近江の「龍の骨」は皇室に献上され、博物館に収蔵された!? 奇妙な化石を巡る信仰と伝説の現在地/鹿角崇彦
江戸時代の琵琶湖畔で、幻の生物・龍の骨が発掘されていた! その骨は現存し、今でも博物館で保管されているという。
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「八百万の神の原郷は、琵琶湖南岸の近おうみ江の地にあった」とするユニークな説を三上編集長がMUTubeで解説。
みなさんは「近江高天原説」というのを、ご存じだろうか。
全国には、何々高天原と呼ばれる地域があちこちにある。有名なところでは、「雲にそびゆる」天孫降臨の宮崎県高千穂や、第6代将軍徳川家宣の侍講として「正徳治」を担った朱子学者の新井白石(1657~1725)が『古史通』で展開した常陸国多珂郡(茨城県旧多賀郡=現在の高萩市・北茨城市・日立市など)説が知られている。
さらに、古代は蝦夷の地だった東北地方の日高見国や、『古事記』神代巻に出てくる地名なら全部揃っていると称する阿波国の徳島県、そして全国に点在する高天・高原などが付く地名など……。
また、騎馬民族征服王朝説の影響で朝鮮半島や、日ユ同祖論でイスラエルなど、高天原を海外に求める説もある。アナーキストの著名な思想家として知られる石川三四郎(1876~1956)は、『古事記神話の新研究』のなかで、チベットの崑崙山脈のカチ高地を高天原と推定している。その他、インターネットで検索すると、たくさんの高天原が登場する。
ところが、肝心の近江高天原説は古神道界隈では老舗の説なのに、なぜか、意外と知られていない。埋没させられてしまっているのだ。
近江高天原説は、それまで偽史・偽書の烙印を押されていた「超古代文献」に光をあて「古史古伝」という概念を生み出すきっかけを作った古神道研究家・吾郷清彦(1909~2003)が、琵琶湖研究会(1949年設立)の支援のもとに提唱したものである。
この琵琶湖研究会は「①琵琶湖畔を拠点とする文化の振興 ②史学・地学・エネルギー資源等の調査研究」を目的に「地球のオアシス琵琶湖」を唱導し、古神道や言霊の研究にも側面から尽力した。その琵琶湖研究会から昭和54年(1979)に刊行されたのが吾郷清彦著『近江高天原の発掘』で、吾郷はとくに戦前の近江高天原に関する諸説を紹介しながら、新しい近江高天原を描き出している。
しかし、ここでは吾郷の業績を踏まえながらも、若干のフィールドワークをもとに、独自の視点で再構築してみたい。
高天原は神々が誕生した原郷である。その訓みはタカマガハラ、タカマノハラ、タカアマハラ、タカアマノハラ、タカノアマノハラがある。古神道系では「マガ(魔が)入る」といってタカマガハラを嫌う傾向があるが、神社本庁の祝詞や、岩波書店の『広辞苑』はタカマノハラを採用している。
高天原を舞台とする記紀神話の場面で、おそらく一番知られているのが天照大御神天岩戸隠れである。『古事記』によれば、前段の「宇気比(誓約)」の場面で、天照大御神と速須佐之男命が互いの物実を交換して誓約をした結果、スサノオは3柱の手弱女を得た(自分が勝った)と大暴れしたことで、アマテラスが天岩屋戸とに籠もってしまい、高天原は真っ暗になってしまったという事件である。
その影響で葦原中国も闇に包まれ、いろいろな妖が発生した。そこで八百万の神々が「天安河原に神集ひ集ひて」協議した。この「天の安の河原」が滋賀県野洲市の野洲川の河原だったというのである。
そして、実は、アマテラスとスサノオの宇気比も、この天の安の河を中に置いて行われている。それほど重要な場所であったのだ。ちなみに、宇気比とは、判断がつき難い事柄について、神に誓って神の判断を仰ぐことである。
この野洲川を神代の昔からずっと見守りつづけてきたのが「近江富士」の異名を持つ三上山である。海抜432メートルの低山だが、登山道には岩盤が剥き出しになっているところも多く、とくに山頂付近はゴツゴツとした岩肌が縞状に露出していて、運動靴やスニーカーでちょっとハイキングといった気分では登れない、意外と難易度の高い山なのである。
湖南地域には高い山がないので、その秀麗さが一際目立つ、まさに神宿る山である。湖西・湖南のかなり広い地域から眺めることができる。野洲平野の中にそびえ立つ三上山の山麓には、明治初年の神仏分離まで大寺院「東光寺」があり、山伏たちが跋扈した修験道の山だったのである。
その三上山を御神体山(神南備)とするのが滋賀県野洲市三上に鎮座する御上神社である。『延喜式』神名帳の「近江国野洲郡 御上神社〔名神大。月次。新嘗〕」で、祭神は天之御影大神。神社は三上山の西麓に西面するが、この神が三上山に降臨したのが、物部系の『先代旧事本紀』によれば、孝霊天皇6年(紀元前295年)のことだ。
以来、三上祝が山頂を磐境と定めて斎き祀ってきた。『古事記』開化天皇(若倭根子日子大毘毘命)の段に「近つ淡海の御上祝がもちいつく、天之御影神の女息長水依比売を娶ひて、生ませる子は……次に水之穂真若王……水穂真若王は、近つ淡海の安直祖」と出てくるところの「近つ淡海の御上祝」と「安直」は同系で、安直は安国造ではないか、と考えられている。しかし、『古事記』孝昭天皇( 御真津日子訶惠志泥命)の段に「兄いろせの天押帯日子命は……近淡海国造の祖なり」とあって系統は微妙に違っている。
じつは、『先代旧事本紀』巻第10の「国造本紀」には、近江(近淡海)国造も安国造も出てこない。物部氏の氏文はなぜか近江を埋没させているのである。ところが、逆に『古事記』の天岩屋戸の段では物部色が出ている。御上神社の祭神の天之御影命は天津彦根命(『日本書紀』/『古事記』では天津日子根命)の御子で、御上神社では天目一箇命と同一神として捉えている。アマツヒコネはアマテラスとスサノオの誓約の際、アマテラスの物実に生った5柱の男子の1柱(3番目)である。彦根藩や彦根市の彦根はもちろん、このアマツヒコネから来ている。すなわち、近江高天原説に由来している。
(文=菅田正昭)
続きは本誌(電子版)で。
webムー編集部
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