米ミズーリ州で目撃多発「洞窟を這うもの」の謎! 正体はUMAか、改造人間か、進化系人類か?/ブレント・スワンサー
ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーがついに『ムー』に登場!! 日本人がまだ知らない世界の謎について語る!
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ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
エイリアン・アブダクションといえば、人里離れた農家や荒野で、漆黒の空に突然UFOが現れ、光線を放ちながら被害者を連れ去るイメージが強い。しかし、この傾向に逆行するようなケースもいくつかあり、どれも奇妙で突飛な事件ばかりである。ニューヨークのアパートから女性が拉致されたといわれる事件は、その中でも上位に入るに違いない。
1989年11月30日未明、ニューヨーク・マンハッタンのアパートに住んでいたリンダ・ナポリターノ(旧姓コルティーレ)という当時41歳の女性が目を覚ますと、ベッドの足元に何かが立っていた。部屋には鍵がかけてあり、隣では夫がぐっすり眠っているため、あり得ない状況だったが、それが何であれ明らかに人間ではなかった。
彼女はその“何か”によって、彼女が「診察室」と表現する場所へと連れて行かれ、テーブルの上に乗せられた自分が、細長い頭と大きな目をしたエイリアンに囲まれていることをはっきり認識したという。その後、気づくと彼女は自宅のベッドに戻っていたが、夫はまだ夢の国にいた。彼女には実際に起こったことの断片的な記憶だけが残っていた。
コルティーレはそれが夢でなかったことを信じていたが、できる限り深く考えないようにしていた。しかし、1冊の本に出会って状況が一変する。その本の名は『Intruders: The Incredible Visitations at Copley Woods』(邦題:イントゥルーダー―異星からの侵入者、訳:南山宏、集英社)だ。著者はベテランUFO研究家のバッド・エリオット・ホプキンスで、宇宙人による誘拐について書かれていた。その本を読み終えたコルティーレは、あの夜、自分の身に何かとても奇妙なことが起こったと確信した。そして、答えが欲しくてたまらなくなり、ホプキンス本人に連絡を取ろうと決めた。
ホプキンスはコルティーレの話を快く聞いてくれることになり、彼女が事件の断片しか覚えていないことを考慮して、催眠退行を受けるよう手配した。催眠状態で彼女が思い出したのは、不思議な力で浮遊させられ、街の明かりの向こうに浮かんでいた異世界の工芸品のようなものの中に連れ去られ、そこで人間ではない何かによる医学実験のようなものを受けたことだった。その恐ろしい体験について彼女は次のように語っている。
「私は何もないところに立っていた。そして、ビルの上空まで連れて行かれたの。落ちなきゃいいけどって思ったわ。UFOはほとんど貝のように開いて、その中に入った。普通のベンチが見える。そして私は廊下に連れて行かれた。ドアはスライドドアのように開く。中にはライトやボタン、大きな長いテーブルがある。私は、そのテーブルには乗りたくないと思っていたけど、とにかく彼らは私をテーブルの上に乗せた。彼らは私に何かを言い始め、私は叫んだ。私はまだ叫ぶことができた。1人が何か言ってきて、『ノビーエッグ』と聞こえた。私の口に手を当てたから、静かにしろって言いたかったんだと思う」
ホプキンスはその後、コルティーレの事件を目撃したと思われる「リチャード」と「ダン」と名乗る2人から連絡を受け、さらに迷宮に入り込むことになる。彼らは事件の夜、ボディガードとして高位の外交官(最終的にはハビエル・ペレス・デ・クエヤル国連事務総長であった可能性が高い)の護衛を任されていたという。
2人は、リムジンでブルックリン・ブリッジを渡っていたところ、なぜか車が急発進し、コルティーレのアパート付近でホバリングしている大きな宇宙船を見たと主張した。そして、その宇宙船はイースト・リバーに向かって飛び出し、水底に沈んでいったという。2人はその光景にショックを受け、混乱状態に陥ったという。これらすべては、彼らと一緒にいた外交官も目撃したようだ。その時の様子をリチャードはこう語っている。
「私たちがいた場所から2、3ブロック先のアパートの上空を、楕円形の物体がホバリングしていました。それがどこから来たのか、まったくわからなかった。あまりにも一瞬の出来事だった。その宇宙船が放つ赤みがかったオレンジ色の明るい光は、次第に白っぽい青色へと変化した。緑色の光が円盤の縁を回転していた。白いガウンを着た少女か女性が、胎児のような姿勢でアパートの窓から飛び出し、光線の中に宙づりになった。そして、今まで見た中で最も醜い生き物が3体見えた。彼らが何なのかはわからない。人間ではなかった。体の細さに対して頭がとても大きく、髪の毛がなかった。あいつらは彼女を船内に連れ込んだ。『彼らを捕まえなければ!』と、私たちは車から降りようとしたが、楕円形は再び赤みがかったオレンジ色に変わり、そそくさと飛び去った」
ホプキンスへの報告の後、彼らはコルティーレのことを知り、彼女に執着してつきまとうようになった。1991年4月29日、ダンとリチャードはコルティーレを誘拐し、彼女がその晩に体験したことを聞き出そうとしたと言われている。その際、コルティーレはCIAのファイルのようなものを見たと主張した。彼女はこの2人の謎めいた男たちから常に嫌がらせを受けていたようで、ホプキンスにはいったい何がどうなっているのか不思議に思っていた。
その後、ホプキンスのもとにジャネット・キンブル(もしくはキンボール)と名乗る女性からも接触があった。彼女もまた、コルティーレの事件が起きた夜、なぜか車が故障した後にホバリングする物体を目撃し、当初はSF映画のセットだと思い込んでいたと語った。
目撃者が多数いると考えたホプキンスは、それまでコルティーレの事件を内密にしていたのだが、ついに公表することを決意した。そして、事件の夜に2人のボディーガードが護衛していた、ハビエル・ペレス・デ・クエヤルから供述を得られないか探っていた。そして、デ・クエヤルと話すことに成功するが、彼は自分の名前を出すことを嫌がり、この件に関する公式声明を出すことを拒否。言い換えれば、彼は自分が見たことについて黙っているつもりだったのだ。
もちろん、ホプキンスの調査に対して懐疑的な見方もあった。特に、同業者であるジョージ・ハンセン、ジョセフ・ステフラ、リチャード・バトラーは、多くの時間を“あらさがし”に費やした。例えば、ホプキンスは事件発生時の天候などについて基本的なチェックを怠っており、周辺のビルの警備員が何か異常なものを見たかどうかのチェックすらしていないことが指摘された。その他にも、この事件は繁華街の広大なアパート群で起こったとされているが、実際にはほとんど目撃者がいなかったという批判もある。問題の夜、他の入居者も、夜間警備員も何も見ていなかった。
つまり判明している目撃者は、検証不可能な証言をしている匿名に近いボディーガードが2人、外交官と思われるクエラ(彼は肯定することも否定することも拒否している)、謎めいたキンブル(彼女は誰であるかわからない)、そしてコルティーレによれば、ブルックリン・ブリッジにいた匿名のトラック運転手しかいなかったのだ。
ところが、興味深いことに、この事件の認知度が高まるにつれて、自分も目撃者だと語る人物が少しずつ名乗り出るようになった。その中で最も著名なのは、ニューヨーク・ポスト紙の記者であるヤンシー・スペンスという男だ。彼は誘拐事件の夜、通りの真向かいにある自分のオフィスにいたと主張し、そこから他の数人と共に一部始終を見たと証言した。彼はまた、他にも誘拐された人がいるはずだと信じていると不吉な主張をしている。
結局のところ、「マンハッタン移送誘拐事件(Manhattan Transfer Abduction)」として知られているこの事件の真相は誰にもわからない。
この女性は本当にニューヨークの真ん中にあるアパートからエイリアンに誘拐されたのだろうか? 目撃者がほとんどいないのはなぜか? エイリアンが目撃者全員を大量にマインド・ワイプ(記憶の消去と新たな記憶の置き換え)したという巨大な陰謀説も飛び交っているが、そもそも、なぜこんな人口密集地でわざわざ? それとも、コルティーレはただ人間に誘拐されただけで、あとは彼女の心が記憶を書き換えたのだろうか? もしそうだとしたら、他の目撃者が見たとされるものを、どう説明すればいいのだろう?
いや、ホプキンスを妄想の世界に引きずり込むため、全てはコルティーレ自身がでっちあげた作り話だったのか? いずれにせよ、この事件は人々の好奇心をそそり、今も議論され続けている。
Brent Swancer(ブレント・スワンサー)
豪ミステリーサイト「Mysterious Universe」をはじめ数々の海外メディアに寄稿する世界的ライター。人気YouTubeチャンネルの脚本、米国の有名ラジオ番組「Coast to Coast」への出演など、多方面で活躍。あらゆる“普通ではない”事象について調査・執筆・ディスカッションを重ねる情熱と好奇心を持ちあわせる。日本在住25年。『ムー』への寄稿は日本メディアで初となる。
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