院教授も務められた。本書は、2010年に平凡社新書として上梓された著作の再刊である。往年の澁澤龍彦や種村季弘のエッセイのファンの方なら、きっと気に入っていただけるだろう。

    平凡社/2145円(税込)

    (月刊ムー 2026年05月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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