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更科功 著
古代DNA研究史を、現状から将来像まで説き起こす
「古代DNA」。何ともロマンあふれる学術用語である。その意味するところは、「化石の中のDNA」だ。
化石の中に、元の生物のDNAが残されているとなれば、だれもが思いつくのが、そのDNAを使ってすでに絶滅した生物を甦らせることだろう。映画『ジュラシック・パーク』シリーズでも、琥珀の中に残されたDNAから、太古の恐竜を復活させていた。だが、はたして現実にそんなことが可能なのか。それを知るためには、ともかく古代DNAについて知ることが急務である。
本書は、1980年代の「クアッガ」研究に始まる古代DNAの研究史を丹念に辿り、研究者たちのドラマを交えて、その現状から将来像に至るまでを説き起こす、格好の教養書。
更新世のマンモスを復活させて、地球温暖化に対処するという壮大な計画には、評者も度肝を抜かれた。だが、マンモス復活はまだ現実性があるとして、やはり恐竜ともなると、その古さゆえに映画のような復活は現時点ではままならぬようで、評者のような無責任な素人としては、いささか残念ではある。
著者の更科功氏は、講談社科学出版賞の受賞歴のある理学博士で、専門は分子古生物学。著書も多い。文体は極めて読みやすく、DNAの基礎からわかりやすく書かれているので、文系の人でも大丈夫。いやしくも知的好奇心の持ち主を自負する人なら、だれもが必読すべき名著である。
(月刊ムー 2024年5月号掲載)
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