悲劇の怪物「メロンヘッド」の正体は!? 政府の人体実験疑惑も囁かれる悪夢の都市伝説/ブレント・スワンサー
ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
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構成=伊藤綾 編集=千駄木雄大
密かに話題の古書店「書肆ゲンシシャ」の店主・藤井慎二氏が、同店の所蔵する珍奇で奇妙なコレクションの数々を紹介!
「驚異の陳列室」を標榜し、写真集や画集、書籍をはじめ、5000点以上にも及ぶ奇妙なコレクションを所蔵する大分県・別府の古書店「書肆ゲンシシャ」。
まるで、温泉街には似つかない雰囲気だが、SNS投稿などで同店のコレクションが話題を呼んでいる。その奇妙さに惹かれ、九州のみならず全国からサブカルキッズたちが訪れる、別府の新たな観光スポットになった。
知覚の扉を開くと、そこは異次元の世界……。ようこそ、書肆ゲンシシャへ。
――まずは読者の方々へ、自己紹介をお願いいたします。
藤井慎二(以下、藤井) 大分県別府市で「書肆ゲンシシャ」という、珍書・奇書と呼ばれるような古本、珍しい骨董品を蒐集・展示・販売する古本屋をやっています。その中には人の皮で装丁された「人皮装丁本」や人間の大腿骨から作られた「人骨ラッパ」なども扱っていて、それらを1時間1000円から閲覧できるシステムです。基本的に商品の多くは一般販売も行っています。
――そんな藤井さんのコレクション、骨董品や珍書・奇書と呼ばれるような古本をご紹介いただけるという……。
藤井 今回はムー読者もご関心をお持ちであろう「都市伝説」をテーマにしましょう。まずは、1990年に発売されたジャン・ハロルド・ブルンヴァンの『チョーキング・ドーベルマン――アメリカの「新しい」都市伝説』(新宿書房)。著者は民俗学が専門のアメリカの大学教授で、現地のメディアでコラム「都市伝説」を担当していました。本書はアメリカの都市伝説を紹介するという内容で、“チョーキング・ドーベルマン”というタイトルも、この本で紹介されている同国の有名な都市伝説からとられています。
――「チョーキング(choking)」は英語で「息苦しい」という意味ですね。どういった内容の都市伝説なのでしょうか?
藤井 1981年が初出のお話です。ある女性が仕事から戻って帰ってきたら、飼い犬のドーベルマンが床に横たわり喘いでいたので、すぐさま獣医の元に連れて行きます。しかし、呼吸困難の原因がわからないまま、女性は病院に犬を預けて自宅に帰ったところ、獣医から電話がかかってきて「すぐ家から出て、隣の家に行って警察を呼びなさい」と言われたそうです。
――何が起きているのでしょうか!?
藤井 「どういうことか?」と、女性が電話で聞き返すと、その獣医は「お宅の犬が呼吸困難になっていたのは、人間の指が3本ほど喉につっかえていたからだ。もしかしたら、食いちぎられた指の持ち主が、まだその家の中にいるではないか?」と警告してきたのです。
――うーん……。なるほど……。「ベッドの下の男」みたいな話でしょうか。
藤井 ほかにも、「1863年、アメリカの南北戦争のときに、兵士の陰嚢を貫通した流れ弾が、百姓の娘の子宮に飛び込み、そのまま妊娠した」という、古い都市伝説も紹介されていますね。9か月後に彼女は健康な赤ちゃんが産まれたそうです。
――突拍子もない展開ですね。
藤井 『チョーキング・ドーベルマン』のほか、同じ著者によるアメリカの都市伝説を集めた本は2冊あります。1988年の『消えるヒッチハイカー――都市の想像力のアメリカ』と、1991年の『メキシコから来たペット――アメリカの「都市伝説」コレクション』(共に新宿書房)です。特に、最初に出版された『消えるヒッチハイカー』は大月隆寛らにより翻訳され、「都市伝説」という言葉が広まるきっかけになったといわれています。ブルンヴァンは同書で「都市伝説は、口述の語りの下位のクラスである伝説に属する。それは、おとぎ話と違って、人々が信じているもの、少なくとも信じることのできるものである。また、それは、神話とも違って、最近出現したものであり、古代の神や、半神半人ではなく、ごく普通の人間が登場するものでもある。つまり、伝説とは口述の歴史なのだ」と書いています。
――それぞれ、有名な都市伝説が本のタイトルになっているのでしょうね。「消えるヒッチハイカー」は、なんとなく想像がつきますが、「メキシコから来たペット」はどんな話なのでしょうか?
藤井 「メキシコへ行った女性が犬を拾って、法に反すると知りつつアメリカの自宅に連れて帰りました。翌朝、目脂がついており口から少し泡が出ていたので獣医に見せたところ、どこでこの犬を手に入れたのかと聞かれます。女性は自宅の近くでと嘘をつくのですが、そんなはずはない、これは犬ではなくてメキシコのドブネズミで、すでに虫の息だと告げられる」という話ですね。
――それだけメキシコのネズミは巨大だということでしょうか? なんというか、アメリカの都市伝説というのはかなり大味ですね。(笑)
藤井 ほかに、日本の都市伝説や噂を「現代伝説」としてまとめた『日本の現代伝説』シリーズ、『ピアスの白い糸』『魔女の伝言板』『走るお婆さん』『幸福のEメール』(すべて白水社)もおすすめです。また、フランスの社会学者のエドガール・モランが都市伝説の解明を試みた『オルレアンのうわさ』(みすず書房)も読んでおきたい一冊です。「オルレアンのうわさ」とは、ユダヤ人が経営する6軒の婦人服の店の試着室で、若い女性が薬で眠らされ、地下の通路から外国に売り飛ばされてしまったとするフランスの都市伝説です。
――舞台を東南アジアに置き換えた話はよく聞きますよね。
藤井 続きまして、関連しそうな本として、荒俣宏氏が監修している『秘密の動物誌』(筑摩書房)を紹介します。同書は、文庫本にもなっているのですが、行方不明になったドイツ人の博物学者が残した資料にあった、世界の珍獣を写真付きで紹介しています。例えば、鋭い牙を持つうさぎのような動物の解説には「毎日約30回交尾するが、交尾に際して雄は奇妙な憂愁をただよわせたメロディーのある歌をうたう」と書いてあります。
――へぇ〜。本当に見たことない動物ばかりですね。
藤井 解説を読むとわかるのですが、これすべて嘘なんですよね。
――えっ?
藤井 同書では架空の動物たちを、わざわざ「本物のように」写真や生態の解説文まで付けて紹介しているんです。
――でも、こういう想像上の生き物の設定を考えるのは、確かにおもしろそうですね。相当、頭を捻る必要がありますが。
藤井 このように「架空の動植物を紹介する本」というのは、世の中には結構あります。なかでも有名なのが同作と、『鼻行類』(平凡社)と『平行植物』(工作舎)の3冊でしょう。『鼻行類』や『平行植物』などは、書店でも新品がまだ入手できるはずです。
――大型書店でも多分、「取り寄せ」になると思いますが……。
藤井 「架空」という括りで「オーブ」が写り込んだとされる写真を集めた『ザ・オーブス・ジャパン・ドットコム』(三五館)という写真集も紹介したいと思います。
――オーブとはカメラでフラッシュ撮影した際に、まれに写り込む小さな水滴のような光の玉を指します。ただ、心霊写真の世界ではこれが霊魂だという説もありますよね。その写真集ということですが、「ドットコム」なので同名のウェブサイトもあるのでしょうか?
藤井 同名のサイトも開設されています。私は『ベスト珍書――このヘンな本がすごい!』(中央公論新社)で、この写真集の存在を知りました。
――やはり、「変な本」という扱いでいいのですね。
藤井 最後に『呪術廻戦』が人気ということで、『日本呪術全書』(原書房)という本で今回は締めたいと思います。こちらは『死刑全書』などを出している原書房の「全書シリーズ」のうちの1冊ですね。
――藤井さんが「ジャンルの入門書」として、太鼓判を押す全書シリーズですね。図解なども豊富で読みやすい上に勉強になるという。
藤井 『呪術廻戦』には「掌印(手印)」という、指でさまざまな形をつくって呪文を唱える描写がありますが、本書ではそうした手印のつくり方を一覧で紹介しています。
ほかにも本書は『呪術廻戦』に出てくる“十種影法術”の元ネタである十種神宝や、野狐の調伏法、江戸時代の最高の呪術師について解説していたり、呪術に関する膨大な情報がにまとめられています。「日本霊山地図」が載っているだけではなく、親鸞が起源ともされる、今日まで東北地方で密かに代々伝わってきた、“隠し念仏”についても詳しい解説が載っています。
――呪術と一口に言っても内容は多岐にわたるようですね。
藤井 著者の豊嶋泰國氏は、同じ原書房の全書シリーズから『憑物呪法全書』という憑依に関する本も書かれています。フランス文学や宗教思想、民俗学などを学んできた人物で、過去には「ムー」にも寄稿している方です。
書肆ゲンシシャ
大分県別府市にある、古書店・出版社・カルチャーセンター。「驚異の陳列室」を標榜し、店内には珍しい写真集や画集などが数多くコレクションされている。1時間1,000円で、紅茶かジュースを1杯飲みながら、それらを閲覧できる。
所在地:大分県別府市青山町7-58 青山ビル1F/電話:0977-85-7515
http://www.genshisha.jp
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