伝説的アングラ劇団が再び動き出す! 「月蝕歌劇団・蠍座公演」が始動
「幻惑演劇実験集〜二千某年のドグラとマグラ」と題された実験的公演が気になる。
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奈良県の山奥には、鬼の子孫が営む宿坊があるという。超人を求めて宿坊を訪ねたタニシを、危機一髪のピンチが襲う!
仙人のようなおじさんの案内で、無事に鬼の子孫が営む宿坊に到着することができたタニシ。
宿坊とは、お寺や神社が参拝者のためにつくった宿泊施設のことで、前鬼集落の宿坊は修験道の修行者のための宿坊ということになる。
ご住職の五鬼助さんに案内していただいた宿坊・小仲坊がこちらだ。
宿泊者はこの広間で自由に布団をだして、自由に寝ていってね、というフランクなスタイルのお宿である。
宿坊の壁には、小仲坊を取材した新聞の記事がいくつも貼られていた。それらをまとめてざっくりとここの伝説を紹介すると……
飛鳥時代の伝説的な修験道の開祖・役小角は、その影響力の強さから時の為政者に恐れられ、伊豆大島に流されてしまった。しかし昼は島でおとなしくしながらも、毎日夜になると空を飛んで海を渡り、富士山で修行をするというたいへんな法力、呪力をもつ行者だった。
この役行者があるとき、生駒山で人々を苦しめる夫婦の鬼がいると知り、懲らしめにむかう。
行者は鬼夫婦のあいだの5人の子のうち、いちばん末の子を不動明王の法力で鉄の檻に閉じ込め、「お前たちが人間にしていることは、これよりも非道なことなのだぞ」と夫婦を諭した。
こうして鬼夫婦は今までの罪を恥じ、改心する。この鬼の夫が前鬼、妻が後鬼で、以後ふたりの鬼は役行者の従者として修行に付き従うようになる。また、役行者は5人の鬼の子たちに宿坊を営むことを命じて自らは唐の国(中国)に修行に旅立つのだが、その後も1300年にわたって子孫は行者の命をまもり、この地で宿坊を続けてきた。
その後、明治時代になって5つのうち4つの宿坊が絶えてしまい、ただひとつ残るのが五鬼助家の営む小仲坊なのである。
現在、4つの宿坊は跡地が残るのみだが、以前その宿坊跡で発見された古文書には、5つの家にはそれぞれ特化した5つの能力があったこと、つまり五鬼助家はこれこれ、五鬼熊家にはこれこれ、と各家で役割分担がされていたことが記録されていたという。
また宿坊はなくなったが、ほかの4つの鬼の家系もまだ続いていて、鬼の血を継ぐ5つの「五鬼○」さんたちのなかには、現在海外で活躍している方もいるのだそうだ。
この日、小仲坊に泊まったのはタニシひとりだったのだが、五鬼助ご住職のほかにもうひとり、小仲坊に立ち寄っていた人がいた。
その方は修験道の行者さんで、「第2の役行者」と呼ばれた明治時代の大修験者・林実利(はやしじつかが)の歴史を調べ、足跡を追っているという方だった。ある意味、超人化計画の先輩である。
そもそも、なぜ明治時代になって修験道が衰退してしまったのかというと、そこには明治新政府のとった政策が大きく影響している。明治政府は、宗教を国の管理のもとにおくため、修験道を禁教とし、修験の修行をすることを禁止してしまったのだ。
修験者は修行の道を捨てて一般人となるか、あるいは正式に僧侶か神職になるか、どちらかの道を選ばざるをえなくなる。修験道は存在そのものが呪いや迷信を扱うあやしい宗教、いわゆる「淫祠邪教」扱いされる時代となり、壊滅的な打撃を受けてしまったのだ。しかし、そんな時代でも堂々と修験道の修行を続けたというすごい人物が、林実利なのだ。
そして林実利もすごいが、そんなすごい人を追っている現役の修験者さんもすごい。さすがは修験道の霊場、そしてさすがは1300年も鬼の末裔が守り続けてきた宿坊、ここでは偶然そんな超人にも出会えてしまうのだ。
と、ひと通り五鬼の伝説と小仲坊の歴史について勉強したところで、そろそろ日暮れ。
夜は五鬼助さんも帰られ、帰るときに電源を落としてしまうのでそのあとは電気のない生活となる。もう部屋の電灯もつかないので、唯一のあかりである懐中電灯を消したら、こうなる。
たったひとり、山奥の宿坊で、真っ暗闇。
こうなると選択肢は「寝る」以外にないのだが、夜中に突然、謎の物音で叩き起こされてしまう。音の原因は不明だが、原因を探るのも怖い。
結局このまま寝ているほうが怖いので、日の出を待たずに帰ることにした。
昨日、あの仙人おじさんがご住職に差し入れていた高級食パンをさらにおすそ分けしてもらったものが今日の朝食となる。食パンをお遍路カバンにしのばせて、真っ暗闇のなかの出発だ。
季節は秋、夜明けは遅い。懐中電灯のあかりだけを頼りに、真っ暗な道を歩いていく。
道の途中では、突然目の前にこんなものが現れたりもした。
いかにも古そうな吊り橋。なんじゃこりゃ。よく見るとところどころ木が朽ちて穴があいている。通られへんわ! さすがにこの橋は使わずに、ちゃんとした道を歩きます。
トンネルに到着。行き道の軽トラでもここを通った覚えがあるので、ルートは間違えていない。よかった……。
さて、だいぶ歩いたところでようやく空もほんのりと明るくなってきた。ぼちぼちお腹も空いてきたので、ここらでちょっと休憩をとり、住職からおすそ分けしてもらった高級パンを食べることにした。
……と、ここで予想外の出来事が起こったのだ。
タニシがパンを食べていると、突然山の上のほうからドドドドド……とものすごい音がして、次の瞬間、巨大なカモシカがこの階段を横切って斜面を駆け下っていったのだ。
もしも、ご飯休憩を取らずに歩いていたら……あと数歩先に進んでいたら、タニシは思い切りカモシカの直撃を食らって谷底に転げ落ちていただろう。
文字通り、危機一髪で命拾いしたのだ。この高級パンのおかげで……。
ということは、このパンを住職に差し入れてくれたあの仙人おじさんのおかげだ!
軽トラで宿坊に送ってくれている間、仙人おじさんはずっと、
「お兄さん、宿坊に行こうなんてさ、役行者さんも喜んでるよ。嬉しいに決まってるよ。だからお兄さんね、絶対に行者さんに守ってもらってるからね」
といってくれていたのだが、この奇跡のカモシカ回避も役行者のご加護だったのだろうか。
そんなわけでどうにか命拾いしてさらに進むと、ようやく朝日も昇って川面がみえてくる。このあたりの川はなぜか深い緑色で、神秘的な美しさをしていた。
こうしてどうにかバス停まで帰り着き、タニシ超人化計画「鬼の子孫の宿坊を訪ねる」の巻も終了となった。……のだが、じつはタニシは宿坊で、鬼にまつわる気になる情報を入手していたのだ。
(つづく)
松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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