フランスのUFO研究機関が認めた第三種接近遭遇事例 「ヴァレンソール事件」の基礎知識
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、1965年にフランスの小さな村で、農夫が謎のUFOと異形の生命体に遭遇した事件を取りあげ
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トランス状態に陥った霊媒の体から出現する謎の物質「エクトプラズム」。 ゼリー状、あるいは布状など、さまざまな形態で現れては、霊の顔や手足、ときには全身像までも形成し、物質化する。 この驚異の現象を解明するべく、19世紀末から20世紀前半にかけて、数多くの科学者と物理霊媒たちが実験にのぞんだ。 はたして、この不思議な物質の正体は?
目次
実験の準備は夕刻からはじめられた。死後霊の物質化現象を立証しようという実験である。
1913年5月19日。フランスのパリ。実験の主宰者はドイツ人のアルベルト・フォン・シュレンク=ノッチング男爵。もとは精神科医だが、今は心霊の科学的研究に没頭している。被験者はフランス人カリエール・エバ。本名はマルテ・ベロー。ウエスペ夫人とも呼ばれる。通称エバ・C。史上最も傑出していたと評される物理霊媒だ。立会人はエバの養母で、心霊研究家でもあるフランス人ジュリエット・ビッソン夫人。
ノッチングとビッソン夫人は、トリックが入り込む余地がないように、内側から施錠した実験室を隅々まで調べた。エバの身体検査や実験用の衣服の検査も徹底的に行う。エバは着ているものをすべて脱ぎ、特別に用意された実験用の黒い服に着替える。このとき、頭髪、口、耳、手の中はもちろん、ときには性器まで検査する。
照明は赤色灯6個(合わせて100ワット超)。当時としては高性能なカメラ数台が用意され、どの角度からでも撮影できるようにしてある。
すべての検査を終えたあと、エバは部屋の隅を黒いカーテンで仕切った小暗室に入り、椅子に腰かけた。霊の物質化現象は明るい光の下では起こりにくいので、小暗室が用意されているのである。
むろん、小暗室も念入りに検査ずみだし、実験中は常に前面のカーテンが半ば開けられている。しかも実験者や立会人が外からエバの両手を握っている場合が多いので、エバが暗室内でトリックを行うことは不可能といっていい。
実験の準備が完了したのは午後8時ごろで、ビッソン夫人がエバを催眠に導きはじめた。
8時25分=エバがトランス状態に入り、かすかな呻き声を発しはじめる。
8時35分=エバの呻き声と体をよじる動作が激しくなったので、ビッソン夫人がエバの両手を握る。
8時37分=エバの挙動が一段と激しくなり、ビッソン夫人が手を離す。エバは苦痛に耐えられないかのように呻き、震えている。その後も非常な興奮状態がつづく。
8時55分=エバの頭の右横に突然、白く光る物質の小さな塊がどこからともなく出現する。
9時00分=エバがカーテンをつかみ、椅子から立ちあがる。
9時03分=エバが激しく身を震わせて椅子に倒れ込む。ノッチングとビッソン夫人がエバの手をつかもうとしたとき、エバの左腕の上に大きな白い物質の塊が出現し、上方へ移動しはじめる。
9時20分=エバが再び立ち上がり、小暗室の右隅へ移る。
9時25分=エバがビッソン夫人の手を取って引っ張り、何度も上下に動かす。
9時30分=エバがビッソン夫人の手を離し、右側のカーテンをつかんで、「ジュリエット、彼を呼んで。彼が見えるわ」という。
9時35分=エバが立ったまま右側のカーテンを開けはじめる。ビッソン夫人が、エバの背後に立つ輪郭も明瞭な白衣の男性の姿を認め、以前の実験で2度にわたって写真撮影していた「ドルスミカ」という男性の全身物質化像であることを確認する。
9時38分=エバがカーテンを広く開き、ノッチングも白衣を着した「ドルスミカ」の全身物質化像を確認する。
直後、ノッチングが写真撮影しようとフラッシュを焚いた瞬間、全身物質化像はその場から煙のように消え失せた。
実験終了後、エバの身体や衣服、小暗室を再検査したが、トリックの可能性は完全に排除された。
この実験の最中に突然、白い塊としてどこからともなく出現し、「ドルスミカ」の全身物質化像を形成した謎の物質を「エクトプラズム」という。
ギリシア語で「外部」を意味する「ecto」と「作られたもの」を意味する「plasma」を組み合わせた造語で、1913年にノーベル賞を受賞したフランスの生理学者シャルル・リシェーの命名によるものだ。
「テレプラズム」や「イデオプラズム」「サイコプラズム」「アイドロン」「サイコード」もほぼ同じ意味の用語で、「幽物質」「霊物質」と邦訳されることもある。
トランス状態に入った霊媒の身体から出て物質化現象の材料になる物質で、口腔や鼻腔、耳などの開口部、乳頭、指先、頭頂部、股間などから出現する。
本質的には透明で肉眼では見えにくいが、可視的なゼリー状あるいは半ガス状、粘液状、細い糸状、固い紐状、薄幕状、帯状、布状などさまざまな形態を取る。
触ると冷たく感じ、エクトプラズムが出現すると室温が低下することが多い。オゾン臭がし、色は白あるいは灰色。光に対して非常に弱く、照射されると崩壊する。したがって、実験は暗い場所や赤色灯下で行われることが多いが、条件さえ整えば白光下でも出現し、写真撮影も可能といわれる。
出現後は何者かの指令によって操られているかのような動きを見せ、瞬時のうちに顔や手、半身像、前記した「ドルスミカ」のように完全に独立した1個の全身像などが一時的に形成される。
物質化現象の折は、霊(死者)の仮の肉体を形成する媒体として用いられることが多いが、叩音(こうおん)・騒音現象、浮揚現象、アポート(物品引き寄せ)などすべての物理的心霊現象とも関係があるのではないかと見なされている。
出現後は再び霊媒の体内に還元されるが、物質の成分について判明していることは少ない。ノッチングの分析によると、多量の白血球、上皮細胞が含まれ、唾液の成分に近かったという。ポーランド心霊研究協会のドンブロフスキーは、人体の脂肪と細胞を含み、澱粉(でんぷん)反応は認められず、アルブミン様の物質だったと報告している。
出現のメカニズムも、正確にいえば未解明だ。
カナダの心霊研究家グレン・ハミルトンらは、エクトプラズムは誰もが持つ人間の身体のごく普通の構成要素であり、死後霊が現世の人間とコミュニケーションを取るべく、エクトプラズムを用いて失った肉体の姿を再現している、と主張した。
つまり、霊媒とは別の人格、おそらくは死者の霊が霊媒の潜在意識に働きかけて自分の姿を物質化させているのではないか、というのである。
一方、フランスの心霊研究家ギュスターブ・ジュレーらは、霊媒から出る何か無意識の力が作用して物質化現象が起こる、と説いているが、その無意識の力がどのようなメカニズムで作用しているのかまでは説明していない。
とはいえ、日本の福来友吉が発見して世界に広めた念写の概念を援用すれば仮説は用意できる。
念写とは心の未知の力(念力)によって写真フィルムを感光させ、何らかの像を出現させる現象だ。この念写のように、心の中に描いたイメージを物質化(念写)した像を思念造形物という。その背景には、さまざまな意識内容を直接物質界に投影して造形しうる未知のマインドパワーが存在するという考えがある。
敷衍(ふえん)すれば、エバのような物理霊媒は思念するイメージをエクトプラズムで物質化させる未知の能力を備えている可能性が高い。すなわち、エクトプラズムは思念造形物である、という仮説を提示できるのである。
とまれ、完璧な全身物質化現象を心霊研究家として初めて観察・確認したのは、前出のシャルル・リシェーである。
1905年、リシェーは当時フランスの殖民地だったアルジェリアを訪れ、アルジェリア駐屯フランス軍のノエル将軍の屋敷で開かれた交霊会に参加した。
霊媒を務めたのはエバ・C。エバはフランス陸軍の将校を父として1890年にアルジェリアで生まれ、同地に居住していたのだった。リシェーはその交霊会で驚くべき現象を目の当たりにし、次のように証言している。
「カーテンの前の床に白いハンカチを広げたような白色不透明の塊が出現し、見る見るうちに人間の頭部を形づくった。数秒後には、それを支える身体が床から真っすぐ上に伸びて、マントを着た小柄な男の姿が現れた。その男はカーテンの前をぎこちなく2、3歩歩いたかと思うと、まるで落とし穴に落ちたかのように身体が床に沈み、姿が消えてしまった」
にわかには信じがたい霊の物質化現象を起こしたエバは、その後、フランスへ移住してジュリエット・ビッソン夫人の養女となり、アルベルト・フォン・シュレンク=ノッチング男爵の被験者として多数の実験を行った。
実験が行われたのは1909年からの4年間で、冒頭に紹介した実験はそのうちのひとつだ。
厳しい条件下でなされたこの一連の実験で、エクトプラズムから人間の姿がつくられる物質化現象の全過程がつぶさに観察され、数百枚もの写真が撮影された。その意義はきわめて大きく、エクトプラズムと物質化現象の科学的研究はその第一歩を印したのである。
エバを霊媒とした実験はその後もつづいた。なかでも有名なのは、ギュスター・ジュレーを中心とした研究グループによって行われたものだ。
1917年12月から翌年3月にかけて繰り返された実験には、毎回、ビッソン夫人のほか国立パリ病院院長のM・カルメット、ソルボンヌ大学の生理学教授ジュール・コーティエらの高名な第三者が立ち会った。
そして、ノッチングの場合と同様に厳密な実験条件のもとで驚愕すべき物質化現象が現出し、鮮明な写真が撮影されている。
しかも、物質化現象を起こした物理霊媒はエバひとりにとどまらない。ダニエル・ダングラス・ヒューム、スタニスラワ・P、ジャック・ウェバー、キャスリン・ゴリガー、エリザベズ・デスペランス、フローレンス・クック、ユーサピア・パラディーノ、フラネク・クルスキー……らも驚異的な物質化現象を起こし、エクトプラズマ出現時の写真も多数残している。
それらはいずれも厳密なチェックを受けた交霊実験で高名な科学者が客観的に確認した物質化現象だが、当然のように、批判もないではない。いんちき霊媒が口から吐きだした薄地の絹布か紙であろう、という批判だ。
たしかに偽の霊媒は多いが、懐疑論者の口を封じる決定的な物証がある。〝霊の手のパラフィン蝋(ろう)型の手袋〟がそれだ。
トリック説を完全に否定する物証は、1919年、ギュスターブ・ジュレーがポーランドの霊媒フラネク・クルスキーをパリの国際超常心理現象研究所に招いて行った実験の場で得られた。
物質化現象で霊の全身像が現れることは少なく、顔や手、足など身体の一部が形成されることが多い。クルスキーの場合も同様で、手や足を出現させた。
ジュレーはそれをパラフィン蝋型に取って物質化現象の確かな証拠にしようと考え、溶融パラフィン蝋を満たした円形容器を温水上に浮かべるという工夫をこらした。この溶融パラフィン蝋に物質化した手を浸してすぐに引き抜くと、溶融液の被膜が形成されて瞬時に凝固する。そして薄い被膜体から物質化した手を抜くとパラフィン蝋型の手袋が残る。
ジュレーが物質化現象を起こす知的存在(死後霊)に物質化した手を溶融パラフィン蝋に入れるように頼んだところ、知的存在はそれに応じ、7例のパラフィン蝋型の手袋が得られた。1921年にワルシャワで行われた実験でも、同様の手袋がつくられた。
手袋の厚さは1ミリ弱。掌紋や指紋まで鮮明に残っているばかりか、指を複雑に曲げたもの、お祈りするときのように両手を合わせたもの、指をしっかり組み合わせたものまである。
改めて強調するまでもなく、パラフィン蝋の膜はわずかな力でバラバラに砕けてしまうのだから、掌紋や指紋まである精緻な手袋を人工的に作成することは絶対に不可能なのである。
こうした驚異の物質化現象は19世紀末から20世紀前半にかけて数多く報告されたが、その後は急減した。エバ・Cのような強力な物理霊媒も出現していないし、心霊現象全体が質・量ともに低下してしまった。
ために、トリック説が根強く残り、懐疑論者の批判もやまないのだが、内外の心霊現象に精通する山河宏は、電磁波の急激な増大が心霊現象の質・量の低下に関係しているのではないか、という見解を示している。
心に働きかける脳の神経活動の中心をなすのは電気現象であり、電磁波は心の働きに、ひいては心霊現象に重大な影響をおよぼす。
ところが、20世紀後半から電磁波は激増した。ラジオ、テレビ、パソコン、携帯電話、電子ゲーム機……ほかの電気器具や電子機器は巷に氾濫し、我々を取り巻く環境は電磁波の洪水の中にあるといっても過言ではない。
激増したその電磁波が心の働きに悪影響を与え、心霊現象を生起させにくくしているのではないか、というのである。
先に見たように、霊の物質化現象は明るい光の下では起こりにくく、エクトプラズムは光を照射すると崩壊するという特徴があった。光も物理学的には広義の電磁波であり、心霊現象が電磁波の影響を強く受けている可能性は高いのではなかろうか……。
参考文献=『超常現象の事典』(リン・ピクネット著/関口篤訳/青土社)、『心霊研究辞典』(春川栖仙著/東京堂出版)、「目の前に死者の姿が甦った」(山河宏/「ムー」35号所収)、「心霊現象を解明する[交霊実験]の真実!!(河西修一+島大蔵/「ムー」81号所収)、「手型に刻まれた掌紋」(山河宏/ムー別冊「世界心霊大百科」所収)ほか
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