船や飛行機に乗るのは危険フラグ!? 乗り物が人を襲うカルト的ホラー名作映画6選

文=オオタケン

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    ホラーやパニック/ディザスター(災害)系といったジャンルの映画は、いつの時代でも人気が高い。昔から人々は恐怖の疑似体験を創作物に求め続けてきた。

     前回は、霊や呪い、悪魔の仕業によって操られた車が人を襲うホラーやパニック映画を取り上げた。今回はそれ以外の乗り物が人を襲う作品を紹介したい。電車や船、飛行機のみならず、車のタイヤが襲撃してくるという変わり種も存在する。

     車が人を襲う映画とは異なり、船や飛行機などは密室ホラーとしての側面が強いのが特徴だ。「逃げ場がない」というシチュエーションは、否が応でも恐怖を掻き立てる。それぞれの乗り物の特色を活かしたシーンもユニークで、製作陣の知恵や苦労が感じられるだろう。ぜひご覧いただきたい。

    1. ゴースト/血のシャワー(原題:Death Ship)/1980

     大西洋を航行する豪華客船が謎の黒い大型船に衝突され、沈没する。生存者たちはボートで漂流するが、そこにまたも大型船が現れる。彼らは助けを求めて船に乗り込むが、それは無人で航行する幽霊船であった。

     船内の人間が次々と怪奇現象に巻き込まれていく中、徐々に船とナチスドイツとの関係が明らかになっていく。ナチスに対する怨恨や、拷問を受けた人々の怨念が船を動かし、乗り込んだ人を狂わせる。80年代らしい湿度の高いグロテスクなシーンもあり、今もってファンの多い作品。日本版タイトルにもなっている血のシャワーシーンは一瞬なのだが、当時はスプラッター映画が耳目を集め始めた時期でもあり、売りの一つとなったのだろう。2002年に公開された『ゴーストシップ』という映画は、元々は当作のリメイクの予定だったという。内容はほとんど別物なのだが、ポスターやDVDパッケージが類似しているのでお間違えの無きよう。BDではHDリマスター版も発売されている。

    2. ザ・トレイン(原題:Beyond the door III)/1989

     ロサンゼルスの高校に通うグループが、紀元前より行われているという宗教儀式を見るためにユーゴスラビアのウフィル村へと向かう。だが、それはウフィルの血を引く女子高生ビバリーを誘き寄せる罠だった。彼女を悪魔儀式の生贄にしようと企む怪しい村人たちに襲われたグループは村から逃げだし、通りかかった機関車へ飛び乗る。だが、機関車は悪魔に取り憑かれ、人を襲い続ける。

     B級映画ではあるが多くのシーンでは本物の機関車を使っており、力強い迫力があるシーンが続く。線路から外れても走行を続け、学生や機関士たちの命を惨たらしく奪っていく機関車が恐ろしい。列車の車両内で事件が起きるホラーやミステリー作品は珍しくないが、列車自体が人を襲うという一見難しいアイデアを上手くストーリーに落とし込んでおり、見どころも多い。グロテスクなシーンも多いのでスプラッターが苦手な方は注意。配信やDVDが容易に手に入るので興味のある方は是非。

    3. X電車で行こう/1987

     真夏のある日、広告代理店に勤める西原トオルとその上司は、かつてはお召し列車として活躍した電気機関車・EF5861を広告に使おうと、クライアントの鉄道会社にプレゼンをかけていた。だが、劣化が進んでいた列車は数日後には解体されてしまう運命だと知る。しかし突如、EF5861は解体を待つ車庫から忽然と姿を消してしまう。時を同じくして日本各地で謎の幽霊列車の目撃が相次ぎ、トオルもそれを目撃する。その前後からトオルの体に異変が起き始め、彼は幽霊列車と共におかしな運命を辿っていく。

     バブル真っ盛りの日本で作られたOVA作品で、山野浩一の同名小説を原作としながら、かなり大胆にアレンジが加えられたSFホラーコメディ作品となっている。バブル期の軽薄さと表裏一体のポップでキッチュな雰囲気を漂わせ、アニメでありながら吹出しを多用するなど実験的な表現が満載だ。老朽化した幽霊列車・EF5861の不気味なディテールが素晴らしく、オカルトファンにも見応えがあるだろう。音楽はジャズピアニストの山下洋輔が担当。エンディングはボーカルに矢野晶子を迎えたジャズのスタンダードナンバー「A列車で行こう」で締められる。最後までバブリーで魅力的な作品だ。残念ながら未DVD化作品で、配信でも見ることは出来ない。中古のVHSを探すしかない。

    4. エアポート2018(原題:Flight 666)/2018

     飛行機もののパニック映画は多い。だが、ホラーとなると意外と作品数は少ない。『エアポート2018』は直接、飛行機が人間を襲う映画ではないが、謎の女性の霊たちが飛行機にまとわりつき、機内の乗客と乗員を恐怖に陥れる、というストーリーだ。原因は機内にいる意外な人物にあり……と展開も悪くない。逃げ場のない航空機内で、墜落と隣り合わせという状況が不安を煽る。製作会社はアサイラム、と聞けば映画に詳しい人はニヤリとするはず。低予算のホラーやヒット映画の便乗作を得意とする会社だが、本作はそれなりにまとまっており、恐怖の演出も分かりやすくホラー初心者も安心だ。同様の作品としてはタイ製作『ゴースト・フライト407便』などもある。配信やDVDで視聴可能。

    5. 殺人ブルドーザー(原題:Killdozer)/1974

     大西洋に浮かぶ孤島で開発作業に追われる6人の作業員たち。宇宙から飛来した隕石を、そうとは知らずにブルドーザーで撤去しようとするが、突如隕石は青白く発光し、それを見た作業員の一人が倒れてしまう。彼は石に不気味な何かが宿っていたこと、それがブルドーザーのブレードに乗り移ったことをほのめかして亡くなる。直後、無人で動き出したブルドーザーは、助けのこない無人島で右往左往する作業員たちを嘲笑うかのようにあらゆる物を破壊し、追いつめる。

     1976年の正月にTV放送され、日本の視聴者の度肝をぬいたと言われる怪作だが、世界中でカルト的な人気を得ておりマーベルコミックに登場したことも。相手がブルドーザーゆえ、展開はスローモーで恐怖は薄い。むしろ2つのライトを光らせて闇夜に蠢くブルドーザーの姿は、なんだか愛らしいほどだ。ラストはブルドーザー対ショベルカーという少年心を擽るシーンも。男同士の友情も胸を熱くさせる。カルト映画の名作だ。

    6. RUBBER/2010

     不条理な映画だ。荒野に打ち捨てられた古タイヤが突然、意思をもつ。転がりながら、ゴミやサソリを踏み潰し始める。だが徐々に超能力を発揮し、小動物を殺し、遂には人間達に牙を向けるのだ。そのタイヤはなぜか、偶然通りかかった赤いオープンカーに乗った若い女性に執着し、彼女を追いかけながら殺傷を繰り返していく……。まるで誰かの夢を見させられているかのような映画で、事件を追う奇妙な警官たちや、事の成り行きを遠方から双眼鏡で観察する一団など、全てが謎のまま映画は進行する。登場人物が何度も口にする「No reason.(意味はない)」こそがこの映画を表す最適な言葉なのだろう。何だか惜しい映画だ。DVDが中古でのみ入手可能。

    ◆ ◆ ◆

     いかがだろうか? これらの映画に登場する乗り物は、旅行や長距離移動のイメージが強いものが多く、ゆえに前回のカーホラー映画とは物語の視点が異なるようだ。”日常”から”恐怖を伴う非日常”へと落とされるカーホラーに対し、”幸せな非日常”から”恐怖の非日常”へと落とされるこうした映画は、なんだか救いも少なく結末も悲しい。

     しかし、カーホラー以上に自由な作風の映画が多く、アニメ作品の『X電車で行こう』や最後に紹介した『RUBBER』など、万人におすすめはしないが掘り出し物と言える作品もある。あなたも騙されたと思ってこれらの作品を見てみれば、意外なお気に入りが見つかるはずだ。サメ映画の次は乗り物系ホラーのブームが来るかもしれない!?

    オオタケン

    イーグルリバー事件のパンケーキを自作したこともあるユーフォロジスト。2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」が年一回発行している同人誌『UFO手帖』の寄稿者。

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