ミモザのトゲが磔刑の十字に! メキシコ「サンタ・クルス修道院」の神秘/遠野そら
自生するミモザのトゲが十字架の形になる「奇跡の樹」。メキシコのサンタクルス教会は強烈なキリスト教のパワーを語る歴史があった。
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、数々の世界的事件の発生を予言し、驚異的な的中率を誇る女性予言者を取りあげる。
人類の歴史には、数々の歴史的事件の発生を事前に予言した人物の名が何人も記録されている。そのような人物として、16世紀フランスのミシェル・ノストラダムスやイギリスのマザー・シプトン、アメリカのエドガー・ケイシー、ジーン・ディクソンなどの名がしばしば言及されるが、「ババ・ヴァンガ(ヴァンガおばさん)」の愛称で知られるヴァンゲリア・ディミトローヴァもまた、高い的中率を誇る予言者として知られている。
本国ブルガリアでは、彼女は薬草による治療師としても知られ、ブルガリア南西部に位置するルピテにあったその住まいには、連日大勢の人々が自分の未来を知ろうとして押しかけた。旧ソ連の歴代指導者も彼女の助言を求めたとされ、アドルフ・ヒトラー本人も彼女に会ったといわれている。こうした彼女のことを、「バルカンのノストラダムス」と呼ぶ者もある。
まずは彼女の波乱に満ちた一生を振り返ってみよう。
彼女は1911年、現在は北マケドニア領となっているストルミツァで生まれた。
当時のストルミツァはオスマン帝国の支配下にあり、セルビア人、ブルガリア人、トルコ人などが入り混じって住んでいた。こうしたバルカン半島の複雑な政治情勢は、彼女の人生を大きく翻弄することになった。
まずは生まれた翌年の1912年、ストルミツァは戦争によってブルガリア王国の領土となった。さらに1914年、ヴァンガの実の母親が死亡した直後に第1次世界大戦が勃発し、父親は戦争に取られてしまった。そのためヴァンガは、しばらく隣人に養われることとなった。
戦争が終わると父親は再婚し、新しい母親ができたが、ストルミツァはセルビア王国に奪われ、セルビア王国や後継国家のユーゴスラビア王国は、ヴァンガたちブルガリア人を少数民族として弾圧した。ヴァンガの一家も数々の不利益を受け、その暮らしは貧しかった。
しかしこうした厳しい生活環境にあっても、ヴァンガは陽気で人なつこく、愛らしい少女に成長し、近隣の住民にも好かれていた。また、しばしば薬草遊びに興じており、友だちを病人に見立てて薬草の処方を行っていたともいう。
ヴァンガの生涯を大きく変える事件が起きたのは、1923年、12歳の夏だった。
このときヴァンガは、突然生じた激しいつむじ風に巻き込まれ、かなりの距離を吹き飛ばされてしまった。その際ゴミや砂が入ったことで、両目に障害を受けたのだ。ただし、かなり痩せていたとはいえ、12歳の子どもを吹き飛ばすようなつむじ風が、このとき実際に起きたという記録はないようで、『ソ連圏の四次元科学(下)』によれば、「視力の衰える発作に何度か見舞われた」となっている。
いずれにせよ、手術をすれば回復する可能性もあったようだが、貧しい一家にその費用を工面することはできず、視力は次第に低下、最後には失明した。
こうして盲目となったヴァンガは、1925年からゼムンの盲学校に入学するが、1928年に継母が死亡し、幼い弟や妹の面倒を見るため家に帰った。さらに1929年には、地震で家が倒壊するという不幸にも見舞われ、1939年には肋膜炎を発症した。一時は医者にも見放されたヴァンガだったが、その後奇跡的に回復した。
このころヴァンガが予知したのが、最愛の父の死であった。
ヴァンガがいつごろから予知能力を発揮したかについては、子どものころ、夜釣りに行く人物が事故に遭うことを予言したという逸話も残る。しかし、ヴァンガの能力が一般に知られるようになるのは、この父の死を予知したことがきっかけだった。
予言が的中して以後、彼女の能力は次第に知られるようになり、まずは近隣の住民がさまざまな相談に訪れた。
1941年、枢軸国側の一員として第2次世界大戦に参戦したブルガリアが、ストルミツァを含むユーゴスラビア西部からギリシア北部までを占領すると、戦争で行方不明となった家族の行き先を知ろうとして、大勢の人々がヴァンガのもとに押しかけるようになった。当時のブルガリア王ボリス3世やアドルフ・ヒトラーがヴァンガに会ったのも、このときらしい。
将来の夫となるディミタール・グシュテロフと出会ったのもこのころだ。
ディミタールがヴァンガに会いにきたのは、自分の兄弟を殺した犯人を知るためだった。もちろん彼は、兄弟の仇を討つつもりでいた。しかしヴァンガは、絶対に復讐しないよう彼を説得し、その上で相手の消息を告げた。ディミタールはその約束を守った。
このヴァンガの人柄に惹かれたのか、その後ディミタールは何度もヴァンガを訪ねるようになり、最後にはヴァンガに求婚した。そこでヴァンガは、妹のルブカを伴って彼の出身地ペトリチに移り、1942年5月10日に彼と結婚した。
第2次世界大戦後、ブルガリアでは共産主義政権が成立、国名もブルガリア人民共和国となった。しかし、ヴァンガの活動は共産主義政権下でも容認された。1962年に夫が死ぬと、ヴァンガはペトリチから十数キロ離れたルピテに移り住み、常に黒服を身に着けて過ごすようになったが、ルピテでも大勢の人々が彼女の助言を求めてやってきた。
そこで1967年、ルピテやペトリチを管轄するペトリチ基礎自治体議会は、彼女との会見を調整する委員会を設立し、彼女と会って話すためにはこの委員会を通さなければならなくなった。
会見の際、共産圏の国民からは10レフ(1.1米ドルくらい)、西側諸国民からは50米ドルの料金が徴収され、ヴァンガには公務員として月200レフの給料が支給された。つまりヴァンガは、ブルガリアの共産主義政府公認の予言者になったのである。
一方、こうした事態は、彼女の予言を国家が管理することも意味していた。
1990年、ブルガリアは共産党の一党独裁を廃し、ブルガリア共和国として生まれ変わった。しかしその後も、政府や国民のヴァンガに対する態度は変わらず、彼女は大統領をはじめとする政府要人たちとしばしば会見し、地元のテレビにも幾度となく出演した。1996年8月11日、ヴァンガが乳がんで死亡したときには、ブルガリアの名士たちが大勢葬儀に出席した。
つまり、ブルガリアの政体は王制から共産主義政権、民主主義政権と変遷したが、ヴァンガ本人は常に政府や民衆の支持を集めた予言者でありつづけたのである。
ブルガリアや生誕地ストルミツァのある北マケドニアでは今でも絶大な人気があり、ロシアをはじめとしてヨーロッパではかなり名が知られているようだ。
では、ヴァンガが的中させた予言にはどのようなものがあるのだろう。
ヴァンガは生前、第2次世界大戦の勃発や、スターリンの死、オバマ米大統領の登場、ソ連の分裂、チェルノブイリ原子力発電所事故、911事件など多くの世界的事件を予言したという。ブルガリアの超心理学者ゲノルギー・ロザノフは、その的中率を80パーセントと判定した。
特に、2000年8月に起きたロシアの原子力潜水艦クルスク沈没事件の予知は、当時かなり話題になった。ヴァンガは1980年に、「クルスクが1999年あるいは2000年8月に水中に沈む」と予言しており、この事実は事件以前から確認されていたのだ。
さらに生前、「見たことのない新しい疫病が文明社会を襲う」とも述べていたが、これはエイズやSARS、さらには新型コロナウイルスの蔓延を予言していたのかもしれない。
自らの予知能力について、ヴァンガ本人は姿の見えない何かと話すことができ、その存在が未来の出来事を教えてくれるのだと語っている。ただし、これが何者なのか、異星人か霊か、あるいは妖精の類いなのか、ヴァンガ本人も詳しく説明できなかったようだ。
また、ヴァンガは死者の霊と会話することができるとも述べており、すでに亡くなった相談者の両親や祖父母などから情報を得ていたほか、特定の人物と面談する際には、その人生がまるで映画のように眼前に展開するとも語っていた。
予言以外にも、ヴァンガはヴァムフィムという惑星から来た異星人がすでに地球に住んでいるという情報ももたらしている。
現在でもインターネットを中心に、ヴァンガの予言といわれるものが多数紹介されている。ただし、こうした予言については注意が必要である。
まず、ヴァンガ本人が自ら書き残した予言はないのだ。彼女はゼムンの盲学校時代に点字を習っているから、まったく読み書きができなかったわけではないようだが、自分の予言を書き物としては残していないのだ。
つまり、現在ヴァンガの予言として出回っているものは、いずれも彼女の生前、つまり24年以上前に彼女から口頭で予言を聞いただれかが伝えたものということになるが、本当にヴァンガから聞いたかどうかは、本人の証言以外確認できないものが多いのだ。
また、こうしたネット情報には、将来人類を襲う災厄や戦争の発生を予言するものも多いが、ヴァンガは非常に穏やかでやさしい性格であり、不幸な事件については予言していないという証言もある。
では、彼女の真の予言がどのようなものだったのか、確かめる術はないのだろうか。
すでに述べたとおり、彼女は公務員として政府機関の管理下に置かれていた。したがって、ブルガリア政府は彼女の予言を密かに保管していると思われるのだ。数年前、ブルガリア政府がこうした記録を公開するという情報が流れたことがあるが、どうもこれはソースの信憑性が低いようだ。
いずれにせよ筆者としては、1日も早くヴァンガの予言の全容が公開されることを願ってやまない。
●参考資料=『ソ連圏の四次元科学(下)』(シーラ・オストランダー、リーン・スクロウダー著/たま出版)、『Baba Vanga』(Rina / Editions Astree)/他
(月刊ムー2020年8月号掲載)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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