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◆戸木秀三郎 東京都練馬区
これは、同僚のKさんから聞いた話です。
プロ野球セ・リーグで、古葉監督率いる広島東洋カープが2年ぶり4度目の優勝を果たし、騒がれていた昭和59年(1984年)の出来事なので、もう随分と昔の話になります。
当時、Kさんはバーテンダーの仕事をしていたそうです。
昼すぎ、勤務する銀座の店へ出勤するため、住まいである東京・入谷の自宅マンションで身支度をしていたときのことです。
窓の外に小学3年生か4年生くらいの赤い野球帽を被った見知らぬ少年がいるのが見えたといいます。
特に違和感を感じなかったというKさんは、「学校に行かなくていいの?」と、その少年に向かって声をかけたそうです。
するとその少年は、「うん、僕はいいの!」といって、その場から去ってしまいました。
「あなた、いったいだれと話をしているの?」
そう声をかけてきたのは同じ部屋にいたKさんの母親でした。
その言葉を耳にし、はじめてKさんは、“あっ! ! なんかおかしいぞ”と、思ったそうです。
それもそのはず、そこはマンションの7階。しかもKさんのいる部屋の窓の外にはベランダすらありません。つまり人が立てるような場所など、どこにもなかったのです。
“あの赤い帽子を被った少年はだれだったんだろう。どうやって7階まで来ることができたんだろう。なんのためにあそこにいたんだろう”
つぎつぎと疑問がわいてきます。しかし、いくら考えても答えが見つかりません。
そうこうするうちに出勤時間が近づいてきたため、謎を抱えたまま職場へ向かったそうです。
いつものように仕事をこなし、夜中、仕事を終えたKさんが帰宅すると、彼の帰宅を待ちわびていたかのように、すぐさま母親が声をかけてきたそうです。
「昼間、あなたが部屋の中から声をかけていた小学生の男の子、いたわよ!」
母親の話は続きます。
夕方、近所の入谷市場で買い物を終え、家に向かって歩いていたときのこと、葬式を営んでいる家があったそうです。
何気なく家の中に視線を向けたところ、亡くなった人の遺影の写真が見えたのだとか。
その写真に写っていたのが、まさに真っ赤な野球帽を被った少年だったというのです! !
母親が近くにいた人に尋ねたところ、あの赤い野球帽を被った少年は、数日前、このすぐ近くで交通事故に遭い、亡くなったそうです。
Kさんみずから、「私は霊感が強く、それまでにも何度か霊を目撃したことがある」と、いっていました。
交通事故で亡くなった少年は、自分がもうこの世にいないという現実を理解できていないのではないでしょうか。どういうわけかだれも自分に気づいてくれない……。そんなふうに思っているのかもしれません。
だからこそ霊感の強いKさんの前に現れ、自分の存在を示したかったのではないか。私にはそんなふうに感じられました。

(本投稿は月刊『ムー』2026年04月号より転載したものです)
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webムー編集部
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