世界各地の天空神はなぜ「長頭」なのか? メソアメリカと日本に共通するトンガリ姿の謎/南山宏

文=南山宏

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    世界各地の古代史と神話で描かれる「長い帽子」姿は、人類史の謎を秘めた表現だった!?

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    トンガリ帽を被った〝天空神〟たち

     中南米大陸の先住民インディオたちは、北米のインディアンたちとまったく同様に、はるか大昔の祖先たちから代々、天空から降り立った神々にまつわるさまざまな神話伝説を語り継いできた。

     チリ最南端ティエラデルフエゴ島のセルクナム文化では、星々の世界から地上に降りてきて人類を創造したという天空神族“ホーウェン”またの名“光の人”の不思議な物語が伝えられている。光り輝く宇宙服でも着ていたのだろうか?

     中米(メソアメリカ)各地の先住民諸文化でも、天空から降りてきたさまざまな“神々”の物語が伝承されている。
     しばしば“空飛ぶ有翼の蛇”の姿に描かれるマヤ神話の創造神ククルカン(別名グクマッツ)は、天上から地上に降りてきて人類の創造に3度関わったとされる。
     この3度というのは、神が類人猿に遺伝子的改良を3度加えた結果、人類を創造したという意味か、そうではなく類人猿から人類を創造する計画を2度失敗して3度目にやっと成功したという意味か、あるいはまた、人類の種を3種類、つまり黒人、黄色人、白人を創造したという意味か、解釈は大きく分かれるだろう。
     ちなみにこの翼蛇神は、星空でいちばん明るく輝く宵の明星・明けの明星を司る金星神でもあった。
     アステカ神話の文化・農耕神ケツァルコアトルも、先行したマヤ文化を受け継いで、同じような翼蛇神に描かれることが多い。またギリシア神話のプロメテウスのように、天から人類に火をもたらして文明の発生を促進したとされる。

     マヤ神話やアステカ神話の伝承者たちが遺した数多くの写本(コデックス)のひとつ、ラミレス写本の中に描かれた槍と弓矢を持ち長衣を纏った戦士は、頭に真っ赤な“オセロコピッリ”を被っている。
     オセロコピッリとは、頭部に深く被る長い円錐形状のトンガリ帽のことで、アイスマンによれば、多くはジャガーの毛皮で作られ、宝石で飾り立てられていて、金星神を象徴するという。
     そしてアイスマンはこの奇妙なトンガリ帽こそが、“天から降りてきた神々”の異形ともいえる“長頭”を、象徴的に表現していると主張するのだ。

    セルクナム文化の天空神族ホーウェンは"光の人"とも呼ばれた(現代的に再現した写真)。
    トンガリ帽子の姿で描かれるアステカ神話の文化神ケツァルコアトル。

    驚くほど一致する世界各地の天空神の姿

     ここで再び新世界から旧世界に話を戻せば、北欧のスカンディナヴィア・ゲルマン民話にも“最高神オーディン(ヴォータン)”その息子“雷神トール(ウンラズ)”あるいは“ティル(ティヴァズ)”といった天空神が登場する。エジプト神話では、太陽神ホルスや天空神ヌート、さらに愛と美の女神ハトホルも、天に住居を構えているとの説がある。またインダス神話では、天神ディャウスピタやインドラ神が、ギリシア神話の最高神ゼウスと同様、稲妻を武器とする。また女神アディティは天空の諸神を産み落とした偉大な母神とされている。

     このように世界各地の神話伝承に登場する天空神は、まぎれもなく膨大な数にのぼる。そしてアイスマンの指摘するところでは、地球上どこでも古代の世界では、これらの天空神たちの図像学的特徴が、不思議なほど共通しているというのだ。

    「もちろん、現代の画家たちが描き、また彫像作家たちが創り出す“神々”は、ほとんど例外なく人間そのものの姿形に擬人化されるのが定石だ。しかし、どうやら古代世界の画家や彫像作家たちはそうではなく、もっと現実そのままの天空神を写し描くことに忠実だったようだ!」
     アイスマンはさらに指摘する。
    「そして実物の図像が無言で物語るように、古代人が忠実に描いた天空神の姿形が、世界中どこでも基本的に共通していたという驚くべき事実こそ、彼ら古代人が地球上のどこに住んでいようと、完全に同一の現実をおのれの目で見届けていたのだ、というこれ以上はない確かな裏づけになるだろう。
     なぜなら“神々”を描き、また象った肖像画や彫像のいちばん目につく共通の特長は、円錐形状のトンガリ頭か、太くて長い長頭か、あるいはそれらを明らかに模倣した円錐形状のトンガリ帽を被っているからだ!」

    『ラミレス写本』に描かれた、真っ赤なオセロコピッリ(トンガリ帽)を被る戦士。
    アステカ神話の、明けの明星(金星神)の頭部はトンガリ帽が強調されている。

    古代日本の「トンガリ頭」たち

     この点に関しては、実は古代の日本もまったく例外ではないと筆者が申し上げたら、読者諸兄諸姉はびっくりされるだろうか。

     だが、たとえば武人や神官や巫女らしい男女を型取った古墳時代の人物埴輪を見れば、それは一目瞭然だ。ほとんど例外なく異様な長頭型か円錐状のトンガリ頭か、さもなければそれを補うようにツバ広のトンガリ帽を被っているからだ。
     さらに古墳時代以降いつの時代でも、神社の神官や高位の身分の成人男子が、神聖な儀式に臨むさい着用する礼装で頭上に戴くいわゆる“ 烏帽子”は、まさしく引き伸ばされたような長頭型なのは実に興味深い。
     その古墳時代のはるか以前から伝えられてきた日本神話では、わが国最古の史書『古事記』『日本書紀』に登場する高天原(たかまがはら)が、文字どおり“天上の神々の住む場所”とされ、そこには天照大御神(あまてらすおおみかみ)を最高神とする天津神(あまつかみ)たち、すなわち八百万の神々がお住まいになっているとされる。

     いささか牽強付会と見なす向きもあるかもしれないが、ここでアイスマンの主張に密接に関連する超科学研究分野の主要仮説のひとつ、異星文明人が太古の時代、地球人類の誕生ないしは人類文明の発祥にひそかに干渉あるいは援助したと主張する「太古宇宙飛行士仮説(エンシャント・アストロノート)」をもちだすことをお許し願いたい。

     この仮説の視点に立って日本神話を解釈すれば、高天原こそは天空神(異星人)たちが地球との間を連絡艇で往復する宇宙基地か、あるいはまた、彼らがそこから発進した宇宙のどこか遠い太陽系に属する高度の文明惑星そのものを意味するのかもしれない。

     この想定をさらに押し進めれば、天照大御神という日本神話の最高神は、実はその発進した文明惑星の最高位クラスのリーダーか、あるいは少なくとも宇宙を渡る航宙船の船長クラスの高位の異星文明人だった、という可能性もなきにしも非ずになる。
     また、高天原の神々が地上の葦原中国(あしはらのなかつのくに)に降臨するには、途中に架けられた“天の浮橋”を必ず渡らなければならないとされるが、上記の天空神=異星人仮説にのっとれば、この天の浮橋はいわば、現実にわれわれの頭上遙かな宇宙空間を今この瞬間も周回しているISS(国際宇宙ステーション)に相当する宇宙施設ということになるかもしれない。
     ついでにいえば、『古事記』に記されたわが日本は“葦原中国”と呼ばれ、大国主命(おおくにぬしのみこと)に代表される国津神(くにつかみ)たちが、青人草(あおひとくさ)、つまり一般庶民の平和に暮らす豊饒な葦原中国を治めていたという。

     さらに日本神話を代表する“天孫降臨”の神話では、天照大御神の神勅により、邇邇芸命(ににぎのみこと)が三種の神器を携えて天の浮橋を渡り、葦原中国に降臨したことになっている。ちなみに須佐之男命(すさのおのみこと)はいささか乱暴な振舞いが過ぎたため、姉の天照大御神によって下界の葦原中国に放逐されるが、恐ろしい八岐大蛇(やまたのおろち)を退治して民の難儀を救ったおかげで、天照大御神の怒りがようやく解けて大団円となっている。
     付け加えるなら、もちろん須佐之男命も邇邇芸命も、地上の葦原中国に降臨する際には、天と地の間に架けられた天の浮橋(宇宙と地球を中継する宇宙ステーション?)を渡らなければならなかったのはいうまでもない。

    日本の古墳時代の人物埴輪は、なぜトンガリ帽や円錐帽を被っているのか?
    日本の武将が被る典型的な烏帽子。
    烏帽子(えぼし)形なりの日本兜。まさに長頭形だ。

    南山宏

    作家、翻訳家。怪奇現象研究家。「ムー」にて連載「ちょっと不思議な話」「南山宏の綺想科学論」を連載。

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