八百比丘尼が食べたのは?「日本の人魚伝説」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    日本の人魚伝説

    髙橋大輔 著

    八百比丘尼が食べたのは「日本のUMA」だった!

     八百比丘尼の伝承は、日本各地に残っている。伝説の内容はどれも似通っていて、ある娘が人魚の肉を食べたため、何年たっても年をとらずに八百歳まで生きたというものだ。後に、彼女は比丘尼となって諸国を巡ったとされ、こうした伝承を伝える史跡やいい伝えも、やはり全国に残っている。

     本書は、八百比丘尼が食べた人魚が本当はなんだったのか、その正体を求める探検行の記録である。 旅は、八百比丘尼の本場ともいえる福井県小浜市から始まり、人魚のモデルともされるジュゴンを求めて沖縄へ、和歌山県西行寺の人魚ミイラを見た後、琵琶湖博物館でオオサンショウウオ説を検証、リュウグウノツカイ説を追って富山県を訪れ、島根県ではアシカ説を検証する。
     かなり場当たり的な行旅で、時系列的に並んでもいないが、各地の八百比丘尼伝説や文物を紹介しながら旅を続けるうち、著者は3つのキーワードを発見する。それが「御食国」「秦氏」、そして「海幸山幸神話」だった。

     こうして、海幸山幸神話がある島根県出雲市で著者は、八百比丘尼が食べたのはニホンアシカの肉だと結論する。
     この結論に同意するかどうかは、読者次第だろう。
     ニホンアシカは、公式には絶滅したことになっているが、生存説もある。あまり話題にならないが、立派な日本のUMAなのだ。

    草思社 2090円(税込)

    (月刊ムー 2025年7月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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